NEWS・加藤シゲアキの最新長編小説「なれのはて」(講談社)が10月25日(水)に発売。それに先駆けて、24日に講談社で記者会見が行われ、加藤が作品執筆時の苦労についてや、ファンの反応などを語った。
同作は、構成をじっくり練り上げ、原稿に向きあった期間は約3年。書籍ページにして447ページ、文字数にして38万字を超える長編小説。物語のきっかけになるのは、終戦前夜に起きた日本最後の空襲といわれる、秋田・土崎空襲。母が秋田出身だという加藤が温め続けてきたテーマだ。いつの時代も悲劇と後悔は背中合わせ。やるせない人間の業と向き合いつつ、一方で力強く生き抜こうとする人々の姿が、一枚の「絵」のミステリを通じて描かれる。
戦争にまつわる作品を執筆するにあたり、加藤が自身のルーツのある秋田における「戦争」を調べていく中で知ったのが「土崎空襲」だという。「どうしてそこに空襲が起きたのかを調べるうちに、たくさんの発見があり、『これは自分が書かなくてはいけないのではないか』という、ある種の宿命みたいなものを感じ始めました」と明かす。「ただそれを真正面から描くのではなく、エンターテインメント、小説、物語として書くことで届くものがあるんじゃないか。『オルタネート』を経て書くべきものはそういったものなのではないかなと思いました。そして言うなれば自信もありましたね。これなら書けるんじゃないかと」と、続けた。
ただ、実際に起きた戦争を描くということには葛藤もあったそうで「史実を基にして小説を書くのは初めてでしたし、果たして事実として起きた空襲、被害者のいるものを物語にしていいのか、戦争というものを“物語化”していいのかと。一方で書くことで伝わることはある、書くことで届くものはあるという葛藤をずっと抱きつつ。実際にあった話ですし、史実を基に遺族や被害者、そういった方々の傷をえぐらないように、いろんな所に配慮をしながら書くという部分は非常に苦労がありました」とセンシティブなテーマだからこそ執筆する上で意識したことを話し、「書き上げて、刊行に至り、自分がやった道は間違っていなかったんではないかなと現時点では思っています」と力を込めた。
そんな今作は、書店員や書評家からの評判が高く、発売前に重版も決定。全文を掲載した「小説現代10月号」(9月22日発売)は多くの書店で完売している。
こうして大きな反響を呼んでいることについて、加藤は「ありがたい限りです!本当に」と笑顔を見せ、「初版部数も決して少なくない部数を刷っていただいたんですけど。『オルタネート』で自分も想定していなかったような注目をしていただいたので、その時の影響で『次作、加藤シゲアキは何をやるんだ?』と。作家の先生方からも『早く書け』とすごくお尻をたたかれたんですけど、結果として構想から3年かかっただけはあるような自信作に仕上がったなと思っています。それが話題になっているということは、自分がチャレンジしたことは間違っていなかったんじゃないかなと再確認する日々でございます」と恐縮しながら、手応えをにじませた。
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