【漫画】字幕がなかった昔と字幕がある今…耳がきこえない作者のアニメや映画を通した体験談に反響「とても大切なことに気づかせてくれた」

2023/10/10 18:30 配信

芸能一般 インタビュー コミック

幼い頃の記憶が今に繋がり…うさささんの『字幕のないあの時代、字幕のある今の時代』が話題画像提供/うさささん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は漫画家・うさささんの『字幕のないあの時代、字幕のある今の時代』をピックアップ。

生まれつき耳がきこえないうさささんは、普段から身近な出来事や育児日記をエッセイ漫画としてSNSに投稿しており、その内容が“気づきに繋がる”としてたびたび話題に。そんな中、8月18日に自身のX(旧Twitter)に投稿した『字幕のないあの時代、字幕のある今の時代』では、幼い頃に観た思い出の映画を大人になって“日本語字幕付き”で観たときの体験談を描き、3.6万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では作者であるうさささんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

VODに“日本語字幕”カテゴリ 耳がきこえないうさささんの体験談に「心が温まる」

『字幕のないあの時代、字幕のある今の時代』より画像提供/うさささん


ある日、うさささんのSNSアカウントにフォロワーから驚きのDMが届く。それは、某VOD(ビデオ・オン・デマンド)に“日本語字幕”カテゴリができたことを知らせる内容だった。

昔好きだったアニメの劇場版シリーズや映画館で観た映画、ビデオで繰り返し観た作品にも日本語字幕がつくということに、驚きと興奮を隠せないうさささん。試しに再生し、実際に字幕がついたテレビ画面を見てうさささんは昔の記憶に思いを馳せていた。

幼い頃、映画館に連れていってもらい家族でアニメや怪獣モノを観るも、当時は洋画を除き映像作品には字幕が付かないのが当たり前の時代。誰が何を話して、どうしてこうなるのかが分からないうさささんは、想像力をフル回転させ自分だけのストーリーを創り上げることで映画やテレビを楽しんでいたという。

そして時代は移り変わり、過去の思い出の作品を日本語字幕つきで観られるようになった現在。何を観ようか迷った結果、うさささんが選んだのは“幼い頃にビデオで繰り返し観たものの多くの疑問が残っている作品”だった。

「いま なにをいったのかな」「あぁこう言っていたのか!」幼い頃の“?”を、字幕を追って答え合わせしていくうさささん。ラストは、字幕のなかった時代を懐かしむとともに「一つの映画を、時代によって違った感覚を、2度も楽しめたなんて最高だと思わないかい?」という素敵な言葉で締めくくられている。

X(旧Twitter)上では「幼い頃からの思い出が今に繋がって素晴らしい体験をしたんですね」「捉え方が素敵で心が温かくなりました」「あえて楽しむのが素晴らしい!」「強く共感します」「とても大切なことに気づかせてもらえました」「AI字幕なんてのも発展してるしこれから増えていくといいな」など読者から多くのコメントが寄せられている。

大切にしたい2つの“時代”への想いを漫画に 作者・うさささんの創作背景とこだわり

『字幕のないあの時代、字幕のある今の時代』より画像提供/うさささん


――『字幕のないあの時代、字幕のある今の時代』を創作したきっかけや理由があれば教えて下さい。

字幕のないあの時代だったけれど、私は私なりに楽しんでいたことを。字幕のある今の時代だからこそ、聴者と同じように内容を楽しめていることを。

この2つを伝えたくて漫画を描きました。また、字幕制作に関わっている方々への感謝もしたかったです。

――本作をX(旧Twitter)に投稿後、3.6万を超える「いいね」が寄せられ読者からの共感コメントも多く届いています。今回の反響について、うさささんの率直なご感想をお聞かせ下さい。

幼い自分が自分なりに映画を楽しんでいたことが多くの人に伝わってよかったと思っています。どれも嬉しい言葉で溢れていましたが「”あの時代に字幕があったら”と悔やむんじゃなくて、こっちもあっちも体験できた自分はめちゃラッキーと思えるこの方の考え方が好き」が一番嬉しかったです。

――本作では、過去の幼いうさささんと現在の大人になったうさささんがリンクするシーンが印象的でした。作画の際にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがありましたら教えてください。

ありがとうございます、そこに一番力を入れました(笑)。字幕のない時代を嘆くような悲観的なことは描かないように気をつけました。決して悲しいわけではなかったですしね。

――字幕がない時代に想像力をフル回転させて映画を観ていた幼い頃のご自分にもしも声をかけられるとしたら、どんな言葉を届けたいですか?

まず声をかけるかどうか迷ってしまいますね。かなり集中して自分だけの世界観を作り上げているので、そっと見守りたい気持ちもあります。でももしも声をかけられるとしたら「信じられないだろうけれど、字幕がついたテレビや映画を楽しめる時代がやってくるんだよ!」ですね。きっと目をかっぴらいて驚くことでしょう(笑)。

――これまでのエッセイをまとめた『耳がきこえないママときこえるムスメのおはなし。』(白泉社)が11月1日に発売されますが、うさささんにとって日常生活をテーマにしたエッセイを描くときのこだわりや特に意識している点がありましたら教えてください。

聴覚障がい者関連のエッセイ漫画を描く時は、分かりやすい・読みやすい・伝わりやすい、この3つを意識しながら描いています。また、否定的にならないよう、なるべくポジティブな展開を目指しています。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

いつもいつも応援をありがとうございます。発信して大丈夫だろうかと立ち止まってしまうことは多々あるのですが、読者から「気づきに繋がった」という前向きなコメントをいただくことがあり、私の描く励みになっています。

これからも発信を頑張っていきますので、今後とも応援をよろしくお願いいたします。