コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は漫画家・真山創宇さんの作品「江戸怪談『百の世の夢』濡れ女と赤子の話」をピックアップ。江戸時代を舞台にした連作「百の世の夢」のなかの1話である本作。作者の真山創宇さんが10月7日に自身のX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、4.5万件を超える「いいね」が寄せられるなど大きな反響を呼んだ。本記事では真山創宇さんにインタビューをおこない、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
ある日男が海辺を歩いていると、ずぶ濡れの女が「ちょっと抱いておくれ」と赤子を渡し、そのまま姿を消してしまった。女はいつまで待っても帰ってこない。仕方なく赤子をあやす男だったが、不思議なことに抱いた赤子が少しずつ重くなってくる。普通なら思わず手を放してしまうところだが、男は気にせずあやし続ける。
それどころか、男は「俺は子が欲しかったが嫁が貰えなかった。お前さえ良けりゃ俺の子になるか?」と赤子へポツリ。言葉が伝わるはずもなかったが、赤子は明らかに人の子のものではない笑顔を浮かべるのだった。
三年後、赤子は見上げるほど巨大になった。男は赤子に「金坊」と名付けて奇妙な生活を続けていたある日、男の元に赤子を手渡した女が現れる。女は濡れ女だと語り、人ではないとあっさり正体を明かした。「子を投げ捨てりゃお前を喰おうと思っていたが、そこまで私の子を育てた人間は初めてだ」と男に語り、感心したようす。
男も命惜しさではなく、本心から「人の子ではねえと気づいていたが、鈍臭えが良い子だったよ」とつぶやく。そして寂しそうに「金坊を連れて行くのか?」と聞くと、濡れ女は「お前さえ良けりゃ最後まで看取ってくれ」と立ち去る。だが喜ぶことはできなかった。去り際に、濡れ女は胸が詰まるような事実を置いていったからだ…。
孤独な男と人ではない子どもの、奇妙だが心温まる関係性を描いた本作。X(旧Twitter)では「ささくれた心に優しく染みる話でした」「こんなに後味のさっぱりした怪談は初めて読んだかもしれない」などのコメントが寄せられている。
――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
私の作品に江戸怪談「百の世の夢」という怪談シリーズがあります。その中で濡れ女のお話を描こうと伝承を読み、赤子を捨てなかったらどうなるんだろうと思いました。
偶然捨てない男が現れましたので、そのままお話を進めてみました。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
世界観かな、と。筆で描いた線がお話とマッチ出来ていればと思います。でもそれは読み返した時にふと気づいて貰えたら嬉しいです。気づかなくても大丈夫です。
――「濡れ女」伝承のキーとなる“不気味な赤ちゃん”を描く際、気を付けたことはありますか。
スタンダードに不気味な赤ちゃんを描きました。出会う人によって、お話が変わると思いましたので。
――赤ちゃんが重くなった際、男が「怒ったか?」と感じた理由をどう解釈されていますか。
コメントでよく「鈍感な男」といただきますが多分そうなんだと思います。達観していると言えば格好良く、渡された時点で愛着が湧いたのかもしれません。
赤子の意思表示と思い楽しかったのでしょう。
――優しい男と出会った濡れ女ですが、今後も同じように人を呪い続けるのでしょうか。
人とは違う隣人、怪だと思いますので、人を狙っていると思います。今回は出てきませんでしたが、海の中で牛鬼が待機しているかもしれません。
――今後の展望や目標をお教えください。
怪異や怪奇幻想、怪談、ホラー、不思議なものが好きなのでそんな作品を作り続けたいです。当面の目標は、現在連載進行中の「煙羅怪奇な物語」シリーズの形になりたがっているお話をすべて完成させたいと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
江戸怪談「百の世の夢」シリーズは2010年から2018年に描いた作品で、今また沢山の人に読んでいただいたことがとても嬉しいです。
ありがとうございます。今後も怖かったり、怪奇で不思議な話を描いていくと思いますので、興味ありましたらお付き合いいただけると嬉しいです。
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