コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、一二三さんの漫画『都道府県を全て擬人化してみた漫画』だ。
そもそも『都道府県を全て擬人化してみた漫画』は、都道府県擬人化漫画「四十七大戦」の新章として公開されたもの。2023年8月12日にX(旧Twitter)の『四十七大戦』公式アカウントで投稿されると、7000件を超えるいいねが寄せられた。本記事では一二三さんにインタビューをおこない、創作への想いやこだわりを語ってもらった。
同作は、各都道府県に一柱ずつ存在する「揺神(ゆるがみ)」というオリジナルの神々が存在する世界。揺神同士が争えば、その土地の人間たちにも大きな影響を与えることから、彼らは畏れ崇められる存在であった。しかし、そんな時代も過ぎ去り現代では「ゆる神」として地方創生のために走り回るご当地ゆるキャラとして知られるようになっていた。
ある日、ゆる神たちは食品会社と提携をして、各地方のPR商品をプロデュースする案件を任されることに。各エリアごとに分かれて企画を考えるゆる神たち…しかし、いつものようにそれぞれの主張が激しいために話がうまくまとまらない。
そんな中、鳥取県のゆる神だけが別室でヒアリングされることとなった。何の疑いもなく、今回の案件や鳥取県の魅力について語るゆる神だが、ある真実が告げられて…。
都道府県を擬人化するという斬新な設定と歴史的な観点を見事に織りなしている同作。ネット上では、「各都道府県の特徴が捉えられていて面白い」「シリアスな面もあって飽きない」などのコメントが寄せられ、多くの反響が集まっている。
――描くうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
まず、「一度最後まで読んだら絶対読み返したくなる展開にする」というのはかなり意識しました。最後まで読むと分かるんですが、各インタビューシーンの「気づくか気づかないかのライン」にはかなり気を遣ってます(笑)
それとネームでは各県のキャラクターが一度で直感的に捉えられるように、というのを大切にして
います。この県(キャラクター)がどんな性格で、その地方内でどんなポジションなのか、周りの県とどんな関係性なのかが具体的に分かると、「情報」ではない血肉のある存在になりますよね。
1話の段階でどんな方にも一回は「この県が好き」と感じてもらえるシーンを作れたらと思って描い
ていました。あとTwitter(X)での最近の漫画掲載フォーマットを踏まえて、コンセプト・設定・掴みをそれぞれ何ページ(何ポスト)以内で伝えるか、というのは意識して調整しています。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
すごくどうでもいいネタなんですが、終盤のインタビューで鳥取さんが「この勢いで飛ぶ鳥落としていきたいですね 鳥取だけに」とボケたにもかかわらず一切ツッコまれずに進行していくところが妙に気に入ってます。
その後の雰囲気が全く違うものになるので、真面目な話をするところであえてボケる不真面目さが
個人的に好きなんだと思います。ここはぜひ読んだ皆さんに「やかましいわ」とつっこんで欲しいですね。
――全国の都道府県を擬人化していますが、それぞれの特徴はどのような方法で調べたのでしょう
か?また一二三さんとしては、個人的にどの都道府県が好みですか?
最初に各県の統計や地域性の書籍・ニュースをざっと参照して目立つ要素や歴史をざっとくり
おさえ、そのあとネット等で一般的に持たれている「あるあるイメージ」を確認します。ある程度「イメージ」「情報」をつかめてきたら、実際に県民・出身者の方にお話を聞いたりして「地域の実感」を確認し、イメージと実感の間でバランスの取れるイメージを探る形です。
統計や文化は変わることも多いので、グーグルフォームを使ったアンケートを実施するなど、できる限り自分なりの1次情報にあたるようにはしています。取材に行く時も名所を巡るより「話を聞く」「感覚を掴む」ことを重視することが多かったですね。
ただ漫画は「周りのキャラクターとのバランス」「被らないデザイン」もかなり重要になってくるので、考え込む前にざっくりキャラデザインを作って後から細部を詰めていくパターンも多くあります。
特に鳥取や島根、石川と富山、群馬と栃木などライバル・相棒関係にある県同士については、対比がわかりやすいようシルエットや雰囲気の差を出すことを優先しています。
好みで言うと…基本どの県も時間をかけて作り上げているので気に入っているのですが、ネーム
で動かす上で熊本さん・山梨さん・高知さん・大阪さん・群馬さん・宮城さんなど「つっ走ってくれる県」は異様に描きやすい印象がありますね(笑)
それと鳥取さん島根さんの兎や、長崎さんの尾曲猫、奈良さんの鹿、秋田さんの秋田犬など、動
物を連れているキャラクターは描いてて癒されます。
――ラストがまさかのオチでしたが、この構想は何がきっかけで思いついたのでしょうか?
都道府県擬人化で新シリーズを作る際に、どうしても前作の課題だったのが「自分の地域ネタ以外読まない人も多い」点だったので、地域性を問わない作品の魅力作りたいと思ったのが大きいです。
実はコメディとホラーは一見真逆ですが、演出のテンポや見せ方が共通なんですね。そのテンポさえ大切にすれば、正反対の演出をしてもまとまるだろうと思っていました。元々不安を煽る描写が得意だねというのは周囲に言われていたので、自分の使える武器はなんでも活かそうと思ったのも大きいです。
あと普段の生活で強く「色んな都道府県のことを知ろう」と思う状況ってそう多くないと思うんですよ。なのでそんな人にも「知りたい」モチベーションを生むにはどうするか、と考えた時に、この設定なら糸口を作りやすいと考えました。ここはKindle・Twitterで公開している続きの話をご覧になっていただければより分かると思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
独立前からファンには公表しているのですが、短期的にはまず今年度の売り上げを軌道に乗せて、来年西武線に作品の車体広告を出したいと思っています。作家の個人出版はまだメジャーではないので、出版社での連載と比べて“できないこと”が目立ちやすいのですが、私は新しいビジネスモデルや作品展開モデルを作りたいというのが独立の理由として強くあります。なので、積極的に「今の形だからできる作品の可能性」を示していけたらと思っています。
長期的には、やはり覇権アニメを作れるくらいの盛り上がりを生み出していきたいですね。これまで私が作家としてやってこれたのは、どんな時も作品を好きだと応援してくれた読者の方々のお陰だと強く実感しています。作家としてはやはり作品で恩を返していきたいので、「応援して来てよかった」と思ってもらえるような社会的な盛り上がりを作っていきたいです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
まずは読んでくださり本当にありがとうございます!作家個人の作品展開は大変なことも多いので、皆さんのレビューや反応は作家としてとても励みになっています。
単行本1巻分(8話ほど)でこの作品のコンセプト全体がはっきり分かるように作っているので、今回の話以降もきっと新しい面白さを発見してもらえると思います。
これからも応援よろしくお願いします!
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