例えば、最も初期から存在するヴィランの一人「白雪姫」の魔女は日々、魔法の鏡に向かい「魔法の鏡よ、この世で一番美しい女性は誰?」と、自分が誰よりも美しい存在であることを確認。そして、白雪姫が自分より美しいと聞けば、白雪姫を葬り去って世界一の美しさを取り戻したいと切望する。
なんという人間くささ。毒リンゴで白雪姫を亡き者にしようというアイデアは別として、“誰よりも美しくありたい”という嫉妬心は誰もが共感できるものだろう。事実、アメリカ映画研究所(AFI)100年を記念して2003年に発表された“ヒーロー&悪役ベスト100”ランキングでは、「ゴッドファーザー」のマイケル・コルレオーネや「時計じかけのオレンジ」の主人公アレックスといったアメリカ映画史に残るキャラクターを抑えて「白雪姫」の魔女が悪役ランキング第10位にランクインしている。
2023年に実写化されて反響を呼んだ「リトル・マーメイド」に登場する海の魔女アースラも、ディズニー・ヴィランズを代表する一人。いかにも邪悪なルックスとドスの効いた声に加え、アニメ版同様アリエルに足を与える代わりに美しい声を奪ったり、その声を使って王子を誘惑したりと、愛嬌のかけらもない悪役ぶりを披露している。
だが劇団四季ミュージカル版では、そんなアースラの寂しい一面も見てとることができる。アースラが歌う楽曲「パパのかわいい天使」では、“私は美しい姉たちに囲まれた醜い子” “父ポセイドンにも愛してもらえない”と、彼女が悪に堕ちた背景をうかがわせる切ないエピソードが語られている。アースラが着けている貝のペンダントは、醜いアースラを不憫に思った父ポセイドンから贈られたもの、なのだそう。
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