「君が最後の初恋」は、2021年に台湾で上映された映画のなかで興行収入第1位という大ヒットを記録。台湾のアカデミー賞と呼ばれる第58回金馬奨では、最優秀主演男優賞など4部門でノミネートされた。惜しくも受賞は逃したものの、ロイ・チウは2021台北電影奨で主演男優賞を受賞している。
ストーリーに大きな意外性や目新しさはない。不遇な境遇のなかでも誠実に懸命に生きる女性と本当は心の優しいアウトローが心を通わせる展開も、小さなお店を持ちたいという彼女の夢も、チンピラから足を洗うと決意した彼と組織のいざこざも、その後の展開もどこか既視感がある。
とはいえ、王道の展開は、さまざまな物語で繰り返し扱われるほど、多くの人が心を惹かれ、好んできた設定・展開であるということでもある。本作も2人の行く末についてある程度予想がつきつつも、だからこそ2人の幸せを願いつつ物語に引き込まれ、後半に怒涛のように降りかかる“泣き展開”に、素直に涙を誘われてしまう。
奇をてらわないからこそ、世代や年代を超えて訴える不変の“泣かせ力”があるのだろう。思いきり泣くつもりで見る映画であり、その期待に応えて存分に泣かせてくれる作品だ。
ただ、本作にはちょっとした「その後」がある。2021台北電影奨の受賞スピーチで、ロイ・チウが「僕のヒロイン、ティファニー・シューに感謝します」と述べて話題をさらったのだ。ロイ・チウとティファニー・シューは交際の噂を否定したものの、後に結婚に至っている。切ない恋物語に、思わぬハッピーエンドが付いた形だ。このことを知ってから改めて作品を見ると、2人がお互いを見つめるまなざしや愛の日々が、よりリアルに、より美しく感じられるかもしれない。
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