ビッケブランカ EP『Worldfly』をリリース 「普通に生きている中に体験はあるから、“場所を空けておく”ことが大事」

2023/10/25 12:00 配信

音楽 インタビュー

最新EPをリリースしたビッケブランカ    撮影=西村康

両親から「全部をやれなくてもいい、一つでもいいから、誰にも負けないことを見つけろ」と言われた



――「Snake」はパリでMVを撮影されたとのことで、今年パリで行われた「Japan Expo」に出演されましたが、そのときの経験が反映されているのでしょうか。

パリには一度しか行ったことがなかったけれど、以前からフランス語で歌ったり、ファンクラブの名前も「French Link」という名前だったりして、頭の中では馴染みの場所だったんです。だから『Japan Expo』に行く前に既にデモはできていました。MVを撮影しているときは、まだ歌詞は完成はしていなかったんです。パリで撮影して帰ってきてから歌詞を仕上げてレコーディングしているので。

――この曲ではパリの「華麗さと怪しさの表現にトライした」ということですが、どんなところに「怪しさ」を感じたのですか?

パリはどこを見ても怪しいですよ。僕の印象では、すぐ近くに裏があるみたいな感じです。善と悪、光と闇が同時に混在しているというか、完全に平和できれいな街ではないという。

――今回のEPには、3月にデジタル配信された「革命」も収録されています。

これは作っていて楽しかったですね。久しぶりに全集中、全開放みたいな感じで爆発しました。“疾走感”について改めて考えた曲です。でも疾走するだけでは退屈だったので、自分の本当の疾走感を表現するために、一度ぐっと溜めてテンポチェンジしてから、さらに走っていく緩急をつけることにこだわりました。

――「革命」リリース時のインタビューでは、ビッケさん自身の革命の話として、「人生の早い時期に自分を乗り越える経験をした」とおっしゃっていましたよね。

両親から「全部をやれなくてもいい、一つでもいいから、誰にも負けないことを見つけろ」と言われたことです。その考えに出会ってから、自分の可能性を探り続ける人生が始まったんです。

最初は何だったんだろうな…。多分小学生の頃、流行りのカードゲームで遊んでいて、母親に「大会に出ていい?」と冗談っぽく聞いたんですよね。「どうする? 俺がカードの世界チャンピオンになりたいとか言ったら」って。当時の自分はカードゲームのチャンピオンをちょっと揶揄していたんです。そしたら「いいよ? 何かで1位になるなら」って肯定的に返されて、驚いちゃって。それからですね、何かで一番になれるなら何でもいいと気付いたのは。

――いくつかのインタビューでお話されていることですが、当時のビッケさんは足が速かったけれど、転校したらもっと速い人がいて、「自分はこれじゃないんだな」と悟ったと。

そういうこともありました。他にも、小学生の頃は勉強ができたけれど、中学校に入ったら中間テストの結果が2位で、絶対自分が一番だと思っていたのに、隣のクラスの女の子に圧倒的な差を見せつけられて「これでもないんだ」と悟ったとか。

――なぜ、走ることや勉強には固執しなかったんでしょうか?

最新EPをリリースしたビッケブランカ    撮影=西村康

まあ、ハングリーさがないんでしょうね(笑)。でも、ちょっと生意気な言い方ですけど、音楽に関しては自分が抜きん出ていてライバルがいなさ過ぎたから、「だったらこっちでいいじゃん」と思ったところはあります。

――走ることや勉強では圧倒的な差を見せつけられて完全に負けたけれど、音楽では負けたと感じることがなかった、ということですよね。

そうですね…いや…。恥ずかしいからあんまり強めに書いてほしくないんですけど(笑)、藤原くん(藤原聡、Vo.& Key.)には勝てないです。あんなにど真ん中を刺せるひたむきな人には。だけど、藤原くんがいるから自分がまた出来上がった気もするんです。あそこまでど真ん中を1ミリのズレもなくぶっ刺せることができる人間がいるなら、そこでやるのは無理なので、だからこそ自分はめちゃくちゃアウトローになりきれるというか。そういうのは、仲が良いからこそ思えるのかもしれないですけど

ど真ん中を刺している人が寸分の狂いもなく刺し続けてくれるから、こっちは真ん中を狙わなくなる。思えば昔から、自分はそういう立ち位置だった気がします。生徒会長や学級委員ではないんです。だから、藤原くんが自分を本来の立ち位置に戻してくれた気がしますね。

――ちなみに「革命」というタイトルはどの段階で出てきたんでしょうか?

タイトルは最後ですね。「伝言」という仮タイトルだった瞬間もあれば、「遊撃」だった瞬間もあったけれど、思いのほかパワフルになっちゃったから、もっとドーンと言っても良い気がして。その最高峰はと考えた結果、「革命」という言葉が出てきました。

――ビッケさんは普段から語彙を増やすための努力をされているんですよね。

そうですね。いろんな言葉を知ろうとはしています。ただ、メモをすることはないです。メモを取ると精度が落ちるので。あまり重要ではないことまでメモってしまうし。本当にすごいことって忘れないじゃないですか。忘れるということは、多分、そんなに良い言葉じゃないし、良いアイデアじゃないということなんです。本当のことは心にこびりつくように残るから。

とはいえ、積極的に体験しにいくわけでもないんですけど。自分から取りに行ってしまうと、それもまた精度が落ちてしまう。「これって良いことなんだよな」とか「これだけ時間をかけてここに来たんだから、何か吸収しなきゃ」とか思うと、そのマインドがバイアスになってしまうんです。だから、「ただ場所を空けておく」みたいな感じです。普通に生きている中に必ず体験はあるから。

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