<らんまん>脚本・長田育恵氏が、最終週の仕掛けを明かす キーワードは「継承」

2023/09/26 07:30 配信

ドラマ インタビュー

「らんまん」脚本を担当する長田育恵氏にインタビュー(C)NHK

神木隆之介が主演を務める連続テレビ小説「らんまん」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。いよいよ、9月25日より放送されている最終週「スエコザサ」にて物語は完結する。WEBザテレビジョンでは、同作の脚本担当・長田育恵氏にインタビューを実施。キャラクター作りの裏側や、最終週の仕掛けなどについて明かした。

「みんなの行方を丁寧に追っていける媒体は、とても私に向いていたと思います」


――まずは、全130回の“朝ドラ”の脚本を書き終えての率直な気持ちを教えてください。

本当にホッとしています。無事にやり遂げられて良かったですし、チームの皆さんの思いを損ねないものを最後まで紡げたのではないかと思っています。そして、チームの皆さんを裏切らなかったことが、一番ホッとしているところです。

――長田さんの中で一番長い期間をかけての執筆だったかと思いますが、プレッシャーはありましたか?

重圧はかなりありました。深刻な話ではありませんが、電車や個室など、自分の意思で出ていけない場所にいると少しパニック症のような症状が出るのですが、今回の話を受けて帰ってきた時に、自宅で症状が出たんです。朝ドラの仕事が、始まったら終わるまで出ることができないという巨大な密室に感じたんですよね(笑)。

ですが、具体的な作業が始まると、とても自分に向いている仕事だと感じるようになりました。

年間を通じて締め切りがあったり、プレッシャーにさいなまれ続けたりと、物理的なプレッシャーは消えることなくありましたが、とにかく私は登場人物と物語を考えることが大好きなので、みんなの行方を丁寧に追っていける媒体は、とても私に向いていたと思います。他にこうして長い時間を描き出せるドラマはあまりないので、貴重な機会を与えてもらいました。

牧野富太郎氏は「万太郎のモデルではあるけれど、全く違う人物像」


――万太郎は、当時の男子としては所属意識が希薄で、どこに行っても通用するスキルに磨きをかけ、腕一本で世間を渡っていくような人物だと感じました。さらにそれが自分の一番好きなことであることが、非常に現代的な生き方をしているように思えます。初期の構想段階で、モデルになった牧野富太郎さんの中にそういった要素を見出していたのでしょうか?

はい。牧野富太郎さんから抽出したエッセンスがまさにその部分です。初めから偉人伝をやるつもりはさらさらなく、「草花を一生涯かけて愛した」というシンプルなテーマを持った一人の人物がいて、その人物を広場に見立て、彼の元に集まる人々や関係性、ネットワーク、それぞれの人生が咲き誇るさまを描き出そうと考えていました。

なので、モデルではあるのですが、全く違う人物像として作っていました。大きな違いとしては、万太郎さんは富太郎さんに比べて、愛情が深いがゆえに弱いキャラクターになっているところです。

寿恵ちゃんや子供たちなど、草花以外にも大事なものがたくさんあり、大事なものが増えれば増えるほど、彼の活動に対する矛盾が生じてくるんですよね。

ただ、日銭を稼ぐ方が二人にとって楽かもしれませんが、「この国全ての植物を明らかにして図鑑を完成させる」という途方もない夢を結婚の盟約として掲げていた二人は、最初からそこを求めていなかった。弱さゆえに矛盾を抱えながらも、寿恵ちゃんとの約束や、高知から送り出してくれたタキさんたちの思いを力にして、光の差す方に向かうという人物像になっています。

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