──先ほど、死生観と向き合う中でご自身の生き方も考えたとおっしゃっていましたが、ご自身の俳優としての現在地はどう捉えていますか?
全然、まだまだスタートラインにも立っていないのかなと思います。どの仕事もそうだと思いますが、正解はないし、ゴールもないと思っていて。自分がやれるまで、それこそ死ぬまで、きっとエンタメに携わるんだろうなと思う。表に出るだけじゃなくて、裏方もやって、いろいろなものを吸収して、ずっとエンタメを勉強し続けて、いいものを届けられるようにという意識がずっとあるんです。「スタートライン」という表現は違うのかもしれないですが、常にずっと新しいことを考えて、この先もより良いエンタメを届けていきたいという意味では、まだまだ満足できないのかなと。
──実際、振付なども手がけられ、俳優業だけでなく様々な形でエンタメ作品に携わっている福澤さんですが、エンターテインメントを届けることの面白さや魅力はどのように感じているのでしょうか?
自分が面白いと思うことを提供して、お客様から反応をいただく。それが面白いですね。もちろん「よかったね」って言われたら「僕の考えたことってよかったんだ」という自信になるし、仮に「微妙だったな」と言われても一つの意見として糧になる。そこで「エンタメを作るのをやめよう」とは思わないです。ずっと追求したい。実際、裏方もやってみると、どれだけの人たちがどれだけの想いで動いてくれているのかがわかるんですが、たぶん関わっている全ての人が同じ想いで、同じ熱量でやらないと、エンタメ、特に舞台は成功しないと思うので、そういう意味でもいい空間だなと思います。
──届けていきたいのはどういうものですか?
僕が面白いと思うこと。お客さんを含めてみんなの意見も聞きながらですが、自分自身を信じて、自分が面白いと思うものを死ぬまで提供したい。それは演者としても、裏方としてもやりたいことです。
──今までのキャリアの中で、様々な形でいろいろな作品に関わってきたと思うのですが、その中で特に印象的だった言葉やどなたかの姿などがあれば教えてください。
何だろうな。演出家の方々に言われた言葉は、素直にうれしいこともあるし、ダメ出しももちろんある。でも自分の中では、ダメ出しに込められた「もっとこうしたほうがいいよ」という想いも全てエンタメだと思っているんです。それぞれに経験や生きて見てきた色があって、誰が正解で誰が間違いとかではないから。みんなの意見は大事にして、それを自分の中で落とし込んで自分の色にしていく。そうやって唯一無二になっていきたいと思っています。これまで一緒に仕事をしてきた方には皆さんリスペクトがあります。
──「ダメ出しもエンタメ」ですか。すごく俯瞰されていますね。これまでの俳優経験の中で、すごく挫折を感じたことや、大きな壁を乗り越えたというような経験を挙げるなら?
僕、挫折ってなくて。何て言うんだろうな。常に「自分はダメだ」と思っているんです。だからダメ出しをされても「そりゃそうだろうな」って思っちゃう。でも負けず嫌いだし、悔しいから「じゃあ、良いって言わせたい」という想いが勝つ。だからダメ出しも全部ポジティブに変換されるというか。食らって落ち込むとか、そういう経験は今まであまりなかったかもしれない。
──精神的に強いものを持っているんでしょうね。
どうなんですかね。メンタルは弱いですよ。弱いけど、自分のことを一番信じているので。だから、まずは演出家やダメ出しをしてくださった方に「いい」と言ってもらえるまで追求して、その次はお客さんやファンの方に認めてもらえるまで……と考えてやっています。
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