コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、松崎夏未さんが描く『ララバイ・フォー・ガール』をピックアップ。
2023年10月3日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、11万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、松崎夏未さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
社会人の“結生かな”は、ハンバーガーショップで一人、昔のことを思い出していた。
高校時代、かなは優等生だった。校則にも親の言うことにも従うのが、賢い生き方だと思っていた。しかし、その一方で、“早くこんなところから抜け出したい”という気持ちもあり、ギャルが夢中になるメイクに対しても興味がないと言えば噓になる。
そんな、心に影のかかったような日々に、光のような出会いが訪れた。同じ予備校に通うギャル“玉手ゆきな”との出会いだ。二人はたまたま同じドラッグストアに居合わせ、かなが一瞬だけメイクコーナーを眺めていたところをゆきなに見られていた。
予備校でかなを見つけたゆきなは、思わず駆け寄りお茶に誘った。価値観の違う二人だったが、高校生活にやりたいことを全力で楽しみたいと思っているゆきなに、かなは段々と感化される。ゆきなに化粧を教えてもらいながら、かなはメイクへの興味・憧れが大きくなっていった。そして、模試で志望校A判定を貰うほど成績優秀だったかなは、大学進学をやめてメイクの専門学校へ行きたいと思うようになる。
専門学校進学に対して、親はもちろん、ゆきなにも否定的な意見を向けられた。唯一の味方で、憧れのような存在だったゆきなの想定外過ぎる反応は、かなにとって大きな衝撃で、そのまま仲違いしてしまうのだった――。
現在は社会人であるかなは、店内にいる女子高生を見つめながら、そんな切ない青春を懐かしそうに思い出していた。すると――
「かなちゃん?」
あの頃と同じように、綺麗に着飾ったゆきなが目の前に立っていた。二人は大人になって、また出会えたのだ。かなは瞳を潤ませ、ゆきなは微笑みながら、昔のこと、そして今のことを語り合うのだった。
かなの昔に思いを巡らせる様子に、読者からは「すごく共感ができる」「いつまでも続かない楽しさと切なさ」などの声と共に、11万もの“いいね”が集まった。
――『ララバイ・フォー・ガール』を描こうと思ったきっかけや理由などをお教えください。
私は女子高校出身なのですが、自分が三年間暮らしてきた大切な世界を何かの形で残したいと思ったタイミングで、フィール・ヤングさんに読み切りを掲載していただきました。ギャルが大好きです。
――作品を描く上で、特に心がけたところ、大切にしたことなどをお教えください。
お化粧や自分を着飾ることに初めて肯定的に触れた子の、世界が加速して変わっていくような浮足立った気持ちが伝わるといいなと思います。この歳の頃に見えている狭い世界と、それを失って自分まで否定されたような気持になってしまう心のひりつきが好きです。
――このお話で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
つけ睫毛に触れるシーンと、体育後のゆきなのクラスのシーンです。
一昔前のバサバサつけまは本当に硬くてすだれのようで重くて邪魔でしたが、まばたきで風が起きそうな感じが好きでした。
体育の後の教室は、着替えがすこぶる遅い子も早弁をする子もメイクを直す子もいて、痺れを切らしたおじいちゃん先生がドアの外から「早くしろ~」と声をかけてくる日常を思い出して描きました。
かなの平手打ちは描いておきながらお前それはやめとけ…と思います。
――物語の最後、大人になった二人が再会できて素敵な結末だったなと思います。松崎さんには、今は会えない(自ら会いに行ける手段がない)けれど、いつか会えたら話したいことがある人はいますか?
高校時代にペアリングを買うほど仲の良かった子がいましたが、ある時ぱったりしゃべらなくなってしまってそのまま卒業してしまいました。成人式で見かけても話しかけられませんでした。
喧嘩別れした相手と何事もなかったかのように再会できることなんて現実ではほとんどないと思いますが、作中の二人が幸せだったら私も救われる気がします。
――今後の展望・目標をお教えください。
シスターフッドをテーマにした作品を描きたいです!本作を描いたデビュー当時よりも表現できる幅を広げてきたので、より読者の感情を抉る作品を作れるよう頑張ります。
――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。
五年も前の作品ですが、この機会にたくさんの新たな読者の方に出会えてとても嬉しく思います。ありがとうございます!
今は小説【八咫烏シリーズ】のコミカライズを執筆中ですが、自分でゼロから思いを込めて描いた作品も愛していただけて励みになりました。
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