──廣野さんは本作のような原作のない舞台と、原作のあるいわゆる2.5次元作品、どちらも出演されていますが、それぞれの演じる面白さはどのように感じていますか?
どっちも一緒です。結局、自分とは違う人物を演じているので。原作があるものだとしても、結局やっていることはそのキャラクターの感情のままに動いているだけ。それぞれ「えー、2.5!?」とか「えー、ストレート!?」とか言うやついますけど、結局2.5で下手なやつはストレートでも下手だし、ストレートで下手な奴は2.5でも下手ですしね(笑)。そういうこと言うやつからの挑戦はいつでもお待ちしてます! 書いておいてください! 最近はその垣根も少しずつなくなってきてますけど、もうちょっと僕は僕なりの戦い方でその垣根をなくしていけたらなということも思っています。僕からしたらどっちも面白いので。
──現在、25歳の廣野さんですが、30歳や30代への展望みたいなものはご自身の中でありますか?
全くないですね。お金持ちになっていたい。30歳くらいになったらもう表に出なくていいかなと思っているので、そこまで頑張って、あとは若手を育てられればいいなと。だから30代までに、説得力を作っていきたい。役者だったら「これで主演したし、評判もいいまま辞めたよ」、音楽だったら「これくらいに会場でライブをやって、世界でこれくらい聴かれた」と言えるような説得力。それを持って後世を育てたい。そのためにお金持ちになりたい。
──とはいえ、30代の廣野さんのお芝居も観たいという声も多いと思いますが。
いや〜、この仕事、苦しいですもん。お客さんと解釈が違って、その違いにイラっとすることもありますし。
──逆に言うと、苦しくても続けている理由は何なのでしょうか?
脳から汁が止まらないときがあるんですよ。キャラクターと自分と、稽古での苦労とかが全部カチッとハマったとき、めちゃくちゃ気持ちいいんです。芝居だけじゃなくて音楽でステージに立っているときも一緒。そのアドレナリンの出方がたまんない。ステージにはそういう魅力があります。そのときだけ、解釈の違いでお客さんにイラっとしたこととか、アンチからの言葉とかにも「ありがとう」と思います。
──コロナ禍で一度は辞めようと思った俳優ですが、辞めなくてよかったですか?
いや、どうなんすかね。
──そこはわからない?
うん、わかんないっす。だから今もやっているのかもしれないですね。ずっと自分の存在意義みたいなものを探しています。俳優業と音楽活動をやりながら「自分はどこに行くんだろう」って自分でもずっと思っているし。今回の「ナナシ」でもまたそれを模索するんだろうなと思います。
■取材・文/小林千絵
撮影/梁瀬玉実
スタイリスト/MASAYA (PLY)
ヘアメイク/瀬戸口清香
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