コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“女子高生がバイト先の先輩に手作りの雑炊を届けに行く話”を描いた漫画『熱が出た日』をピックアップ。
作者である漫画家の稲空穂さんが、2023月7月16日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、4.8万件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事では稲空穂さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
アルバイトの出勤日、主人公の吉田が目を覚ますとまだ熱は下がっておらず、飼い猫の“シャケ”の面倒も十分に見てやれないほど体が弱っていた。そこで吉田はバイト先の店長に連絡を入れると、ちょうど近くで電話を聞いていた女子高生の渡辺は、心配そうな様子で“ごはんあるのかな”と吉田のことを気にかける。
そこで、祖母の家に雑炊の作り方を教えてもらいに行くことに。祖母は作り方を教えながら、「誰かが風邪をひくと、いつもの日常が恋しくて自分ができることをなんでもがんばってしまうのよね」と呟く。渡辺は祖母の言葉を今の自分に重ね、出来立ての雑炊を持って吉田の家に向かった。
その頃吉田は、シャケを隣室の戸塚に預け、玄関に置かれた差し入れの飲み物などを家にしまうところだった。渡辺は“ゼリーとかそういう差し入れでもよかったんだ~”と焦り、とっさに作った雑炊を後ろに隠す。
ちょうどその時、吉田が住むアパートの大家さんがやって来る。吉田は「雑炊ご馳走様でした」「めっちゃうまかったです」と空になった鍋を返却し、それを見た渡辺は“私がなんかする必要なかった~…”と落ち込んでしまう。しかし大家さんは渡辺が後ろに隠している鍋を見つけ、「純加ちゃん(渡辺)のもしっかり食べなさいよ」と吉田に伝えて去って行く。
渡辺は慌てて「この雑炊は私が晩ごはんに食べるので…」と言うと、吉田は渡辺が作った雑炊を見て「食べたい」「すげー元気出そう」と笑うのだった――。
熱の出た吉田を気にかけて、雑炊作りを頑張る渡辺の姿に、ネット上では「渡辺さんが優しくて惚れた」「差し入れを渡すシーンがキュンキュンした」「とにかく尊い」「ほっこりした」「優しい世界」などのコメントが続出。渡辺の祖母や大家さん、戸塚などに対しても、「登場人物が全員良い人たちで泣ける」といった声も上がっている。
――『熱が出た日』(『特別じゃない日』)を創作したきっかけや理由があればお教えください。
体調を崩してしまったときに、誰かに看病をしてもらう――。そんな経験は誰しも必ずあるかと思います。私自身、幼い頃に熱を出すと母が必ず雑炊を作ってくれました。
社会人になりたての頃にその雑炊のレシピを教えてもらい、今では私がその雑炊を家族に作っています。雑炊は「特別じゃない日」に戻るための大切な料理だなと思い返しながら創作したお話です。
――本作では、吉田と渡辺のやり取りが印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
頻繁に顔を合わせる間柄でも、育った家庭ごとに一緒に過ごしてきた人や日常の習慣などは全く違っています。会話や行動を通して、その人がどんな家庭で育ったのか、どんな風に愛され育ってきたのか、が伝わるように描きました。終盤の玄関先での会話などに注目していただけたら嬉しいです。
――稲空穂さんの作品は、登場人物が全員優しくて魅力的に感じました。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
作画の際には、「会話をしている相手の視点」や「会話をしている相手にしか見せない表情」を意識しながら描いています。
セリフが少ないシーンでも、ため息をついたり、視線を泳がせたり、考えにふけったり、その際に生まれる「間」も試行錯誤しながらではありますが、細かく描写しております。
――今後の展望や目標をお教えください。
『特別じゃない日』の世界が1話でも長く続くよう、登場人物や作中の風景を大切に作り込んでいけたらと思っています。“登場キャラ100人超え!”なんてできたら嬉しいです。
――最後に、読者へメッセージをお願いします!
10月24日(火)14時から最終投票が始まる「Webマンガ総選挙」のノミネート候補作品となっています。投票はどなたでもサイトから行えるので、ぜひよろしくお願い致します。
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