【漫画】外科医がSF漫画を1000ページ…二足の草鞋を履いた苦労の実話エッセイに「葛藤も動機もやさぐれ感も最高」の声

2023/10/10 18:00 配信

芸能一般 インタビュー コミック

やさぐれた外科医が、なぜSF漫画を描くことになったのかをつづったエッセイ漫画画像提供/永田礼路 さん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は兼業漫画家の永田礼路さんの作品「やさぐれた外科医がSF漫画を1000P描くまでの件」をピックアップ。本作は、外科医兼漫画家として活動する永田さんの実話を基に描かれた作品となっている。2023年8月27日にX(旧Twitter)に投稿された本作は、1万を超える「いいね」や多くの反響が寄せられた。作者の永田さんにお話を伺い、本作を描くきっかけや、こだわりポイントなど創作秘話を語ってもらった。


「なんで?」上司に言われてとっさに出た言葉がきっかけ

やさぐれた外科医がSF漫画を1000P描くまでの件(2/13)画像提供/永田礼路 さん


「こんにちは永田です」作者の永田さんが机に突っ伏している。永田さんは漫画家とお医者さんの二足の草鞋を履く、いわゆる「兼業マン」なのだ。そんな永田さんがなぜ、机に突っ伏しているのか。なんと、1000Pほど続けたSF漫画を書き終えたからだ。

描いていたのは「螺旋じかけの海」という生物系の、一話完結型SF漫画。1話を描いたのは2014年で、最初は商業誌で描いていたという。途中からは永田さん個人で続きを描き、9月3日に完結巻5話を発売した。

これをきっかけに、同エッセイ漫画では永田さんのこれまでと苦難の作品作りを振り返っていく。関東郊外で畑とヤンキーに囲まれて育った永田さんは、当時虫が友達だったとか。ごく普通の「昭和産サラリーマン家庭」に生まれ、「大人になったお前が頼れるものは特にない。手に職をつけろ」という言葉が父の教え。そんな永田さんの小学校の記憶は、ノートに落書きした漫画と、ファミコンが大半を占めていたそうだ。

その後色々あったものの、18歳以降親への学費の負担なく医師免許をゲット。「我ながらコスパのいい子供である」と当時を振り返る言葉もありつつ、「医師らしきもの」になった永田さんは外科系の道へ。10年ほど経ったときには某大学病院で「ねむい、つらい、きつい」の三拍子が揃った労働環境に置かれ、永田さんはやさぐれていた…。

「これを続けたら多分あと数年で自分は死ぬ」と思うくらいには疲労が蓄積し、メンタル的にも限界。心穏やかな生活がしたいと強く思うようになった永田さんは、メンタルクリニックへ行った結果、仕事を辞めることに。早速上司に「辞めたいっす」と伝えると、「えなんで!?」と驚く言葉が返ってきた。なんとかトゲのない理由を必死に探す永田さんは、ふとノートに落書きをしていた小学校の頃の自分を思い出し、「絵を描きたい…から…!」と絞り出して逃走する。しかしその後、「ああ言って辞めた手前、何か形にしないと!」と逆にプレッシャーを感じてしまい…。

本作を最後まで読んだ読者からは、「あっ、これ長期連載してもらって単行本で読みたいやつだ」、「先生のエッセイ漫画でしか得られない栄養がある」など絶賛の声が寄せられた。

これからも生き物や科学にまつわる不思議な漫画を細く長く…永田さんが語る漫画への思い

やさぐれた外科医がSF漫画を1000P描くまでの件(4/13)画像提供/永田礼路 さん


――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。

デビュー作で長く描いていた「螺旋じかけの海」というSF漫画があるのですが、この度5巻を出して無事に完結することができました。途中から個人で続きを描いていたので、宣伝で何かできることはないかと考えてこれを描くまでにあったことを描いてみようと思いました。あと人から現状に至るまでの経緯を訊かれことが多くそれを説明するのがいつも結構大変なので、一度一通り描いたら後が楽なのでは…?と思ったのもあります笑

――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

突飛なことばかりしているように見えるのですが、本人は当時割と真剣に色々考えた結果色々やっていたような気がします。とは言えだいぶ前の話なので自分でも「何やってるんだろう…」と思いながら描いてます。変な生き物を観察する気持ちで見てください。

――とっさの発想で始まった漫画家稼業ですが、医師専業時代の生活と比べてどうでしょうか。

圧倒的に精神的に穏やかな生活になりました。不思議な生活をしていると思われることが多いのですが、自分でコントロールできる範囲が広い方がストレスを感じにくいので、2つの仕事のバランスを自分で取れる今の生活が自分には結構向いているようです。

――「夢をかなえるぞ!」と気合を入れたスタートではなかったわけですが、モチベーションはどのように維持しましたか。

常勤を辞めた後も非常勤になったりでそれまでお世話になった先生には会う状態だったので、後ろめたさをどうにかするために何か仕事の形にでもしなければ…という消極的な動機はありました笑
あとは単純に新しいことを覚えてやっていくのが楽しかったので、自分でできそうなことを取捨選択して増やしていくようにしました。

――メンタルクリニックのひと幕は簡潔に描かれていますが、実際はどうだったのでしょうか。

これは文字で描くと重くなってしまうので2コマでお察しください…。実に客観的な視点でものを話してくれる先生でした。
思い詰めた人は視野が狭くなってしまいがちなので適切な第三者視点はとてもありがたいです。

――今後の展望や目標をお教えください。

とりあえずは無事完結した螺旋じかけの海の宣伝を頑張ります。あとは描きかけになっている似非科学のコメディをもう少し描いたり、機会があれば商業のお仕事もまた少しずつやってみたいと思っています。
自分は生産力が高くないのですが、その代わり長く読んでもらえる密度の高い漫画を描けたらいいなと思います。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

永田の昔話はまだしばらく続けて描いてみる予定なので、よろしければTwitterやPixivを覗いてみてください。
また苦労の末描いた生物系SF漫画「螺旋じかけの海」も主要電子書籍ストアにて配信中ですのでよければ是非ご一読ください!
これからも生き物や科学にまつわる不思議な漫画を細く長く描いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。