――もう一度「Bitter」に話を戻すと、この曲は、ほろ苦い心情を軽やかなトラックに乗せて優しく歌われていますよね。歌詞にはずばり「Life is bitter」とあります。しかし優しい曲調のせいなのか、途中から「bitter」が「better」に聴こえるんです。
あ〜。気付いちゃいました? そうなんです、実は最後のサビから「Bitter」を「Better」と歌っているんです。でも歌詞は「Bitter」のままにしていて。
――それはなぜですか?と、あえて聞いてもいいでしょうか?
えっ、そんな野暮なこと聞きます(笑)? 気付く人が気付いてくれたらいいなくらいのちょっとしたギミックです。人生は苦い、辛い、ということを身体に染み込ませていくと、やがて「それもまた人生か」と悟るようになる。そうしたことを水面下くらいで感じ取れるように…というちょっとしたギミックです。いきなり気付かれるとは思わなかったな。
――素敵なギミックだと思いました。ちなみに「ほろ苦い」を英語にすると「Bittersweet」ですが、この言葉ではなくタイトルを「Bitter」にしたのはなぜでしょうか。
「Bittersweet」にしちゃうとネタバレみたいだと思ったんです。それに「人生ってほろ苦いよね」と言っている人よりも「人生って辛いよね」と言ってる人のほうが良くないですか? 「ほろ苦い」って、ちょっと酔ってるじゃんと思ってしまう。「何、『ほろ』とかつけてんの?」と。歌がきれいごとになってしまう感じがしますよね。
もちろんこういうインタビュー記事で分かりやすく伝えてくれるのはいいんです。だけど歌っている人間がそこに酔い始めたらきれいごとになるし、そうすると聴く方はしらけますよね。だからはっきり「苦い」と言うべきだと思ったんです。
――ちなみに、ビッケさんは続々とタイアップ作品を発表されていますが、曲のストックがたくさんあるのでしょうか?
いやいや、全然ないですよ! ストックはゼロです。言われてから作っています。受注生産型なので、普段は在庫なしです(笑)。
――ちょっと意外な気がしました。常に作り続けていると思っていたので。
特に最近はそうじゃないですね。正直に言うと、あまり時間がなくて。リリースは続いていくし、何もやらない時間がほとんどないんです。ありがたいことにいろいろなオファーが続いているから隙間がないんです。ただ、仮にストックがあったとしても、オファーを受けてから作った方が良いと思っています。その方が最新の自分を反映できて良い曲になるので。
――もし、タイアップが全くない状態で、誰にも何も頼まれず、時間も自由に使って好きなものを作ってくれと言われたら、今のビッケさんはどんなものを作るんでしょうか。
まず、半年かけて何を作るべきか考えます。その半年のうちに自分もまた変化していくから、ギリギリまで調整しながら半年間で方向を定めます。といっても結局はそのときの自分のトレンドになると思いますね。今ぱっと思いつくものを言うと、めちゃくちゃでかいオーケストラとダンスミュージックを混ぜるとか。そういった新しい感動とか、鳥肌の立て方みたいなのを探していく気がします。
――オーケストラとダンスの組み合わせって、めちゃくちゃビッケさんっぽいですね。
好きなんですよね、混ざらないはずのものが混ざるのが。今の自分のトレンドなので、むしろ次に作る曲がそういうものになるのかも。
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