【漫画】女性初のプロ棋士を目指す”妹弟子”と不器用な優しさで支える”兄弟子”のドラマに「うるってなってしまった」「たまらん」の声

2023/11/14 10:00 配信

芸能一般 インタビュー コミック

『花四段といっしょ』「将棋のプロを目指す”妹”の話」より(C)朝日新聞出版

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、「このマンガがすごい!2023」オンナ編で12位に輝いた増村十七さんの『花四段といっしょ』(朝日新聞出版)から兄弟弟子愛を描いた「将棋のプロを目指す”妹”の話」をピックアップ。

『花四段といっしょ』のX(旧Twitter)公式アカウントが4月1日に投稿した「将棋のプロを目指す”妹”の話」は、5千以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、作者の増村さんに2022年9月に続き2度目のインタビューを行い、制作の裏側や今後の展望について語ってもらった。


この”にやにや”は兄弟弟子愛に対してなのか、将棋コメディに対してなのか

『花四段といっしょ』「将棋のプロを目指す”妹”の話」より(C)朝日新聞出版


プロ棋士である花つみれ四段は、声を掛けてきたファンへサインをするなど丁寧に対応をしていたが、一方で花四段の妹弟子である踊朝顔三段は、記者を無視して煙草を吸っていた。女性初のプロ棋士を目指す朝顔は、奇抜な恰好や大きな態度で、周りからは厳しい視線を送られていた。見た目も性格も小さいころから変わった朝顔だが、花四段は「全然変わってないですね」と言うのであった。

朝顔の対局中、朝顔から荷物を預けられ帰れなくなった花四段は、朝顔を信じて待つ”兄弟子”としての一面を見せる一方、預けられた洋服をぐちゃぐちゃにしてしまう一面も見せてしまう。その後、朝顔の記事を悪く書こうとしている記者を見つけた花四段は記者に将棋を挑み、「僕が勝ったら朝顔の記事を悪く書かないでもらう」と提案する。これには素人相手に大人げないと周りからのツッコミが。結局UNOで花四段と記者は勝負をすることになる。

対局終了後、負けてしまい落ち込んでいる朝顔の姿があった。そんな朝顔に花四段はたこ焼きを買ってあげるが、朝顔は「たこ焼きよりも良いものが食べたいなーッ。」とプロ棋士に夢がないと馬鹿にする。そこをたまたま通った記者はUNOが弱すぎた花四段からお寿司を買ってもらっていたため、良い記事を書くと決めたのであった。

X(旧Twitter)上では、思わず応援したくなる朝顔や花四段のダサカッコよさに大盛り上がり。「登場人物たちがそれぞれが『なんかいい』」「チビ朝顔の悔し泣き可愛すぎるたまらん」といった、登場人物に魅了されている声も多く上がった。


作者・増村十七さんが語る制作の背景

『花四段といっしょ』「将棋のプロを目指す”妹”の話」より(C)朝日新聞出版


――前回のインタビューから約一年経ちましたが、漫画を描く心構えや心境の変化などありましたらお教えください。

環境の変化としては、自分や、周りの人達も一年分歳をとっており、マンガ家として活動していける日数は無限ではないということを意識して、どう作品を世に出していけるか、考える時間が増えました。

特にこの一年は、主に発表の場としていたTwitterがなくなり、Xとサービス名が変わったり、インボイス制が施行されたりと、作品作り以外の部分での環境変化が大きく、大局的に考えて、行動していかなければならないことが増えました。

作家も出版業界全体も、当初は広報に便利だから、と利用していたSNSが、重要度が高まっていって、もはや必須になっているのが現状ですが、先を見据えて手を打っていかなければ、多様な作品が発表の機会を失っていき、マンガという表現自体の存続の危機が、そう遠くないうちにやってくるのではないか、というのが実感です。

――「将棋のプロを目指す”妹”の話」の中で気に入っているシーンやセリフがありましたら、理由と共にお教えください。

第1巻収録の第5、6話「踊朝顔登場の巻」ですね。
踊朝顔は大好きな人物で、登場させられたことはとても嬉しく、もちろん作者としても大好きな話です。
ただ、特別にここが気に入っている、というところはありません。マンガの作り方が未熟で、未だに力の抜きどころが分かっておらず、どこも作るのが大変で、どこも思い入れがあるためです。
ともあれ、朝顔が魅力的なことは名前を思いついたときから分かっていたので、その魅力が損なわれずに画面に出せたと思えるのは、とても運がいいことだと思っています。

――『花四段といっしょ』では様々な芸人さんが登場し、増村さんの芸人さんのチョイスが絶妙だと感じたのですが、描く中で意識していることなどありましたらお教えください。

『花四段といっしょ』「将棋のプロを目指す”妹”の話」より(C)朝日新聞出版


大好きなマンガ作品の『ゴリラーマン』(ハロルド作石)でも、芸能人や有名人が主要なキャラクターとして登場したり、『キン肉マン』(ゆでたまご)に、実在のプロレスラーをモデルとした超人が登場したりして、作中で特別な存在感を放っています。
それぞれの作者が、その人物が好きでたまらない、という気持ちを惜しみなく込めて描いているからだと思います。

私も、実在の方の魅力の一部を勝手にお借りし、作品づくりの助力とさせてもらってるので、毎回申し訳ないという気持ちがありつつも、登場させる以上は、小さいコマでも魅力を損なわないよう、また、作品がちょっとでも面白くなるよう描いていきたいな、とは思っています。

――沢山の方が 『花四段といっしょ』を楽しみにされていますが、特に印象に残っている・嬉しかった読者のコメントを教えてください。

未就学児のお子さんに、寝る前の読み聞かせで読んであげている、というお父さん読者の方がおり、第2巻の最初のホーちゃんの回で、その子が大笑いしていた、というお話を伺ったときは、飛び上がるほど嬉しかったです。

自分も保育園児の頃から、ルビさえ振ってあれば、家にあったマンガは何でも読んでいたので、そういう年齢の子でも楽しんでもらえるものが作れているのか、と思えるのは、とても感慨深いです。

――『花四段といっしょ』のコミック第三巻が出るということで、今後の展望や目標をお教えください。

話作りは、目の前のことで精一杯なので、毎回、一話一話を面白くすることのみ考えています。

一応のラストの展開は考えていますが、そこまで行き着かなくても、全部面白かった、と思ってもらえる作品づくりを目指しています。

個人の願望としては、今年は「このマンガがすごい!」で1位が取りたいです。

一問目の回答にも繋がりますが、主な発表の場がSNSとなっており、自分の手だけでは、広い層の読者にお届けすることには、限界があります。

作品によってやり方は異なると思いますが、『花四段といっしょ』の場合、長く話を楽しんでもらうためには、「このマンガがすごい!」へのランクインが必須と考えています。

もちろん取りたいといって取れるものではないので、地道に面白い作品を作って宣伝活動していくほかは、ご先祖様にお祈りするくらいしかできないのですが……。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

いつも応援いただき、どうもありがとうございます。

まだまだ未熟な作者の技術のために、作品をメジャーな位置まで押し上げることができてはいないですが、それでも第3巻まで続けられているのは、熱心なファンの皆さんに背中を押してもらっているためだと思っています。

お返しをしきれるものではありませんが、読者の皆さんに、より長くマンガを楽しんでもらうため、できることを全てやっていくので、今後とも応援のほど、よろしくお願いします!