――本作はワインの知識も必要となってくる作品でしたが、元々ワインはお好きでしたか？
出演が決まってから勉強だと思って、高いものからお手軽なものまで、産地もフランスだけではなくアメリカのカルフォルニアのものなどさまざまな種類のワインを飲みました。僕はあまり物欲がなくお金をあまり使うタイプではなかったので、これは自分への投資だと思って思い切りましたね。一体いくらワインに使ったのか(笑)。
でも、この作品と出会ってワインを好きになりました。本作が描いているように、値段が高いものはもちろんおいしいですが、自分の好みかというとまた違ってきて…。それがワインの面白さなんです。答えがないから一生の趣味になる。ワインに恋に落ちたこともあり、撮影後はワインセラーも自宅に購入しました。
――そんな山下さんの心をつかんだワインの魅力は何だと思われますか？
これまで高いワインはおいしくて当たり前という意識があったのですが、それ以上に作り手の気持ちや思いを感じながら飲むと、より深みが出るというか…。安くてもかなりおいしいワインがたくさんあると知りました。自分の好みは飲んでいくうちに分かっていったので、その感覚はちょっとアートに近かったのかもしれないです。ワインの背景を含めて哲学があったりするので、ワインは大人の趣味に向いていると感じました。
――ちなみに一青はワインに詳しいですが、山下さん自身が誰かと何か対決するならどのジャンルで戦いますか？
お肉の部位は結構分かるかな。鶏肉なら絶対に分かると思うし、牛肉もいい線いくと思います！
――本作はフランスでも撮影されましたが、日本の撮影との違いなどは感じましたか？
撮影中に数日、オフになる日があったのですが、その時は製作スタッフの方の家に泊まりに行かせていただきました。こんなことなかなかないですよね。本当の家族のような強く確かな絆が生まれたことを感じたというか…。
ちなみに少し田舎におうちがあったこともあり、いいリフレッシュになりました。朝は近くの牡蠣が食べられるところに連れて行ってくれて、白ワインを飲みながら役作りの話や雑談をしたりして…。愛情をたっぷり注いでもらって本当にすてきな時間を過ごすことができました。
――日仏英の多言語で展開される連続ドラマですが、撮影中に難しいと感じることはありましたか？
多言語が飛び交う現場でしたが、監督とも直接話すことができるなど細かいコミュニケーションが取れたのであまり言葉の壁は感じませんでした。ただ文化の違いとして驚いたのは、時折ランチタイムにワインが出てきたこと。日本の現場で撮影中にお酒を飲むことはまずないので驚きました。
でも、飲みながら話をすることでリラックスしたり仲が深まったりするので、いい習慣にも見えましたね。まぁ僕はさすがに飲みませんでしたが(笑)。
――日本での撮影中に山下さんがスタッフに教えたことはありますか？
実は監督にかっこいいBarはないかと聞かれて、お伝えしたお店が実際に使用されているんですよ。どのシーンなのか、ぜひ見て探してください。そのほかにも、おいしいお店はたくさんシェアしました。楽しい現場でしたね。
――改めて出来上がった作品を見ての感想を教えてください。
撮影期間中からも何度も見てきたのですが、完成された本編を通して見たら、ワインも人間も自然の一部なのだと強く感じました。ワインはブドウが育つ自然環境や醸造、熟成、そしてそこに関わる人たちなどいくつもの要素が複雑に絡み合っているお酒です。それは実は人間と同じで、人も誰かに育てられ、どんな環境で成長するかがとても大事。ワインと人は似ている、とつくづく思いました。
そして、本作は家族、友達、兄弟など、さまざまな愛の形がワインを通じて壮大にドラマチックに描かれます。ワインが好きな人もそうでない人もどの世代の方にも楽しんでもらえると思います。
ちなみに僕にとっては、自分の世界を広げてくれたかけがえのない作品になりました。言語もカルチャーも違う出演者とスタッフが一つの目的に向かっていく過程がとても楽しかったし、一生忘れられません。僕の人生にとって大切な時間を作ってくれた作品です。
撮影＝阿部岳人／文＝玉置晴子／スタイリスト＝櫻井 賢之[casico]／ヘア＆メーク＝竹山直実／衣装協力＝GALERIE VIE、NOBU IKEGUCHI
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