北原里英「仕事と結婚を天秤に…」働く女性の葛藤を語る

北原里英撮影:山田健史

執筆期間に結婚したことで考えが変わった


――4人の女性が各章の主人公として描かれていますが、それぞれの性格やバックボーンは北原さん自身を反映させていることもあるのでしょうか?

4人がそれぞれ自分に近い人物だと全員が似てしまうなと思ったので、そうならないように書いていました。でも、ほぼ完成したものをAKB48同期の内田眞由美ちゃんに読んでもらったら「全員、里英ちゃんと似ているところがある」と言われたんです。やっぱり私が書いているので、どうしても私のエキスはちょっとずつ入っていたみたいです(笑)。

――登場人物の一人である楓が結婚に迷う場面で、北原さんの結婚観が垣間見えたような気がしました。

当時は、私自身も結婚に対して楓のように「これでいいのかな」という思いもありました。私は小さい頃から「30歳くらいで結婚したいな」と思っていたので、楓ほどの葛藤はありませんでしたが、それでも仕事と結婚を天秤にかけたことはあります。それは私だけじゃなく、仕事をしている女性だったら誰もが考えることなんじゃないかなと思うんです。

最初に楓の話から書き始めたのですが、2年の執筆期間の内に私自身が結婚したことで考えが変わり、この章は最後に書き直しました。

私も楓と同じように「結婚したら仕事の仕方が変わってしまうのではないか」という不安がありましたが、実際に結婚したら全然そんなことはなくて、むしろさらに「仕事を頑張ろう」と思えたり、人生が豊かになったりしたので、「結婚ってすごく良いものだな」という実感を持って書くことができました。

――北原さんご自身が結婚を決断した決め手は何だったのでしょうか?

私の場合はコロナ禍の影響が大きいです。それまですごくアウトドアでアクティブだった生活スタイルが大きく変わって、強制的に人生を見つめ直すような期間になりましたが、「二人でずっと家にいるのが楽しかった」ということが、結婚に踏み切るきっかけになりました。

北原里英撮影:山田健史


水着グラビアは「今でもやれます」


――俳優の那智が“脱ぐ”作品への出演に葛藤する場面もありました。

私自身は「脱がなきゃいけない」と切羽詰まった経験はないのですが、女優として舞台に立ったりしたことはあるので、想像して書きやすい話でした。

――北原さんはアイドル時代にグラビア活動もされていましたが、水着への抵抗はあったんですか?

たしかに水着も脱いでいるな…と今、気付きました(笑)。そこに関してはびっくりするくらい抵抗はなかったですね。私はたぶん恥じらいがないタイプなので、「どうしても水着グラビアをやってほしい」と言われれば、今でもやれます。

――グラビアとは別物なんですね。

“脱げる人”が条件というオーディションもあるし、すごく面白そうな作品に「どうしようかな」と悩んだことはあります。私は結局そのオーディションは受けなかったのですが、心境はリアルに書けたのではないかなと思います。

小説を書いてみて、自分の語彙力の無さにびっくりさせられる毎日でしたが、そんな中で他の小説家さんが持っていないものと言ったら、「女優をやったことがある」という実体験だと思うんです。取材して書くこともできるかもしれないけど、取材だけでは分からない「舞台初日に乾杯するビールのおいしさ」などもあるし、そういった意味では、那智の話は少し自信の持てる章なんです。

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