劇団ひとり「もっともっと苦しくなりたい」、自分を信じる“折れない心”を保つメンタリズムを明かす

劇団ひとり流の仕事論「つらくないと楽しくない」


劇団ひとり撮影=阿部岳人

ーー劇団ひとりさんはどうコンテンツを見てもすごい楽しそうでいらっしゃるイメージがあります。多彩な活動の中でも「今これが一番楽しい」と感じることってどういう瞬間でしょうか。

番組なんて楽しいものなんだけど、言ってしまえばその場限りで終わる楽しさじゃないですか。逆にものづくりっていうのはね、作ってる時はつらいけれど、いいものができた時の喜びみたいな全然楽しみ方が違うんですよね。

一番今嬉しいなって思うのは、全然書けてなかった脚本が進み始めた時かな。スランプになると煮詰まっちゃって本当つらいんですよ。何も書けない状況が何日も続いた時に、ぽっとひらめいてブレイクスルーする瞬間は何事にも代えがたいですね。

あの時は嬉しいですよ。もう何日も出てこなかったうんこが、久々に海面から顔を出したような心地よさがあって。あれはちょっと他では味わえないかもしれないですね。

ーー劇団ひとりさんは男性のファンが多いイメージがあります。それこそ、アドリブも最後までやりきるようなメンタル(心)の強さが“野郎ども”に刺さっているのかなと思いますが、「自分を信じきるメンタル」を作る秘けつはありますか?

なんかね、やっぱり「もっともっと」っていう意識はずっとあるんですよね。特に今回の「横道ドラゴン」みたいな仕事ではもっと追い詰められたいし、追い詰めたいしもっとつらい状況になりたい。
もっと苦しくなりたいっていうのはありますね。

やっぱ楽しいだけだと僕は楽しくないですよね。苦しくて苦しくてしょうがないっていうところまで追い詰められた時に見える光明があって、そこへ抜けた時の素晴らしさを理解してるからですかね。さっきの脚本の話しと一緒ですね。楽しいだけだと虚しくなっちゃう性格なんですね。「つらくないと楽しくない」っていうのかな。

すごい安っぽい話で例えちゃうと…パチンコって負けてる時が一番楽しいんですよ。「負けてる負けてる…!いや取り返せるぞ!」って時にやっと出た時が一番楽しくて、案外、楽勝で勝ってる時って何も思わないもんです。やっぱり瀬戸際に追い詰められて、ラスト千円で勝負してる時が一番アツいものですからね。

ーーピンチを楽しむマインドが大事ってことですね。

だから山を登ったりマラソン選手とかもやっぱみんなそうなんじゃないですかね。

ーーそれを楽しめるかどうか…というところでピンチ乗り越え方もいろいろあると思います。劇団ひとりさんのピンチの乗り越え方は?

僕も人生でいろいろ大変なことが起きていっぱい悩みますけど、最終的には「だから面白いんだ」っていう風に納得するようにしています。多分、苦難がなければ人生なんて退屈なんですね。テレビゲームでもそうじゃないですか。ここにいたら敵の弾が当たらないんだって攻略法を見つけた瞬間にそのゲームがつまんなくなっちゃうんですよね。やっぱ必死になってかいくぐってる時が一番面白いわけだから。つらい瞬間はそんなことは思えないもんですけれどね、最終的には面白いという風に考えるようにする、ってことが大事ですね。

「今までやってきたことが何の役にも立たない世界」でもやってみたい


劇団ひとり撮影=阿部岳人

ーー劇団ひとりさんの「つらいから楽しい」という気質が、無謀(?)なフルアドリブのドラマのドラマのあり方とリンクするようですね。

たしかに、このドラマは、「どうやって苦しむか」っていう企画ですから。

ーーお笑い芸人、ベストセラー作家、映画監督、俳優といろいろ活躍されている劇団ひとりさんですが、次に挑戦してみたいことはありますか?

エンタメ業界で言うと、自分のやりたいことは大抵やらせてもらえてるんですよね。だからカフェの経営とか全然関係ないことやってみたいって最近思うようになってきました。もう16歳からお笑いをやっていて、いわゆる芸能界にどっぷり漬かっているわけですよ。

だからカフェでもなんで雑貨屋さんでもいいんですけれど、お店を持つみたいな真っ当な仕事みたいなものをやってみたいですね。今までやってきたことが何の役にも立たない世界でやってみたいなっていう年頃になってきましたね。ある種僕からすると同世代の人たちが脱サラするのと同じですよね。

ーー最後に、改めて「横道ドラゴン」の見どころをお願いします。

このドラマの見どころは、一言だと言いづらいんだけど…「絶対に先の展開を考察されない」自信だけはあります。これはもう現場にずっといた僕でさえ、「こんな終わり方をするんだ」っていう驚きがありました。ぜひ確かめていただきたいですね。

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