──今作で鈴木さんが演じるのは天才役者という役どころですが、鈴木さんが考える天才役者とは?
漠然と思うのは、やっぱり器用な人。でも実は、影の天才役者は支える側に多いと思っていて。僕の中での天才役者はそっちかもしれないですね。今までひっそりとストーリーの中に隠れていたのに、いきなりパッと出てきて支えるという職人的な感じ。影に隠れていてわからないかもしれないけど、ストーリー全体を繋いでくれる役。それは天才の役者さんしかできない仕事なのかなと。だからストーリーがわかりやすく1つの円のように作られているときは、きっとそういう役者さんがいるんだろうなと思っています。
──先ほど、作品ごとに「今回はここを強化しよう」と目標を立てるとおっしゃっていましたが、今作ではどんな目標を立てますか?
うーん、とにかく精神的にも肉体的にもとても疲れそうな作品だなと思っていて。だからまずは最後まで立っているというのが目標になるかな。実際ものすごくパワーを使う作品になると思うのですが、そのパワーがダイレクトに伝わってくれればお客さんにとっても刺激になると思うので、やり甲斐も感じられそうで楽しみです。
──鈴木さんは役者として16年目。先ほど始めた頃の苦悩のお話もありましたが、俳優としてのご自身の現在地はどのように捉えていますか?
現在地か、どうでしょうね。でも演劇を始めてからお芝居が好きになりましたし、そういうものに出会えたことが幸せなので、そう感じさせてくれた演劇に対して何かできることはないかを考えているのが今ですかね。恩返しのようなもの。その中で、2.5次元作品や、長期のシリーズものなど、未開拓なものに触れられたのはうれしいですね。今年の10月に終わったところなんですが、「最遊記歌劇伝」という作品がありまして。それは15年間続いた作品で、僕や(椎名)鯛造くんなどキャストもずっと変えずにやってきたんです。同じ役を15年間演じ続けるって、演劇においてとてもレアなケースだと思うんです。1つのモデルケースとして築けたのもうれしいですし、目標を持ってそこに辿り着けるというのはシリーズ作品において一番幸せなことだと思います。「最遊記歌劇伝」ではとても幸せな終わり方ができました。これからもそういう未開拓なものを探求していきたいと思うし、それを後世につないだり、枝分かれしていく分かれ目のようなものを作れていたらうれしいなと思います。
──ご自身のあとに道ができていくことに喜びを感じると。
そうですね。僕は僕の活動をしていただけではありますが、こうやって輪が広がっているのはうれしいです。今は「2.5次元作品に出たい」と言っている若い俳優も増えてきて、肯定してきた意味があったなと思います。同時に僕たちの世代は年齢が上がりつつあるので、今後2.5次元にどういう関わり方ができるのかというモデルケースを作っていく時期なのかもなとも思います。
──昨年WEBザテレビジョンでお話を聞かせていただいたときに、今後のご自身の目標を「継続」とおっしゃっていましたが、そこは変わらずですか?
継続したことによって今も火を絶やさずに演劇というものを作っていられて、それを観に来てくださるお客様がいるという状況なので、継続はこれからも一番の目標ではあると思います。ただ、今はコロナ禍真っ只中の状況からはまた変わりつつあって。以前の状況に戻られた方もいるでしょうし、新しい道に進んでいる方もいると思います。そういうときこそ、演劇は活力になれると思うので、一人でも多くの方に、何か生きる活力が湧くようなものを届けられたらなというのが今の目標ですね。少年社中という劇団ではその目標がよりわかりやすい形で届けられるのでは…とも思います。24年最初の演劇作品を周年記念公演という形でお送りできるのもうれしいです。劇場でお待ちしております。
■取材・文/小林千絵
撮影/友野雄
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