コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はヤチナツさんの『20時過ぎの報告会』(KADOKAWA)をピックアップ。
仕事や結婚にまつわる悩みや本音を女子会で共有するアラサー女子たちのリアルな姿を描き、そのエピソードの数々が「共感できる」とSNS上でもたびたび話題に。9月14日に作者がX(旧Twitter)にて『成長したりさこの失恋』(コミック第3巻収録)を公開したところ4.8万以上の「いいね」が寄せられ、反響が相次いだ。この記事では作者であるヤチナツさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
恋に奔放なこはると穏やかで堅実なりさこ、そしてサブカル女子・きみちゃんの3人は、仕事終わりの20時過ぎに夜な夜な報告会で言いたい放題しているアラサー女子たち。しかし、こはるが退職しフリーのデザイナーとなったのを機にきみちゃんも仕事に追われる日々となり、3人はいつの間にか月1で会う程度となっていた。
そんな中、りさこには同棲して1年になる恋人・フジくんがいるが、セックスをしなくなって約半年が経っていた。さらにここ3ヶ月はフジくんの態度がよそよそしくなっているのを感じ、彼の性格が“結婚に向かない人”とわかっていながらも、向き合いたくなかったという理由からそのままにしていたりさこ。しかし、あることをきっかけにフジくんから突然「好きな人がいます」と告げられたりさこは、思わず家を出てしまう。
こはるの家を訪ねたりさこは、別れ話について報告しながらフジくんとのこれまでを振り返っていた。そして、「関係って積み重ねじゃないんだね」「好きな人の好きな人でいつづけたかったのに」と涙する。そして同棲する家には戻らず早々に引っ越すことを決意すると「この機会に都内のいいホテル泊まらない!?」と提案し、きみちゃんも含めた3人でホテル泊の約束をする。つらいときにも楽しみを見つけられて、昔みたいにいつまでも泣かない自分の“強くなった姿”に、「いいじゃん私」と思うりさこなのだった。
友人宅を転々としたあとで荷造りのため自宅に戻ったりさこは、リビングでフジくんと鉢合わせる。避けようとするりさこに、ちゃんと話がしたいからご飯に行こうと言うフジくん。仕方なく話を聞こうと店に入ったりさこだったが、そこでフジくんの口から出た言葉は意外なもので…。
アラサー女子たちの恋愛や結婚に対する悩み、恋人や友人に抱く感情、そして人生の岐路に立ったときの選択の数々をリアルに描き、読者から大きな共感を得ている本作。SNS上では「めちゃくちゃリアル」「りさこのセリフが刺さりすぎる」「共感するところが多すぎる」「心が救われた」「読むと不思議と元気が出る」「大人になってもこんな風に気兼ねなく会ったり包み隠さず相談できる友達がいるってほんと貴重だと思う」「こういう友達がいると永遠に強くいられるよな」など多くのコメントが寄せられ話題となっている。
――『20時過ぎの報告会』が生まれたきっかけや理由があれば教えて下さい。
自分が社会人2年目くらいで、彼氏がほしくてむやみに動き回っている時に溜まったストレスの発散と、発見を共有したかったためです。当初はエッセイマンガにすると感じが悪い内容ばかりだったので、フィクションという体裁を取りました。
――デザイナーのこはる、古風でまじめなりさこ、サブカル女子・きみちゃん、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
前の質問で答えたように、当初は日記のようにスピード重視で描こうと思っていたので、どうせ頻繁に描くなら私が手癖で描けるような美人にしたいなと思ってこはるちゃんを作成しました。
彼女のフォルムが丸かったので、次のキャラは縦長の線を意識したデザインでりさこちゃん、その次は三角形をモチーフにしてきみちゃんが生まれました。丸と四角と三角です。性格は見た目に合わせたり、キャラたちを会話させていく中で固まって行きました。
――そんなアラサー女子3人のリアルな本音や大胆なぶっちゃけトークが読者から反響を集めていますが、作品のストーリーやテーマはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
自分が生活する中で気になったことと、それを友達と会話して気付いたことがベースになっています。単行本用に長めの話を描くときは友達に過去の恋などを詳しくインタビューさせてもらったりしてます。
――第3巻に収録の「成長したりさこの失恋」をX(旧Twitter)に投稿後、4.8万を超える「いいね」が集まっています。今回の反響について、ヤチナツさんの率直なご感想をお聞かせ下さい。
友達から「彼氏との別れ際実際にあんな感じだった」とか「フジくんが元彼に似てて気持ち悪かったです(笑)」などの声をもらったのは面白かったです。狭い世界を描くほど共感されるので、今後も自信もって狭く描こうと思いました。
――本作では、りさこをはじめ登場人物の感情があふれる表情描写がとても繊細で印象的でした。作画の際にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。
「生理的に無理な顔」のデザインです。いつも作画の気分を上げるために、基本的には登場人物は女子も男子もみんな好きなデザインにしてます。ただ今回は「生理的に無理」の説得力がないといけなかったし、でも私が描き続けるために本当に無理な顔は採用できないので、その塩梅に少し苦労しました。
――本作の中でヤチナツさんが特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
最後の女子会のきみちゃんのスタンスが重要だと思ってます。どうしても「彼氏の勝手で別れる羽目になったアラサー女子の話」になってしまうんですが、彼氏側の都合や背景もチラッとは考えられる余地を入れました。私たちの会話において最も重要なのはまず受け取って共感することなのでそれは大前提ですが、一方の都合だけでプンスカ怒ってるお話にはならないようにしました。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
上の世代の方には、過去の自分が救われるような、同世代の方には、好きな友達の話を聞くような、下の世代の方には、まあ年取ってもなんとかなるかあと思えるような、というのは狙って描いたりはしてないですが、結果的にそう思ってもらえるようなマンガになってたら嬉しいです。
数あるマンガの中から選んでいただけるなんてすごいことだな〜と日々感じております。いつも読んでくださってありがとうございます。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)