コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は『傍観者の恋』をピックアップ。
原作・ナツさん、作画・吉田了さんによる本作は、Web小説投稿サイト「小説家になろう」で両片思いならではの苦しさや切なさが多くの反響を集め、コミカライズに至っている。7月14日に作画を担当している吉田了さんが自身のX(旧Twitter)に第1話を公開したところ1.1万以上の「いいね」が寄せられ、反響が相次いだ。この記事ではナツさん、吉田了さんのお二人にインタビューを行い、創作の背景について語ってもらった。
20歳になったばかりの秋、レイチェルは幼なじみであり長年恋心を寄せていた青年・ノアと結婚した。家族にも祝福され、幸せ絶頂の結婚かに思えたが、実はこの結婚にはレイチェルとノアしか知らない悲しい裏側があった。
レイチェルとノアが知り合ったのは6年前、引っ越し先の隣家に住んでいたのがノアの家族だった。ノアはレイチェルが新しい土地になじむまで根気よく付き合ってくれる優しい青年。この先もノアと一緒にいたいと思っていたレイチェルだったが、ノアがこの頃から思いを寄せていたのは生まれつき病弱な実の姉・アリシアだったのだ。
ノアがアリシアに想いを寄せていることに気付いたレイチェルは、ノアが振り向いてくれる可能性を諦めたくないと、アリシアに近づき始める。時が経ち、アリシアを喜ばせることがノアを喜ばせることだと気付いたレイチェルはアリシアの笑顔すらも求めるようになり…愛情と友情の狭間でもがく偽りの結婚生活を始めるのだった。
秘めた愛情とかけがえのない友情が交錯する中での幸福感と罪悪感に溢れた偽装結婚生活を描いた本作。Twitter上では「冒頭部分だけで涙が出る……」「切ないけど好き」「コミカライズ待ってた!」「とても切ない…でも最後まで見届けたい」「胸が締め付けられる…」「大泣きしてる助けて」「号泣するのわかってて今から震えてる」など多くのコメントが寄せられ、大きな反響を呼んでいる。
――原作を書かれたナツさんにお尋ねします。『傍観者の恋』を創作したきっかけや理由についてお聞かせください。
ナツ:もとは「小説家になろう」というサイトで連載していたお話の書籍化作品なのですが、そちらのサイトで『禁断の恋』をテーマにした企画に参加することになりまして。
「禁断の恋といえば、これでしょ」と安易な発想で設定したのが、ノアとアリシアの関係でした。
――本作では”好き”がすれ違うことならではの切なさが印象的で読者を虜にしていました。コミカライズされると知った時の率直なお気持ちをお聞かせください。
ナツ:実は書籍発売後にちらりとお話はあったものの、そのまま時が経ってしまったので、もうないだろうなと思っていました。ですので、「諦めず実現まで持ち込んで下さったんだ!」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。手がけて下さる漫画家さんのお名前を聞いて、更に歓喜した覚えがあります。
――幼なじみ同士で結婚したレイチェルとノア、レイチェルの親友でありノアが恋心を寄せる実の姉・アリシア、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
ナツ:ノアとアリシアは企画の趣旨に沿って生まれたキャラクターです。
ですが、その2人がメインのお話だと陰鬱な展開のバッドエンドになりそうな予感しかなかったので、レイチェルという『傍観者』をヒロインに据えることにしました。
――続いて、作画を担当された吉田了さんにお尋ねします。『傍観者の恋』では、綺麗な絵の中に人間の私欲やドロドロとした感情が描かれているのが印象的です。作画するうえで特に意識した点やこだわった点があればお教えください。
吉田了:質問にもありますように、誰もが持っている私利私欲・嫉妬心・罪悪感といったドロドロとした感情を、主人公のレイチェルを通して生々しく描写することを意識しています。よくある「真面目で優しくて正しい」主人公ではないところがレイチェルの魅力のひとつだと思っていて、「なんとしてもノアを自分のものにしたい」という彼女の黒い部分を、ごまかさずに描くようにしています。少女漫画らしくない据わった目だったり、仄暗い喜びに思わずにやけてしまう口元だったり……。
そして同時に、「なんとしてもアリシアを助けたい」という必死さや、使用人を実の家族のように労り大切にする様子など、レイチェルの「真面目で優しくて正しい」部分も必ず描くようにしています。こうして恋愛と友情の狭間でもがき苦しみ自分を追い込んでいくレイチェルの姿は、惨めで醜くてどうしようもないのに、たまらなく人間らしくて愛おしいんですよね。
――本作を漫画として仕上げていくうえで印象深かったエピソードはありますか?
吉田了:コミカライズの仕事が初めてなのもあり、小説を漫画の形にするということの難しさを実感したのが印象深かったです。
漫画にするシーンの取捨選択もですが、キャラクターの台詞やモノローグをどうするかが、とにかく難しかったです。小説には台詞以外にも地の文があり、そこで物語の設定やキャラクターの感情などを具体的に説明することができます。ただ漫画ではその手法が基本的には使えないので、どうすればこの情報を上手く読者に伝えられるんだろう? と悩むことが何度もありました。そのため、できるだけ原作そのままの台詞やモノローグを使いたいと思っていますが、いくつかの場面では大きく変更させていただいています。
――ここからはお二人にお伺いします。本作の中で、特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
ナツ:結婚後、3人で保養地へ移動する途中、レイチェルが寄り添うノアとアリシアを万感の思いで見つめるくだりが個人的にとても気に入っています。レイチェルらしさが詰まったワンシーンではないかな、と。
吉田了:3話のレイチェルがノアに契約結婚を持ちかけるシーンです。
『傍観者の恋』の山場のひとつであり、レイチェルの中にたまったドロドロとした感情が爆発する場面でもあります。ノアの理解者になれたこと。このチャンスを利用すれば自分の夢が叶うこと。そしてノアがレイチェルの提案を受け入れたこと。その嬉しさのあまり笑みを浮かべてしまうちょっと怖いレイチェルと、思わぬ出来事にどうしていいかわからず取り乱してしまうノアのやり取りは、それぞれ違った人間らしさが表れていて、描いていてとても楽しかったです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、それぞれメッセージをお願いします。
ナツ:お目に留めて下さってありがとうございます。
原作を読了済みの方も、そうでない方もぜひ最後まで楽しんで下さい!
吉田了:原作をお読みになっている方は今後の展開をご存知かと思いますが、原作を未読の方は「主人公のレイチェルどころか、誰ひとりとして幸せになる未来が見えない……」と不安になっているのではないでしょうか。私も最初に原作を読んだ時はそうでした。この物語は一体どんな形で終わるのか、その時、レイチェルたちはどうなってしまうのかを知りたくて、ページをめくる手が止められなかったことをよく覚えています。
でもご安心ください。ネタバレ防止のため詳しくはお話しできませんが、ちゃんとハッピーエンドになります。
これからも頑張って描いていきますので、皆様も「傍観者」となって、レイチェルたちの物語を一緒に見守っていただけたら幸いです。
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