故郷を追われた惑星難民Xを受け入れることになった近未来の日本で、人々がXの存在について疑心暗鬼になっていく様を描く映画「隣人X -疑惑の彼女-」が12月1日より全国で公開される。心から信じられる相手を見つけるのが難しい時代に、偏見や恐怖を乗り越え、隣にいる人の大切さを伝えるミステリーロマンス。人間の姿そっくりにコピーして日常に紛れ込んだXとして疑われる柏木良子を上野樹里、週刊誌の記者でスクープのため良子に近づく笹憲太郎を林遣都が演じる。
――上野さんは何度も熊澤尚人監督と話し合い、脚本のアイデアを出したと聞いたのですが。
上野:初期段階の脚本をいただいてすぐに監督に電話をして、打ち合わせをさせてもらいました。こういったことをやらない俳優さんもいらっしゃいますが、私は気づいたらディスカッションをするようになってきました。
――具体的にはどのようなことを話されたのですか?
上野:脚本を読んで、描かれていないところはどうなっているのかなど、さまざまことを想定しながら話し合ったりしました。やっぱり役を演じるときに一本筋が通っていないと演じられないんですよ。このシーンにはどういう意味があるのかな?とか思っちゃうので。なら、みんなで呼吸を合わせてから作品に臨む方がいいなと思っています。現場だとそんなことを言っていられないくらい、みなさん時間に追われてしまいますから…。一番俯瞰で見られるのがこの脚本の段階で、ここが作品づくりで一番大事なところだと思っています。ここができたら、後は脚本に合せて準備をしていく感じです。
――監督の反応はいかがでしたか?
上野:監督をすごく信頼できるなと思ったのは、私の話を全部メモしてたんですよ、びっちりと。そして、次に会ったときにはそれを受けて脚本が変わっていて、やりがいを感じました。あと、私の一方的な意見を聞くだけでなく、監督の意見も言ってくれて…。説明を受けたらなるほど!と思うこともたくさんありました。理解しながら作品に触れていける、これが私のエンジンをふかすための大事な作業だなと改めて感じました。
――林さんはどの段階から打ち合わせに入られたのですか?
林:僕は本読みからです。最初の本読みの日は忘れられない一日になりました。ただ、今、樹里さんのお話を聞いて、あの前にもそんなディスカッションがあったのか!と驚きましたが(笑)。
――最初の本読みの日はどのような感じだったのですか?
林:お昼ぐらいから集まって、全シーン読み合わせをして、夜は監督と樹里さんと食事に行く予定だったんです。でも夜になっても話し合いが全然終わらなくて、最終的には食事は中止になりました(笑)。行ったことは、先ほど樹里さんがおっしゃっていたような、ひとつずつ疑問点をなくしていくこと。脚本を読んだときは、原作の大事な部分を膨らませている、監督のオリジナリティが色濃く反映されているものだと感じました。だからこそ、演じる側と書いてる側のズレを埋める作業が必要となってきて。それをひとつひとつ確認できたのはありがたかったです。
――貴重な体験でしたか?
林:本当に素晴らしい時間でした。どうしても撮影期間が短く、準備期間もなく、ほかの役者さんとコミュニケーションを取る時間が限られている作品が多い中、久々にここまで妥協せずに、時間を忘れて話し合いができたとうれしく思いました。これからみんなで映画づくりをしていく中で、今この時間が必要だということを共有できていた喜びもあったと思います。そして、改めて僕はこういう時間やこういう場所が好きだと感じました。
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