「ロマンスの神様」をはじめ、数多くのヒットソングを生み出してきた“冬の女王”こと広瀬香美。口ずさみたくなるような歌詞や曲調、そしてパワフルな歌声が非常に魅力的だが、実は彼女の才能はアーティストだけにとどまらない。最近は自身のYouTubeチャンネルでも注目を集めており、さらに新時代の歌姫を発掘するオーディション番組「『歌姫ファイトクラブ!!』心技体でSINGして!」(Huluで独占配信)では、たった一人で審査員も務め、これまでのパブリックイメージとは異なる一面を見せている。さまざまな才能を発揮して、今なお活躍の幅を広げる広瀬の魅力に迫っていく。
和歌山県那智勝浦町に生まれ、福岡県で育った広瀬香美は、3歳の頃からクラシック音楽の英才教育を受け、やがて作曲家を志すように。音楽科のある福岡女学院中学校に入学し、国立音楽大学へ進学。在学中にロサンゼルスと日本を行き来する生活を送り、自作のデモ音源をレコード会社に送るなど、早くもプロへの道の意欲を見せていた。
当時は“作曲家としてマイケル・ジャクソンに曲を書く”という野望を抱いており、ロスで受けたボイストレーナーのオーディションでも「私は歌手志望ではない」とアピールするほどだったという。そんなある日、レコード会社のプロデューサーから「いい声なのでアルバムを作ってみませんか?」と声をかけられたことで、歌手としての道を歩み始めることに。その時の気持ちについて、以前広瀬はメディアのインタビューで「作曲家になるためのいい履歴になるかな、お小遣い稼ぎにもなるかもと、やってみることにしたのです」と語っていた。
そして1992年に歌手デビューを果たし、同年に1stアルバム『Bingo!』、1stシングル「愛があれば大丈夫」を発表した広瀬。1993年にリリースした「ロマンスの神様」は170万枚を超える大ヒットを記録した。同曲は「まだ恋愛が成就していないOL」という設定で制作された歌詞がリスナーの共感を呼び、確かな実力と音楽理論に裏打ちされた圧倒的な歌唱力で支持を集め、CD全盛期の時代に一躍その名を轟かせた。
1995年には同名映画の主題歌であり、アルペンCMソングでもある「ゲレンデがとけるほど恋したい」が大ヒット。「ロマンスの神様」と並ぶ広瀬の代名詞的楽曲となり、“冬の女王”というキャッチコピーが冠されるきっかけとなった。元号が変わった現代でも、誰もが一度はこの2曲を耳にしたことがあるのではないだろうか。
その後も、1996年に「DEAR...again」、1997年に「promise」、1998年「ストロボ」などの楽曲をリリースして大ヒット。これらの曲も“アルペンCMソング”として起用され、毎年冬のCMソングで耳にする機会が続いたため、“冬の楽曲といえば広瀬香美”というイメージが浸透していった。
売れっ子歌手として認知され、共感を呼ぶ歌詞とポップな曲調、パワフルで伸びやかな歌唱力で評価された広瀬だったが、デビューから10年間はライブをせず、テレビ番組への出演も消極的だった。
歌うこと自体は嫌いではなかったが、人前やカメラの前でパフォーマンスすることは苦手なようで、「なんで私が代表して歌わなきゃいけないの?」という気持ちでいっぱいだったという。また、ヒットメーカーであるがゆえの“冬の女王”という冠が足枷となってしまい、「曲をリリースするのが毎年冬だったので、メディアに出るのも冬だけ。失敗しても冬が終わると忘れ、また冬がやって来る…の繰り返し。すぐ忘れちゃうからいつまでも慣れないし、上達もしない」と過去にメディアの取材でも応えていたとおり、ジレンマを抱えていた時期もあったそうだ。
そんな広瀬の心境を一変させたのは、大SNS戦国時代の到来だ。2009年に開設したX(旧Twitter)アカウントでの「決定!twitterの源氏名は、、、、、ヒウィッヒヒーに、決定!」という初投稿ツイートが多くの反響を呼んだのだ。楽曲は知っているものの、素顔が長年ベールに包まれていた“冬の女王”の意外な一面に惹かれる人は多かったかもしれない。大ヒットをリアルタイムで体感した世代も、広瀬が台頭してきた時代を知らない世代も、たちまち広瀬の新たな表情の虜になった。
そして2020年には、自身の公式YouTube チャンネルで「広瀬香美の○○歌ってみた」シリーズの投稿をスタート。年を重ねてもなお衰え知らずの歌唱力で、自由奔放にカバー曲をパフォーマンスする姿と、親しみやすいキャラクターが反響を呼び、チャンネル登録者数は43万人を突破した。
2022年には、TikTokで「ロマンスの神様」ダンスが話題を呼び、Billboard JAPAN TikTok Weekly Top20にてチャート2週連続1位を獲得したほか、関連動画も含め16億回以上の再生回数を突破。「ロマンスの神様」というワードがTikTok2022上半期トレンドを受賞し、世代を超えて愛される楽曲であることを証明した。
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