声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
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人に何かを相談するのは意外とハードルが高い。
ハードルも高い分、ちょっとした悩みに近いけどそこまで重たいわけではない相談は尚更相談しよう、とまではいかないだろう。それでも自分が気にしている場面に出会うたびに「あ〜思い出した、私はこれがずっと引っかかってたんだ」とモヤモヤすることがある。
今回紹介するのはそんな誰かのちょっとした相談できないことを40篇詰め込んだ森絵都さんのショートショート作品『できない相談』だ。
人がご飯を食べないと元気が出ないのと同じく、私の場合は文章から得られる栄養もあると勝手に思っているのだが、最近は疲れていて文字を読むことが難しいけど本は読みたい。
そんな日々が続いていた。
そんな時、寝る前に森さんのショートショートを読んでみた。自分以外にもマイルールみたいなものになんとなく縛られることってあるんだなと思いながら寝付くのが心地いいことに気がついた。
作中で登場するもので共感したものだと、仕事のために現場行くと思って職場に向かうと疲れだけが蓄積するが、仕事帰りにここでしか買えない飲み物を買う、現場近くの温泉に行く、そんなサムシングエルスを追加するだけでちょっとワクワクするというのは「私もよくやる!」と頷きながら読んだ。ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」を"〇〇の視点で見た時どう感じたかを書きなさい"という読書感想文は既視感を感じて「わ〜見たことある」と懐かしさすら感じた。
本書は誰かの人生を詰めこんでいるようで私の日々の生活を読んでいるかのような不思議な感覚になったのが面白かったのと同時に、寝る前に私みたいに考える人は沢山いるんだなと思えるだけでちょっとだけ深呼吸をして眠ることができた。
私の性格的に、一度無理だと思ってしまうと二度と大丈夫だった頃に戻ることはない。
例えば携帯ケースや何か使っている物が知り合いだけどそこまで話したことがない人と被った時、なぜが使えなくなってしまう。「私も同じ物持ってます!」と声をかけられるのは大丈夫なのに、自分が「あ、同じ物持ってる」と気づいた途端、もう自分の物ではなくなった感じがして、勝手に気まずくなってしまうのだ。
この私の「できない相談」は、誰からも共感されないかもしれないし、共感されるかもしれない。
大人になるにつれて気付かないうちにマイルールに縛られてしまうようになっていたが、本作を読むだけで少しホッとした。寝る前のお供に是非手に取ってほしい。
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