【漫画】亡き兄の文通相手に会いに行く妹…“勘違い”から始まる2人の切ない物語に反響「悲しみと尊みがせめぎ合う」

2023/10/28 10:00 配信

芸能一般 インタビュー コミック

妹の大きな“覚悟”に反響続々…サスケさんの『偽りのマリィゴールド』が話題(C)サスケ/KADOKAWA

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は『偽りのマリィゴールド』(KADOKAWA)をピックアップ。

病気で兄を亡くした妹が、兄の文通相手に会いに行くところから物語が描かれる本作。8月25日に漫画家のサスケさんが自身のX(旧Twitter)に第1話を投稿したところ、6.3万以上の「いいね」が寄せられ大きな反響を呼んだ。この記事では作者であるサスケさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

妹想いの亡き兄が残した“真実”と謎の文通相手 切なすぎる展開が話題に

『偽りのマリィゴールド』より(C)サスケ/KADOKAWA


幼い頃に両親を亡くした香住華は、兄である香住薫と2人で暮らしていた。小さい頃から薫に面倒をみてもらっていた華は、生活のために仕事をいくつも掛け持ちする働き詰めな兄を心配していた。その後、薫は結核に罹り、若くして亡くなってしまう。

そんな兄に文通相手がいたことを亡くなってから知った華は、差出人である“漆澤りり”の元を訪ねることに。彼女に会いに行くのはあくまでも兄の訃報を知らせるためだったが、小綺麗な便せんに挨拶もなく汚い字で書かれた「あいたいです」の文字を見て嫌悪感を示す。華はもしも文通相手が兄をたぶらかしていたとわかれば、その手で殺すことも密かに考えていたのだった。

東京から電車に揺られたどり着いた先は、人家もまばらでのどかな自然が広がる場所だった。住所をたどって大きな豪邸に着くと、出会い頭にある少女と出会う華。すると少女は匂いで華のことを兄だと勘違いし「来てくださったんですね薫様」「りりはお待ちしておりました」と言う。この少女が漆澤りりだと確信するも兄の顔すら覚えていないことに怒りを感じた華は、裁ちばさみを振りかざして襲い掛かる。しかし、りりは全く動じない。その姿を見て華はりりが盲目であることを知るのだった。

“兄”に会えて嬉しそうなりりを目の前に、訃報をなかなかを伝えられない華。そんな中、兄が生前無理してでも働いていた本当の理由をりりから初めて聞くことになる。真実を知り自責の念に駆られた華は、りりのため、そして兄のため、さらには自分自身の贖罪のためにもある大きな決断をする…。

亡き兄の文通相手と出会い、真実を知った華の心境の変化と大きな覚悟を描いた第1話。“勘違い”から展開していく華とりりの物語に、X(旧Twitter)上では「切ない」「悲しみと尊みがせめぎ合う」「素敵なお話に出会えた」「妹の覚悟がすごい」「予想できない展開に泣きそうになった」「いま人生で初めて尊いという感情を知った」「続きが気になる」など読者から多くのコメントが寄せられている。

“思いつき”から独自の世界観を広げて 作者・サスケさんの創作背景とこだわり

『偽りのマリィゴールド』より(C)サスケ/KADOKAWA


――『偽りのマリィゴールド』を創作したきっかけや理由があれば教えて下さい。

いつも創作にあたっては思いつきから始めています。今回は他人の恋人になり変わるというシチュエーションを思いついたのでそこからイメージを膨らませました。それがまさかここまで反応をいただけるとは思いもしませんでした。

――亡き兄の文通相手に会いに行く香住華と、その文通相手であり目が見えない漆澤りり、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?

ビジュアル面になりますが、華が髪を切るシーンを印象的に描きたかったので、華の髪は黒く長くしました。構想の段階で兄ではなく姉にしようとも考えたのですが、髪を切るというある種ショッキングなシーンに理由が欲しかったためやむなく兄になりました。

――第1話をX(旧Twitter)に投稿後、6.3万を超える「いいね」が寄せられ大きな話題となっています。今回の反響についてサスケさんの率直なご感想をお聞かせ下さい。

沢山の方々に読んでいただけて嬉しい反面、正直なところ戸惑っております。創作においてシチュエーションや関係性は違うものの、同じものを込めているのに他の作品とここまで差があるのはなぜなんだろうと創作の難しさを感じています。

――本作では登場人物たちの表情にあらわれる様々な感情がシーンごとに繊細に描かれていて印象的でした。作画の際のこだわりや「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

りりの目ですね。盲目のキャラクターを描く際、目を閉じていたり焦点が合っていないのがよく見かけますが、りりはしっかり声(音)のする方を見ています。これはりりの意志の現れからきているのでこの先もりりの目の表現を見ていてほしいです。

――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?

個人的に気に入っているのは、りりが華(薫)に対して「(妹様に)早くお会いしたいなぁ」と言うシーンです。会いたい相手が目の前にいるのに繋がらないすれ違いがもどかしくて好きです。

――作品の世界観をつくりあげ、物語を展開していくうえでサスケさんがこだわっている点や特に意識している点はありますか?

常になにかしらのギャップは組み込もうと思っています。キャラ自身の個性やペアになったキャラ同士の凸凹感は意識して作るようにしています。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

X(旧Twitter)に掲載した1話に続き、読者の皆様のおかげで8月に1巻を出させていただくことができました。いただいた感想の中に、悲しい物語だけどそれがいいと言ってくださった声を多々お見かけました。きっと華はずっと苦しまなきゃいけないんだと思います。そんな二人の関係がどう進んでいくのか、見守っていただけると嬉しいです。