「ロキ」でMCU作品初参加のオーウェン・ウィルソン、コメディーもシリアスも絶妙な表現力でこなす名優の新境地

2023/11/05 11:10 配信

ドラマ 映画 コラム

「ロキ」でオーウェン・ウィルソンが演じているメビウス(C) 2023 Marvel

マーベル・スタジオが製作するオリジナルドラマ「ロキ」シーズン2の第5話「サイエンス/フィクション」が11月3日に配信された。第4話のラスト、ヴィクター・タイムリー(ジョナサン・メジャース)が時間織り機を処理速度倍増器を使って延命させようとしたが失敗し、ヴィクターは消えてしまう。そして時間織り機も臨界点を迎えた。第5話は、誰もいなくなってしまったTVAにロキ(トム・ヒドルストン)一人だけが取り残された状態からスタート。いよいよ次回が最終話ということでストーリーも大詰めに。そこで今回は、ロキの一番の相棒と言えるメビウスを演じるオーウェン・ウィルソンについて、経歴などを振り返ってみたいと思う。(以下、ネタバレを含みます)

ロキの身に再びタイムスリップが


シーズン2の第5話では、第1話で頻繁に起こっていた「タイムスリップ」現象が再びロキの身に起こり、自分では制御できない様子。TVA自体は「フェイルセーフ・モード」に切り替わったという館内アナウンスがあったように、エラーが発生した時の非常時モードに切り替わっている。ロキはタイムスリップして、TVAの中にいる少し前(過去)の自分の姿を見たり、分岐時間軸の1962年で難攻不落と言われていた刑務所があるアルカトラズ島から脱出しようとするケイシー(ユージン・ コルデロ)を見つけたり、2012年のニューヨークで医師として働いているハンター・B-15(ウンミ・モサク)と会ったり、2022年のオハイオ州でジェットスキーの販売員をしているメビウスと遭遇したり、1994年のカリフォルニア州でSF作家になっていたウロボロス(キー・ホイ・クァン)を見つけたり、TVAからいなくなった者たちと時間を超えて会うことができた。ただし、自身でコントロールできないので思った所に行けるわけではない。それぞれ分岐時間軸で生きる彼らはロキのことなど知らないし、TVAのことも知らない。

一方、シルヴィ(ソフィア・ディ・マルティーノ)は他の人たちと違ってロキのことを認識している。飲みながらロキに「どうしたいの?」と聞くと、ロキは「友達に戻りたい。友達を取り戻す。一人は嫌だ」と本音がこぼれた。“裏切り王子”と呼ばれ、自分以外誰も信じず単独行動することが多かったロキ。TVAに来てから心境に変化があり、今はそういう“友達”を思う気持ちも生まれている。それこそがタイムスリップをコントロールできる鍵でもあった。

そんな“友達”という考えを生むきっかけとなったのが、メビウスだ。メビウスはTVAの分析官で、捕獲の難しい変異体が出てきた時は現場を仕切ることも。逃亡している変異体の情報などを徹底的に収取し、調査する。ロキと出会った時は、変異体と分析官という対立する立場で、言い争いをしながらも、いつしか奇妙な友情が生まれていった。

「ロキ」シーズン2の第2話より(C) 2023 Marvel

盟友ウェス・アンダーソン監督と大学在学中に出会う


メビウスを演じるオーウェン・ウィルソンは、1968年11月18日に米国テキサス州ダラスで生まれた。大学在学中にウェス・アンダーソンと出会い、脚本を共同執筆した1996年公開の映画「アンソニーのハッピー・モーテル」に出演。同年、俳優でもあるベン・スティラーが監督を務めたジム・キャリー主演の「ケーブルガイ」にも出演している。ウェス・アンダーソン監督の作品に多く関わっているだけでなく、ベン・スティラーともその後多くの作品で共演していたりするので、この最初の頃の縁というのは強いものがあると言える。

1997年公開の映画「アナコンダ」では録音技師のゲアリー・ディクソンを演じ、「パーマネント・ミッドナイト」にも出演。実在するハリウッドの人気脚本家の成功と破滅、麻薬漬けの日々を描いた物語で、シリアスな一面が見える作品になっていた。

1998年には日本でも大ヒットした映画「アルマゲドン」に出演。演じた“オスカー・チョイ”という人物は、カウボーイを気取る陽気なテキサス男。小惑星破壊計画を聞いた時、他の人たちが物怖じする中、一人だけポジティブに受け止め、ジョークを飛ばしたりして場の雰囲気を変えていった。メインキャストではなかったが印象に残る役となった。

2000年には「ミート・ザ・ペアレンツ」でまたしてもベン・スティラーと共演。2004年、2010年の続編にも登場している。同じく2000年に「シャンハイ・ヌーン」でジャッキー・チェン演じる“チョン・ウェン”とコンビとなるロイ・オバノンを演じた。アクション満載の作品で、ジャッキーとの凸凹コンビの活躍が楽しい作品だった。こちらも続編として「シャンハイ・ナイト」が制作され2003年に公開されている。

面白かったコンビといえば、2003年公開の「アイ・スパイ」もそう。ボクシング世界ミドル級チャンピオンで無敗を誇るケリー・ロビンソン(エディ・マーフィ)と組むことになった国際保安局BNSのスパイ、アレックス・スコットを好演している。

さらに2005年の「ウェディング・クラッシャーズ」、2006年の「トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合」で主演を務めており、コメディー作品に定評がある俳優として存在感を発揮。そういったコメディーという意味では、「ナイトミュージアム」シリーズで演じているミニチュアのカウボーイ“ジェデダイア”役もハマり役だった。2001年公開の「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」はウェス・アンダーソンが監督で、オーウェン・ウィルソンが共同で脚本・製作を手掛けている作品ということで役者としての彼の良さもより引き立っている。