さらに、アースラには実在のモデルがいたことも知られている。1980年代に活躍していたアメリカ人歌手・ディヴァインがその人。ジョン・ウォーターズ監督作品で100kgを超える巨体のドラァグ・クイーンを演じたその姿が、アースラにそのまま投影されているという。
その他「アラジン」のジャファーや「101匹わんちゃん」のクルエラも、キャラクターイメージを作るにあたってモデルにした人物がいると言われている。彼らからなんとも切実で哀愁に満ちた人間らしさを感じるのは、実在の人物をモデルにリアルなキャラクター造形がなされているからなのかもしれない。
そんなディズニー・ヴィランズの中でもリーダー的存在と言えば、「眠れる森の美女」の邪悪な妖精マレフィセントだろう。
実写作品「マレフィセント」(2014年ほか)では大物ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが主人公のマレフィセントを演じたが、アンジェリーナはインタビューで、マレフィセントの魅力について「共感できること。誰の心にもマレフィセントはいる。とても孤独で傷つくことも多く、でも最後には愛する人のために戦うの」と語っている。スターをも魅了するマレフィセントの魅力は、そんな孤高の強さだ。
「マレフィセント」では、そんなマレフィセントが“悪”になるまでの悲しいエピソードが描かれている。純粋な妖精の少女マレフィセントが人間の青年と恋に落ち、悲しい裏切りにあって絶望と憎しみの中でオーロラに呪いをかける。ただ愛が欲しかっただけの彼女を変えてしまったのは、人間の身勝手な欲望だったのだ。
「マレフィセント」でアンジェリーナは幼いオーロラ役の愛娘ヴィヴィアンと母子共演を果たしている。ツンと表情をとがらせ隙を見せないマレフィセントが幼い少女に抱っこをせがまれ、ふと見せる戸惑った表情が、なんともいえず人間らしい。そんな人間よりも人間らしい悪役たちの活躍に今後も期待したい。
ディズニーヴィランズが登場する各作品はアニメーション、実写版ともにディズニープラスで配信中。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
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