コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、原作・羽柴実里さん、作画・zinbeiさんによる『酒と鬼は二合まで』(小学館)をピックアップ。
やわらかスピリッツにて連載されている本作は、バーテンダーを目指す“ぼっち”な女子大生と秘密を抱えた“キラキラ”ギャルがカクテルを通じて繋がりを深めていく物語を描く。8月30日に、zinbeiさんがX(旧Twitter)にて第1話を公開したところ4.9万以上の「いいね」が寄せられ、反響が相次いだ。この記事では羽柴さんとzinbeiさんのお二人にインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
女子大生の志田波織(ナオリ)は、コミュ障な性格からなかなか友達ができずにいつも一人で過ごしていた。そんなナオリの唯一の楽しみが、自分でカクテルを作り美味しく飲むこと。しかし、心の中では「“誰か”に作ってみたい」「ゆくゆくはおじいちゃんみたいに自分の店を持ちたい」と思っていた。
そんな中、ナオリは大学の授業終わりでクラスメイトから突然声をかけられ、苦手な飲み会に“ドタキャン埋め合わせ要員”として参加することに。雰囲気に圧倒され馴染めないでいたが、そこで同学年の女の子・伊吹ひなたと出会う。ギャル風でキラキラした風貌に初めは苦手意識を持つナオリ。しかし、ひなたが男性陣から無理にビールを押し付けられているのを見て、ナオリは咄嗟にジョッキを奪って代わりに飲み干す。そしてハッと我に返った後、恥ずかしくなってその場から逃げるように立ち去るも、ナオリを追いかけようとしたひなたが突然のめまいで倒れてしまう。
店を出た二人は、ナオリの家で一旦休むことに。しかし、部屋に並べられたたくさんのお酒を見たひなたから「一杯でいいからお酒を作ってほしい」と頼まれる。ナオリは戸惑うもまたとない機会だと感じ、“闘牛士”というカクテルを作って差し出す。するとひなたはすぐに飲み干し「ウマイ!」「もう一杯!」とせがむ。その言葉に嬉しくなったナオリは、ついたくさん作り過ぎてひなたを酔わせてしまうのだった。
しばらくしてひなたの様子がおかしいことに気づくナオリ。ふと見ると、その頭からは鬼のツノが生え、さらには「あたしのバーテンダーになってよ」と迫られて…。
“ぼっち”女子大生と“キラキラギャル”鬼。交わるはずのなかった二人を美味しいお酒が繋いでいく様子を描く本作。終盤、ひなたの秘密にまつわるまさかの正体にも反響が集まり、ネット上では「最高」「めっちゃいい」「最強の組み合わせすぎる」「これは絶対展開読めない」「キャラクターや掛け合い、ストーリーも魅力的」「誰かとお酒が飲みたくなる」など多くのコメントが寄せられ話題となっている。
――原作を担当されている羽柴実里さんにお尋ねします。『酒と鬼は二合まで』はどのようにして生まれた作品ですか?
羽柴実里さん:お酒が題材の読切でデビューしたのでそのままお酒にまつわる連載企画を考えていたのですが、コンセプトとしてあまり面白いものになっている実感がなくもがいている時に「酒呑童子」というモチーフを見つけて、この「酒」と「怪異」という二つの要素を含むモチーフを使えばありそうでなかった企画になるんじゃないか?となったのがきっかけです。
――カクテル作りが得意な“ぼっち”女子大生・志田波織と、秘密を抱えるキラキラギャル・伊吹ひなた、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
羽柴実里さん:各キャラの象徴的モチーフの持つイメージと遠いキャラクターな方がお話になると思ったので、ナオリにおけるお酒=陽のイメージ/ひなたにおける鬼=陰のイメージからそれぞれギャップのあるキャラにしました。
結果的に正反対なのに惹かれ合う感じにできたと思っています。
――続いて、作画を担うzinbeiさんにお尋ねします。原作を元に波織とひなたそれぞれのビジュアルを生み出す際、特に意識した点やこだわった点はありますか?
zinbeiさん:どちらも原作の羽柴さんからいただいたイメージを参考にしてラフを切りました。ナオリは控えめながらも地味すぎない、芯のある表情を描きやすい目つきを心がけました。ひなたについては少し苦戦した記憶があるのですが、一緒にいると元気になるような快活な雰囲気をベースに、長めの前髪で一匙のミステリアスさもあるデザインに落ち着きました。
――第1話をX(旧Twitter)に投稿後、4.9万を超える「いいね」が寄せられ話題となりました。今回の反響について、率直なご感想をお聞かせ下さい。
zinbeiさん:途轍もなく沢山の方々に作品を読んでいただき、何度見返しても新鮮に、心からうれしく思います。今回の1話の投稿をきっかけに、既刊や最新話まで読んで下さった方が大勢いらっしゃり何よりの励みになりましたし、「いいね」などでリアクションをくださった方々、リプライで感想を寄せてくださった方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。
SNSでは引き続き作品について積極的に発信していきたいと思いますので、ぜひこれからも注目していただきたいと思いました。
――お二人にお尋ねします。本作の中で、特に思い入れのあるシーンやセリフ、エピソードがありましたら理由と共に教えてください。
羽柴実里さん:13話のひなたが髪をかき上げながら狸にメンチ切るシーンです。というのも、作り方として、zinbeiさんから作画済みの第一稿をいただいてから、ふたりで話し合いながら作画をブラッシュアップしていく制作体制を取っているのですが、私もzinbeiさんもまだまだキャラクターの表情等々試行錯誤中だったので、締め切り間際の真夜中、もう時間がないので画面共有してzinbeiさんとひなたの表情を探ったのが記憶に残っていて。
zinbeiさんからしたらあんな迷惑なことなかったと思うんですが、おかげでいい表情になったと思いますし、誰かと一緒に創作ってものにここまで純粋に向き合える機会って人生でそうないだろうな、と後々思いました。翌日は眠すぎて倒れそうでしたが(笑)。辛かったけれど贅沢な時間でした。
zinbeiさん:第23話の、夜中の公園でナオリとひなたが踊るシーンです。この回はひなたの知られざる一面が判明するとともに、透明な障壁に動揺するナオリ、巳影やアジュとひなたの絆、「真夜中のコンビニ夜食」を体現する豪快すぎるカクテルが登場したりと盛りだくさんな回です。そんな中、ナオリとひなた二人が歩み寄り人生が交差していく様子を、静かな社交ダンスで表現している所がとてもロマンティックで大好きなのです。羽柴さんのその脚本と演出の妙に心が熱くなる、特に感動した回のひとつでした。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
羽柴実里さん:いつも応援誠にありがとうございます!ジャンルもキャラもギュルギュルにシェークされた本作ですが、これからも面白い漫画を目指して、zinbeiさんと共に誠心誠意取り組んで参ります。どうぞお楽しみに!
zinbeiさん:いつも応援してくださりありがとうございます。人と鬼、ナオリとひなた、お酒とお酒、色んなものが混ざってもっと美味しくなるカクテルのように、今までにない味わいのある漫画を、羽柴さんと力を合わせて描いて行けたらと思います。これからの『さけおに』もお楽しみに、ぜひご期待ください。
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