平野綾「オファーを頂いてもあえて控えていた」2.5次元への葛藤と、デビュー25年目の初挑戦

自分と一番かけ離れているのがアニメの芝居

平野綾撮影=梁瀬玉実


――今年で芸能生活25周年です。近年のお仕事を見ると現在は舞台、ミュージカル中心に絞られているようですが、声優のお仕事、音楽活動については今後どのようにされていくのでしょうか?

声優業は絞っているように見えつつも、実は相当やっているんですよ。継続のお仕事が多いし、新規のお仕事もお声掛けいただいています。ただ、テレビアニメのお仕事に限ってはなかなか難しいところがあるのは確かですね。スケジュール的に一番時間を割かれるのが舞台、ミュージカルで、今はそこを主軸にしているので、そうなると毎週アフレコがあるテレビアニメのレギュラーは難しいというのが現状です。

――アニメの芝居の難しさは、舞台とどう違うものですか?

アニメはまずひとつの役を演じるのに、複数の方が関わった上でのお芝居というのが難しいです。自分だけのお芝居をしてしまうと、絵が表現するものに対してズレが生じてしまいます。その分、絵と声のお芝居がマッチした瞬間はとても気持ちがいいです。アニメのお芝居は監督が呼吸を作っているので、台詞の切れ目、スピード感も全て監督次第。そこと自分の演技が重なった瞬間にものすごく達成感があって、そうした意味でいうと、アニメのお芝居が一番自分とかけ離れていると思います。いかに自分を消すかがアニメだと思っていて、エンドロールを見て、「あ、これ平野綾だったんだ」と思っていただけたらラッキー、みたいな心意気ですね。

――音楽活動については?

音楽については7月に4年ぶりのワンマン「2nd Billboard Live TOUR」を開催していて、10月にはファンクラブ限定ライブを。11月には京アニフェス(KYOANI MUSIC FESTIVAL)への出演が決まっています。音楽のステージはコロナ禍もあり再開まで本当にお待たせしてしまいましたが、25周年を機に今後は継続してできるように色々計画中です。

――ビルボードライブではオリジナル曲やアニソン、懐かしの歌謡曲、出演ミュージカルでの曲といった多彩な楽曲を披露されています。音楽活動での歌と、ミュージカルでの歌の楽しさにはどのような違いがありますか?

ミュージカルに関しては、イタコみたいになります(笑)。自分に役をおろすような作業で、やはりお芝居として歌う部分が大きいです。なので、その役を演じていたときの感情を思い出しながら、お客さまが劇場に来ている気持ちになれるように歌うことを意識しています。アニソンに関しては皆さんそれぞれに思い出が詰まっていると思うので、なるべくそれを思い出せるようにキラキラ感を乗せて歌っています。自分の楽曲では、初期のものは自分で作詞している曲が多く、私自身にもすごく思い出があります。皆さんにも楽しんでいただきながら、自分も一緒に楽しむという気持ちを心がけていますね。

――先日はドラマ「量産型リコ」でのゲスト出演が話題になりました。舞台に立ってのお芝居と、映像作品でのお芝居にはどのような違いがありますか?

映像は日常生活の延長のような、いかに自然なお芝居をするかが大切だと思います。ただ、昔はそれが全くできなかったんですよ。アニメっぽいお芝居になったり、舞台っぽいお芝居になったり。そのバランスに苦戦しましたが、今はわりと自然に身に馴染むようになってきています。濃い役は相変わらず多いですが(笑)、年齢を重ねて年相応の役が多くなってきて、等身大で演じられているからかもしれません。

対して舞台は真逆で、演目によって国も変われば時代も変わるというものです。幕が開けた瞬間に全てを変えるという意識でお芝居しているので、自分であって自分でない感覚。お芝居の深度でいったら演じ込みがより深く、リアリティを乗せながらもフィクションを意識する。私は現代劇より時代劇が多いので、特にそういう印象を持っています。

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