「プリキュア」シリーズ初の舞台化となる、『Dancing☆Starプリキュア』The Stageが、10月28日(土)から11月5日(日)に東京・品川プリンスホテル ステラボール、11月10日(金)から11月12日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される。「僕たちがプリキュア!」をキャッチコピーに、ダンス部の男子高校生たちがプリキュアに変身し、ダンス&バトルを繰り広げるという本作。スーパーバイザーにはプリキュアシリーズの生みの親である、東映アニメーション・鷲尾天氏が就き、脚本・演出は舞台『魔法使いの約束』シリーズなどで知られるほさかよう氏が手掛ける。鷲尾氏とほさか氏にインタビューを行い、なぜ初の舞台化で男子プリキュアなのか、そして本作で描きたい物語についてじっくりと聞いた。「女の子だって暴れたい!」をキャッチコピーとしていた初代プリキュアから、今作までを貫く“プリキュアらしさ”とは。
――まず初めに、プリキュアシリーズ初の舞台化が、男性主人公のオリジナル作品として企画された経緯について教えてください。
鷲尾天 プリキュアシリーズは今年で20周年ということで、いろいろと初めてのことにチャレンジさせていただいています。その中で昔、お子様だった頃にプリキュアを観て応援して下さった方々が、大人になってリアルで集まれる場を作れないかなということを考えていました。「全プリキュア展 ~20th Anniversary Memories~」もそのひとつです。同時に、ずっと前から舞台をやってみたいと思っていたのですが、普通に今までのプリキュアを舞台化するというアイデアは、スタッフへのヒアリングや、ファンの方へのグループインタビューでも反応が薄くて。でも、その中でいわゆる「2.5次元」という舞台を見に行く方が多いという話を聞いて、じゃあ男子プリキュアが活躍するお話を舞台化したら?と話してみたら、急にリアクションがよくなった(笑)。そこで舞台を手掛けている方々にご相談したのですが、こうして実際に形にしていただけることには、感謝と驚きがあります。
――では今作は、初期の視聴者だった20代以上の女性がターゲットということなんですね。
鷲尾 そうですね、いろいろなご意見があるだろうと思いますし、実際拝見していますが、今回は「大人になった女性たちが集まれる場所」をイメージしています。チャレンジではありますが、一度はその形でやってみたいと思いました。
――初の舞台化が男性プリキュアということで、解禁時の反響も大きく、先日キャスト取材を行った際にも、やや緊張やプレッシャーを感じている様子も見受けられました。作り手として、お2人はどのように感じていますか?
鷲尾 それについては、「こちらも緊張しているので大丈夫」と言いたいです (笑)。よく言われるんですけど、私、若干無謀なところがありまして…舞台化が決まってからちょっとドキドキしています(笑)。でも、新しいことにチャレンジしてみるのが好きなんです。かつてのテレビアニメを舞台化しても、新しいものになるイメージがわかなくて。お客さんがびっくりして、観てみたいと思うことをやりたい気持ちがあった。…(ほさかへ)大丈夫ですか?無謀なものをお願いしてしまって(笑)。
ほさかよう 大丈夫です(笑)。他の2.5次元作品でもそうなんですが、シリーズの一番最初は、完璧に形が見えているというよりも「さあ、どうしようか?」というところから始めていくことが多いんです。もちろん最終的には必ずおもしろいものをお届けする気持ちでいますが、「ついてくれば絶対大丈夫だぜ!」というよりも、「お互いに力を貸し合っておもしろいものを作ろう!」というイメージですね。
――なるほど。ですが同時に本作はプリキュアのシリーズに連なっていくことになります。この作品の「プリキュアらしさ」はどんなところにあると思いますか?
鷲尾 実は、今ほさかさんがおっしゃったことって、テレビアニメシリーズのプリキュアが始まったときと同じなんですよ。女児向けといわれるアニメーションで、手に(アクションアイテムを)何も持っていなくて、女の子の好きな色と思われていなかった黒と白の衣装で、しかも「おしとやかにしなさい」なんて言われている時代にアクションをする。当然、キャストやスタッフも戸惑うわけです。そこで西尾大介監督が一生懸命説明して、「とにかく一緒に考えましょう」と伝えて番組が始まった。既存のものを破壊して新しいものを生み出すのがプリキュアの根底にある考え方だとしたら、その思想は連綿と受け継がれている。「ふたりはプリキュア」と言ってたのに5人になりましたし、「プリキュアは魔法じゃない」と言っていたのに「魔法つかいプリキュア」が出ましたし(笑)。その中のひとつとして、舞台で男性が演じるというのは、シリーズの中でそんなに特別なことではないと思うんですね。プリキュアシリーズの軸である「自分の足で凛々しく立つ」ことを、この作品の男子高校生たちも意識していれば、彼らはプリキュアだと思います。
ほさか 僕も当初、男の子がプリキュアをやるということに、今までのファンの方は戸惑うだろうなと不安を感じていたのですが、鷲尾さんに「それでいいんです」と言われて。毎回ファンが驚くものを作ってきた文化がプリキュアだと。そう考えてみると、今は過渡期とはいえ「男の子だってプリキュアになりたい」と言える時代になってきていると思いますし、「男の子がプリキュアになった世界」を突き詰めていけば、きっと(ファンの方も)ついてきてくれると思います。
――お2人のお話からは、プリキュアを好きな方々のことを非常に信頼している印象がありますね。
鷲尾 本当にそう思います。
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