物語は二人の若者の恋愛、親子の関係性が主軸に描かれているが、現代社会に残り続ける多くの社会問題も映し出されている。「火は立入禁止!」と水の警備官に省かれ、幼い頃のエンバーは花を見ることができなかった。一方、ニューヨークに移り住んだ、移民2世の監督自身も「歓迎されていない。受け入れてもらえない」という経験をしたことがあるという。
他にも水が圧倒的なマジョリティであり、正反対でマイノリティな存在の火が感じる計り知れない「疎外感」を水は分かっていないような瞬間が多くある。
例えばウェイドが自分の家にエンバーを招き入れ、彼女が持つ才能に気付いたウェイドの母親が、当たり前のように一流企業のインターン生になることを推奨するシーンがある。自分のことのように喜ぶウェイドだが、エンバーのこれまでの葛藤を知るよしもない。結果的にはエンバーの悩みの種である癇癪(かんしゃく)の原因を知れたきっかけにはなったものの、まだまだ現代に残る格差社会の傷を感じ取れる一面であった。
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◆文=suzuki
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