コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、猫田まんじまるさんがX(旧Twitter)に投稿した『柵の外』をピックアップ。
作者の猫田まんじまるさんが9月27日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、6千以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、猫田まんじまるさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
中学、高校が同じだった、おそらく「親友だろう」と思っていたKちゃんから年賀状が届いた。Kちゃんは、いじめを受け保健室に引きこもっていた私を連れ出してくれた。Kちゃんと私は何となく似ていて、深い話をよくした。私の「これまで」を話す相手は小さいころから選んできたが、Kちゃんに語ってもビビらなかったのだ。
そんなKちゃんは高校を卒業する前に、お父さんが18歳以降の学費を全て使い込んでしまったことで、自ら借金をして大阪に行き、美容師の専門学校を出て美容師になった。そして、学生時代に付き合ってたカレシと結婚して広島に移住した。その広島でKちゃんはダンナさんと別れ、また大阪に戻り美容師を始めた。大阪で出会ったオトコは、詐欺罪で仮釈放中の人だった。私は「それはちょっとあやういような…」と意見を言ったのだが、Kちゃんが選んだのなら…。そのオトコと結婚したKちゃんであったが、オトコはKちゃんにDVをした。そして、離婚した。
Kちゃんとはちょくちょく連絡を取り合った。それから、Kちゃんは3度目の結婚をした。今度の相手は、ちゃんと働いていてまともらしい。そんなKちゃんは、ダンナさんに「これまで」のことをどこまで話すのかに悩んでいた。相手がどう思うか、関係にヒビが入らないかなど”話したあとのこと”も考えていたのだ。
私とKちゃんは、「話す」ことよりも「経験」で問題を解決しようとしている。言葉より、古い記憶を塗り替える新しい経験をしたほうが、目の前にある「柵」を越えられるんじゃないかと…。Kちゃんは、いろいろなしがらみを背負っていたが、進んでいた。そして、Kちゃんから送られてきた年賀状には、幸せそうなダンナさんと子供との写真がプリントされていた。
保健室から連れ出してくれた時も、お父さんに学費を使われた時も、離婚した時も、Kちゃんは何度も何度も柵を越えていた。そして、柵を越えた先に素敵な人がいた。私も頑張らなくてはと決意し、柵を越えるのであった。
様々な苦難という柵を越えたKちゃんと、柵を越える決意をした私の過程が描かれる本作。二人の生き様には、「自分もがんばろって思えた」「名作です。ぐっときた。」と多くの反響が寄せられている。
――「柵の外」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
作家の先輩から「新人の頃は背伸びをせずに自分の知ってる感情を書け」と言われていたので、「まずは自分のことを書く」という練習を兼ねて書きました。
――「柵の外」の中で気に入っているシーンがありましたら、理由と共にお教えください。
ラストの数ページ。友達が何度も逆境に立ち向かって、その様子を見た主人公の「私」が柵を越える所です。人間って悩んでる時間はすごく長いけど、決めたら潔く困難に立ち向かっていくはずだ。と考えているので、そのへんはなんとか絵で描けたかなと。
――猫田まんじまるさんの作品には“心を動かされた”という多くの反響が寄せられていますが、印象に残っているコメントや嬉しかったコメントがありましたら理由と共にお教えください。
「私も頑張ろうと思った」などですかね。創作物で誰かの背中を押すことができたり、プラスに発展させられることができたらいいなと…と日頃から思ってるので、それができた気がしたので嬉しかったです。
――猫田まんじまるさんの作品では「私」が猫で描かれていますが、猫田まんじまるさんの思う猫の魅力をお教えください。
まずビジュアルが最高だと思います。寝る前に猫動画を延々と見る人も多いと聞きますし、存在自体が癒しなのかなと。あとは、媚びないところがすごい好きです。
――猫田まんじまるさんの今後の展望や目標をお教えください。
大々的に掲げているのは3つです。
1つは、「書くのが上手くなりたい」です。
普段別名義でアニメの脚本を書いているのですが、未経験でこの業界に入り、文学部出身でなければ脚本の学校に行っていたわけでもないので、始めた頃も今も大苦戦。脚本を1文字も書いたことがないところからスタートです。なので基礎がまったくなく、三幕構成や物語の型なども仕事を始めてから知りました。今も本を読んで映画を見比べて……と地道に勉強中ですが、本を読むだけじゃ絶対身につかないので、書きながら技術を身につけて、しっかり書けるようになれたらなと。
2つめは、「紙の本が出したい」です。
漫画家の知人の20人ほどがTwitter経由で紙の書籍を出すところまで行きました。羨ましい……!私も書店で「猫田まんじまる」というふざけた著者本を見てみたいもんです。ただ、今のきったない走り描きの絵では難しいだろう……とも思っているので、もう少し絵を整えなければ……とも考えています。
3つめは、「柵の外」のニュアンスを少し入れたお話を書く。です。
なんとなく「こういう話を書こう」ということと、ラストは「こうあってほしい」というざっくりとした構想はありますが、まだプロットすらできてない状況なので、完成するか謎ですが。「柵の外」の主人公は悩みを抱えていて、その悩みがなんなのかは漫画上では開示していません。…が、「柵の外」の主人公である私が、最近その悩みをいよいよ解決しなくてはならない状況になり、一人では到底解決できない問題だと思ったので、一ヶ月ほど前から精神科に通い始めました。通うことで自分のことが冷静に見られるようになり、これまで避けてきた、自分と似た経験をした登場人物が出てくる漫画を読めるようになりました。読んでいくなかで気がついたのが、自分と似た経験をした登場人物のラストや終わり方は「自死」か「病んだまま終わる」でした。その終わり方は作家の方が「取材した上でそう捉えた」、「実際にそうだった」から結末がそうなったわけであって、間違いではないけど、「自死」と「病んだまま終わる」以外の結末の物語はないのかな?と考えるようになり、だったら自分で書いたらいい、書こう、と思うようになりました。書くためには、自分が過去の問題と向き合わないと書けないので、だから精神科に通って自分の気持ちの流れを把握しています。題材が重いので、「柵の外」とは変えて、主人公を私にせず、架空の人物に自分の要素を組み込んで作る予定です。ラストは過去に最悪なことがあった人であれ、他者と関係性のなかでささやかな幸せは見つかる。のような……そんなものが書きたいです。
要は、暗雲がたちこめた状況だったところに、うっすら光が差し込んでるラストであれば。そんなものが書けたらと。なかなか書くのがしんどそうなのですぐには書かず、10年後に執筆!とかもありえそうですが……。
そして漫画表現じゃなくて文字ベースで表現するかもです!
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願
いします。
今後もよろしくお願い致します。
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