柳俊太郎“律”、自分を支えていたのは馬場ふみか“らん”だったと13年越しで気づき、自分の愚かさに涙<けむたい姉とずるい妹>

2023/11/14 11:10 配信

ドラマ レビュー

「1人になりたくないから、律と一緒にいたの?」


待ち続けるらんの元にやって来たのは、ひかる。律から「代わりに行ってくれ」と連絡を受けて来た彼は「いい加減にしなよ。いくら脅してもムダ」とハッキリらんに告げ、律はもうらんを見てないのだと、諭した。そんな事は、とうに彼女もわかっている。だが、母親の愛情を受けられず(と、らんは思っている)、孤独を感じて生きてきた彼女は、同情だろうが何だろうが自分を見てくれていた律を手離す事ができないのだ。

もうひとりぼっちに戻りたくない、と言うらんに、ひかるは「ただ1人になりたくないから、律と一緒にいたの?」と、核心を突く問いかけをした。律が好きで一緒にいたのではないとすれば、13年もらんに付き合わされた律が可哀想、とのひかるの言葉に、らんは、誰でもいいわけじゃなくて律だから一緒にいいのだ、律じゃなきゃダメなのだ、と自分に言い聞かせるように、強い口調で反論した。

だが1人になり、「ただ孤独がイヤで律と一緒にいたのか?」というひかるの言葉を思い返し、それを律が聞いたらどう思うのか、と考え始めた。すると、律の反応がわからなかった。律は怒るのだろうか。らんは、律が怒るところを見た事がなかった。それどころか、彼が喜ぶ事、嫌がる事――彼について実は何も知らない事に気づいてしまった。

やっと気づいたらんの存在の大きさ


一方、律は、自分の小説が他社の編集者からも「量産型」「才能がない」「魅力がない」と酷評を受けて心が折れていた。そんな事を知らないじゅんは、彼の夢を応援しようと力になろうとするが、今の彼には負担でしかなかった。同じ方向を向けなくなっていた2人は、一緒にいてもお互いを遠く感じた。

じゅんは、少しでも律を感じたくて、出勤時の信号待ちの時に彼と手をつないだ。律は信号を2人で渡りながら、らんと同じように手をつないで渡った時の事を思い出す。そして、ダメな自分の小説の内容を興味深そうに聞いてくれたり、「いるだけで私を幸せにしてくれる。世界で一番すごい事」と存在を肯定してくれたらんとの思い出が甦り、実は自分がらんを支えていたのではなく、らんに支えられ救われてきたのだと、13年経ってやっと気づいた。手を繋いで、隣で共に歩くじゅんと、引っ張って自分を走らせていたらん。

「手に入らない物は美しい。ただそれだけ」


「手に入らない物は美しい。でも美しいだけ。ただそれだけ」。律にとって、じゅんは気持ちを残したまま別れてしまった後悔と郷愁で美化され、当時の美しい思い出をなぞっていただけなのかもしれない。13年間共に過ごしたらんの存在の大きさに今さら気づいた律は、じゅんの手を思わず離し、自分の愚かさに自責の念にかられながら「ごめん…」と涙を流した。感情をあまり見せない彼が流す涙は重かった。

らんへの想いに気づいた律と、律を愛していたのかどうかわからなくなったらん。次回予告では「離婚する事にした」と言うらんの姿が。この状況で、唯一変わらずに律を愛するじゅんは、律の“心変わり”をどう受け止めるのか気になる。

※柳俊太郎の柳は正しくは「木へんに夘」

◆文=鳥居美保