コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は2023年8月に単行本「ゾワワの神様」を刊行した漫画家・うえはらけいたさんの実話をもとに描かれた「ときには自分を信じないことのほうが大事だという話」をピックアップする。8月4日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、1.1万を超える「いいね」が寄せられた。
共感を呼ぶストーリーに、読者からは「刺さる…」「なんか救われた気がしました」「優しい世界」などのコメントが続々。作者のうえはらけいたさんにインタビューをおこない、本作を描くことになったきっかけや、制作秘話などを伺った。
「コピーライターになれるとは思ってなかった」と本作の中で語るのは、作者のうえはらさんご本人。モノづくりをする仕事に就きたいという強い思いはあったが、それと同じくらい強く自分にはできっこないと信じ切っていたという。
学生時代の飲み会で「ねえ、なんか面白いこと言ってよ」と言われるのが大嫌いだった…そしてそのような場面で「面白いこと」を言える人が、コピーライターや広告を作る仕事に就くものだと思っていた。そんな考えを持っていたので、コピーライターとして内定を貰ったとき、うえはらさんは何かの間違いかと思っていたそうだ。思わず内定先にも、「あの、内定出ている僕って本当に僕で合ってます?」と電話を掛けてしまうほど。
いざ広告会社に入社して懇親会に足を運んでみると、そこには色々な「日本一面白いことを言うのが得意な人」たちが集まっていた。キャラの濃い人たちを目の当たりにして、つまらない自分はきっと事務方の部署に配属されるのだと思っていたという。しかし配属されたのは「コピーライター職」。見かねた人事の先輩は、配属前に実施した「クリエイティブテスト」の結果を持って、うえはらさんのもとへやって来た。それを見たうえはらさんは、そこでようやく自分の思い違いに気づく…。
――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
こちらは「マスナビ」という就活生向けの広告系情報サイトに連載している漫画なのですが2021年の末頃に、そちらのWEBサイトの担当者の方から「就活生に向けて、広告業界に興味を持ってもらえるような作品を描いてください」という依頼を受けたのが描き始めたきっかけです。
今回のエピソードは単行本が出て一区切りとなったので、改めて自身がコピーライターになった頃のことを思い出しながら総括になるようなストーリーを描きました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
作品の中の、お酒に関する描写に注目して頂けると嬉しいです。
僕がお酒が飲めなかったのですが、クリエイティブの職場ではお酒を共用されることがあまり無く、それがとても居心地良く感じたので、そのことを作品の中に盛り込みました。
――「自分にはできっこない」と思ってしまう原因や事件などに心当たりはあったでしょうか。
1つは、高校時代に美大受験を諦めた経験だと思います。そこから、「自分は才能が無い側の人間だ」という思い込みが強くなってしまい人一倍自己肯定感が低めになってしまった経緯があります。
もう1つは、漫画にも描いた通りですが、大学でも会社でもとにかく周りに優秀な人が多かったので彼らを相手に極端にビビってしまったというのもあります。ただ今思えば、努力しない言い訳として「自分には無理」と言っていたような気もします。
――少し後ろ向きな状態でも、クリエイティブな仕事を志すきっかけになったのはなんだったのでしょうか。
子供の頃、体が弱く一日中家に籠もってテレビと漫画ばかり見ていました。自分は物語に育てられたという自負があるほど、物語が好きでした。
おそらくその原体験から、何かしら創作する仕事に就きたいという意思が強くなったんだと思います。
――クリエイティブな職業を志す若者に一言伝えるとしたら、どんな言葉がよいでしょうか。
まさしく漫画に描いた通り、「自分の価値を自分で値踏みしないでください」ということです。また、「才能」という言葉に惑わされないでほしいとも思います。多くの能力や技術、センスは時間をかければ誰でも習得できるものがほとんどです。
自分に才能があるかないか、ではなく、好きか嫌いか、が重要だと思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
元会社員の漫画家という強みを生かして、色々なお仕事漫画を作りたいと思っています。また、本が好きなので紙の書籍を作る仕事の話について描きたいと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
これからももっともっと面白い漫画をつくるつもりなので、定期的にうえはらの漫画を読みに来てくれると嬉しいです!!
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