2度目のMVP受賞・大谷翔平選手、名実共に世界最高のプレーヤーがかなえた夢と偉大な野球人たちの“証言”に興味津々

2023/11/21 07:10 配信

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「Shohei Ohtani - Beyond the Dream」より(C) Rivertime Entertainment Inc. TM/(C) 2023 MLB

大谷翔平選手、2度目のアメリカン・リーグMVP」というビッグニュースに沸いた11月17日、それを祝うかのようなタイミングで大谷選手のインタビュードキュメント映画「Shohei Ohtani - Beyond the Dream」が配信された。同作は、大谷選手のサクセスストーリーを、本人や数々の野球人のインタビューや貴重な映像でつづったドキュメンタリー。今回、幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が本作を視聴し、独自の視点で見どころを紹介する。(以下、ネタバレを含みます)

大谷選手の偉業を振り返る


渡米以来6年間所属したロサンゼルス・エンゼルスからフリーエージェント(FA)となり、2025年の“二刀流再開”を目指し、怪我の程度を見ながら2024年シーズンは打者専念で行くことも明らかになっただけに、あらためてこれまでの大谷選手の人並み外れた野球人生を振り返る作品として視聴することも可能であろう。

6歳の頃には野球選手になることを志し、2010年にはあの有名な、いわゆる「目標達成シート」を書いている。そして2013年には北海道日本ハムファイターズに入団、“二刀流”を生かして活動を始めた。その功績が認められた上で、2017年に少年の頃から描いていた「メジャーリーグの選手になること」をかなえた。恵まれた体躯を持つ青年が、相手チームの放つとんでもない豪速球を鮮やかに打ち、喜びいっぱいに出塁し、かと思えばピッチャーマウンドに立ち、切れの良い速球を投げて相手チームの打者をノックアウトする。「速さ」「強さ」「的確さ」に目を見張らされるばかりだ。

一人の人間の中に世界最高レベルのバッターとピッチャーが同居しているのだから、これはやはりすごいことであり、世間が盛り上がるのも納得だ。体つき、身体能力、頭脳、どれもずば抜けているからこその快挙であろうが、その一方で私は勝手に、こうも思っている。

大谷選手は子どもの頃から野球が好きだった。とにかく野球が好きだった。野球そのものが好きだった。目の前に野球という実に魅力的で広大な宇宙が広がっていた。チームに所属するようになってから2年がたった小学5年生のときに球速110キロを出していたというから驚きだ。そして高校3年生で160キロを記録した。打つことも好きだし、投げることも好きだし、どちらでもチームに貢献できる。勝利のカギを握る一人になれる。そうした状態に一度でもなってしまったら、どちらかに比重を傾けようという考えすら起きないのではないか。

むしろ個人的にあらためてオヤッと思ったのは、彼が岩手県出身であり、プロとしての活動を北海道の球団で始めたということだ。私は北海道北部、1年間の3分の2が冬であるような場所で少年の頃を過ごした。岩手県に関しては初春の盛岡市にしか訪れたことがないけれど、道路の端には雪がたっぷりと残り、軒先にはツララがぶら下がっていた。それに近いであろう気候の中で、いくら大谷選手とはいえ、常に毎日野球のために体を動かせる状態にあったとは思えない。もっとも極寒の時でもイメトレ等には努めていたのだろうが、とにかくそれを考えると今日の躍進、センセーションは奇跡的なことが何重にも積まれた結果であるようにも思われる。

世界的野球人が語る大谷翔平選手


「Shohei Ohtani - Beyond the Dream」には大谷選手の談話がたっぷり含まれているほか、松井秀喜氏、ダルビッシュ有投手、栗山英樹氏、そしてペドロ・マルティネス氏らのインタビューも登場。「大リーグ行き日本人」の先輩格に当たる松井氏はまるで弟について語っているようでもあり、大谷選手に先駆けて日本ハムファイターズからアメリカ球団へ、という道を歩んだダルビッシュ投手(現在はサンディエゴ・パドレスに所属)は、「ファイターズの背番号11」についての実に興味深い話を聞かせる。

大谷選手の二刀流を最初に認めたプロ野球人であろうファイターズ前監督・栗山氏の語り口は熱血かつ誇らしく、大谷選手と勝負したこともある名手ペドロ氏(現在は引退し、ボストン・レッドソックスの特別GM補佐)の口調には、アメリカで活躍するマイノリティーとしての共感もこもる。

世界を魅了し、これからさらに多くの人々を虜(とりこ)にしていくこと間違いないであろう男の、現時点でのエッセンスが注ぎ込まれた映画「Shohei Ohtani - Beyond the Dream」は、ディズニープラスで独占配信中。夢の向こうにはいったい何があるのか、じっくりと楽しみたい。

◆文=原田和典

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