渡辺大知「好きなものを共有する喜びを教えてくれた」黒猫チェルシーのメンバーに感謝

2023/09/06 07:10 配信

ドラマ インタビュー 動画

渡辺大知にインタビューを行った撮影:永田正雄

主演舞台「ねじまき鳥クロニクル」や映画「市子」などさまざまな作品が控える俳優・渡辺大知が、仮設住宅の街で個性豊かな住民たちが繰り広げる青春群像劇「季節のない街」(ディズニープラス「スター」で全話独占配信中)に出演している。同作は、1970年に黒澤明監督が「どですかでん」のタイトルで映画化したことでも知られる山本周五郎の同名小説をベースに、宮藤官九郎が企画・監督・脚本を務め連続ドラマ化。12年前に起きた“ナニ”を機に建てられた仮設住宅のある街を舞台に、池松壮亮演じる“半助”こと田中新助の目線を通して、その街で暮らす人々の生活をコミカルに描く。このほど、青年部のメンバー・オカベを演じている渡辺にインタビューを行い、役に対するアプローチや弾き語りのシーン、大きな転機となった出会いについて語ってもらった。

何年も前から街の変化を見届けてきた人物


――オカベはどんな人物ですか?

この話はとにかく面白いキャラクターがたくさん出てきて、人間が街を作っているっていうのがすごく重要なテーマだと思うんですけど、僕が演じたオカベという役は仮設住宅の街の住人ではなく、近所に住んでいる酒屋の息子。でも、一番仮設住宅に寄り添っていて、何年も前から街の変化を見届けてきた人物なんです。住人たちが街を去ったり、また新たに誰かが入ってきたり、それをずっと見てきた。

言うなれば一番近所の一番外野だけど、誰よりも街のことが好きで人一倍愛着を持っている。自分も住人のように街に入り浸っていて、人がいなくなる寂しさや活気があった頃を知っている人間なのかなと思っています。

――そんなオカベにとって、半助(池松壮亮)とタツヤ(仲野太賀)はどんな存在ですか?

タツヤは年も近いし、何年も近所で共に育ってきたから仲が良い。一番分かっている奴という感じなんだと思います。半助は街に新しく入って来た存在。でも、そんな半助に対して何年も一緒にいたタツヤと同じくらい一日ですぐ仲良くなれちゃう。オカベは、あまり壁を作らない距離感で接することができる男。それは、半助という人間が魅力的で、どこか気になる謎めいた部分があるから興味津々なのかなと。この街のことも好きになってほしいし、もっと知ってほしいという思いが強いのかもしれません。

――池松さん、仲野さんとの共演はいかがでしたか?

池松くんはリーダーシップがある人。スタッフ、キャスト全員がこの作品をよりよくしようと思っている中で、みんなから出てくるアイデアを一つにまとめてくれました。太賀くんもアイデアマンであり、池松くんと僕が出すアイデアをうまく形にしてくれる、みんなの間に入って懸け橋になってくれるような存在でした。

――3人のシーンでは、みんなでアイデアを出し合っていたんですか?

それぞれ意思を持って現場に入ってきているので、ちょっと修正しながら何か足りないなと思ったら「これを足してみようか?」ってアイデアを出しながら作っていった感じです。演技は人に作られるもの。僕の演技も池松くんと太賀くんの演技に呼応して作られたところが大きい。僕も2人に何かを返せたらいいなと思いながら演じていました。

渡辺大知撮影:永田正雄

唯一の“ロマンティックパート”担当


――宮藤監督の演出で印象に残っていることはありますか?

宮藤さんからは、このドラマの中で唯一のロマンティックパートだから恋愛要素を担ってほしいと。他に、キュンキュンするポイントが全くないので(笑)。面白おかしくありながらも、どこかに淡い恋心がちゃんと見えるような感じでと言われたので、その部分は意識しました。

それと、オカベは災害の被害を受けた人物ではない。だから、何も抱えているものがないということに対してのコンプレックスがあるんじゃないかなと言われました。ただ、ヘラヘラしていつも楽しいというわけではなく、心のどこかにそういうもどかしさみたいなものを抱えて演じられたらいいなと思っていました。

――オカベのカツ子(三浦透子)への思いはどのように捉えていましたか?

これは想像ですけど、街からいろんな人が出ていったり、また新しく入ってきたりという変化を見ている人間として、いつかいなくなってしまうかもしれないという寂しさみたいなものはあるのかもなって思いました。

自分が好きだと思う人が、ずっとそこに居続けられるわけではないということも知っている。だからなのか分からないけど謎の焦りというか、空回りをしたりして。思いの伝え方が刹那的だし、今MAXの状態でいないといつ終わってしまうか分からないみたいな思いがあったりするのかなと。オカベがそれを意識しているかどうかは分からないですけど、体で感じ取っているようなところはあるのかなと思います。

――カツ子の横でオカベが弾き語りをするシーンは印象的でした。

あのシーンは気持ちを届けようっていうよりも、オカベの中の混乱が自然と表れたらいいなと思いながらやっていました。別にラブソングを歌っているわけではなくて、横にいるカツ子にプレゼントするはずが自分に対して歌っているような感じになったのかなと。

やっぱり、オカベの中では大好きなカツ子ちゃんとのある事件が理解できないんですよ。勘が鈍いなりに何でこんなことになったのか知りたい。きっと、オカベなりにもがいたし、苦しんだと思うんですよね。それで嫌いになったりはしないんだけど、カツ子という人をもっと知らなければいけないと思う瞬間が訪れたというか、肌で感じ取ったのかもしれません。

――要所、要所で流れる大友良英さんの音楽に関しては、どう感じていますか?

街っていうのは人間が集まって、たまたまできるものなんだなと思わせてくれる物語。それを象徴している音楽だなと思いました。いろんな人がやって来るカオスな感じと“ごった煮”感。そこに、いつでもなくなってしまうかもしれないという危うさや切なさを感じました。

「季節のない街」本ポスタービジュアル※提供写真