イム・セミは、中学生の時、街でスカウトされ、ファッション雑誌のモデルとしてキャリアをスタートさせた。表紙やメインページではなく、美容ページなどの小さな記事ばかりだったが、写真を撮られる楽しさを感じて、高3の時にドラマ「四捨五入 2」のオーディションに挑戦。16時間に及ぶ最終面接を見事クリアして、初のドラマ出演を果たした。
だが、演技の勉強をしたことが無かった彼女は、他の共演者のように正確な発音や聞き取れるイントネーションでセリフを言えない上に演技力不足も指摘されてしまい、挫折を味わう。そして、演技を学ぶ為に大学の放送芸能学科に進学し、大学時代は、作品に出演する事はほぼ無く、学ぶ事に重点を置いた。
イム・セミは、低めの落ち着いた声が特徴的だが、デビュー当時は、それがネックにもなった。個性より枠に合わせた俳優が注目される時代だった。「私のような話し方をする者は演技をしてはいけない、とも言われた」そうで、絶望して他の道も考えたが、「私には私だけの色がある」と希望を捨てずに、コツコツと実力を磨き続けた。そして、数々のアルバイトをし、その経験が今、とても役立ってるそうだ。
そうこうするうち、俳優にも個性が求められる時代になり、彼女にもチャンスが巡って来た。そして、2015年のドラマ「その冬、風が吹く」での主演のソン・ヘギョの友人役で注目されるようになり、以来、着実にキャリアを重ねている。
幼い頃から、教師、獣医、婦警、ミスコリア…と、夢が多かった彼女にとって、役を通してではあるが、その夢を叶えられる俳優は天職。「演技をすれば、望んだ人生、気になった人生を間接的に経験できるという点が良いです。想像もできなかった職業まで経験できますから。他人の人生を少しでも歩けるのが演技の魅力」と語っている。
プライベートでは、運動好きの両親の影響か、幼い頃から体を動かすのが好きで、ランニングが趣味。山に行って走ったり、先日「最悪の悪」のPRで来日した際も、朝はホテルの周りを走っていた。サンティアゴで40日間歩いた事もあるとか。
そして、動物や自然に対する関心が高く、ゼロ・ウェイストとビーガンを実践している。ビーガンを始めたきっかけは、映画「ジョーカー」を観て、主演のホアキン・フェニックスにハマった事。彼がビーガンだと知り、「ビーガンになれば、あんなに上手く演技ができるのか?」という好奇心で、いろいろ調べ始め、「ドミニオン」というドキュメンタリー映画を観て、ビーガンになる事を決めたんだそう。また、貧しい人を支援するプロジェクトに俳優仲間と参加した事もある。
このように意識が高い彼女だが、性格は自然体でサバサバ。今回共演したチ・チャンウクとウィ・ハジュンも「とても気楽だった」と、彼女の性格を褒めていた。当媒体のインタビューの際も、終始にこやかで明るいオーラを放っていて、その夜の完成披露試写会でも客席の本媒体記者を見つけてニコニコと小っちゃく手を振ってくれたりして、とてもチャーミングな印象を受けた。
そんな自然体の姿勢は「私の体と心を健康に守る俳優になりたい」という発言にも表れており、「童顔を維持して若い演技がしたい、というより、私の顔、私の生きていく姿が人生によく溶け込むことを願っている。自分の体が限界を迎えるまで楽しく演技したい」と語っている。
「私という存在が、これだけ20年も(芸能界で)生き残っていることを自ら褒めたいです。過去には、完璧でもないのに完璧を目指して、どうしてもっとうまくできなかったのか…と自分を責めてましたが、今はそのままを受け止めなければならないのではないかと思っています。叱責はデフォルトにして、慰めなければならないような感じ」と言うイム・セミ。
「『最悪の悪』が公開になった時も、自分自身を評価せずに全体を眺められるようになりました。今日の自分に集中しながら、時を重ねていきたいです。ずっと初めて挑戦する演技をしてみたいし、最善を尽くしたい」と、挑戦を続ける彼女は、これからも新たな姿で魅了し続けていく。
◆文=鳥居美保
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