――そこから一緒に作品を作っていったわけですが、相手のお芝居や現場での居方の印象はどのようなものでしたか?
岐洲 もう本当に漫画から飛び出てきたかのような、土岐でした。ずっと。
八村 えー!
岐洲 うん、明るかった。まぁ結構ハードなスケジュールだったんで、朝はグダッとしてたけどね(笑)。
八村 うん、眠かった。
岐洲 でも本当に、漫画から飛び出してきたそのまんまだったな。
八村 土岐だった?
岐洲 うん! それにプラスして、彼自身が持っている優しさもあって。それは俺もスタッフさんもみんなが感じていたと思う。それがめっちゃいいなと思いました。シンプルにうらやましいというか。心の底から素敵だなと思いました。
八村 (満面の笑みで)そんな〜! うれしいですね。僕がこうやって初主演なのに自由に、肩の荷を下ろせたのは匠くんのおかげで。匠くんがどしっといてくれていたんです。でも全然横柄でもなんでもなくて、何なんだろう、この優しさは。なんか…温かかったです。ずっといい心地の良さを感じていました。
岐洲 へぇ。
八村 僕は映像作品での演技の経験があまり多いほうではなくて、いろいろ手探りで、「何事も勉強」という姿勢でやっていたんですけど、どうしてもモニターが気になっちゃって。映像で撮った自分の芝居がどうだったか気になって、自分の主観で「今の芝居こうだったな」とかいろいろ考えちゃうタイプだったんです。でも匠くんは「いいんだよ、気にしなくて。監督がオッケーって言ったからオッケーなんだよ」って言ってくれて。監督も「ダメだったら言うから、そこは信頼していこう」って言ってくれた。匠くんも監督も、そうやって信頼し合って作り上げていこうとしてくれたので、そこは俳優としてひとつ成長できたところかなと思います。
――岐洲さんは“佐原先生”、八村さんは“土岐くん”を演じました。それぞれご自身が演じる役のキャラクターの印象を聞かせてください。
岐洲 実際に演じてみて思ったのは…佐原先生は先生として土岐を支えたいという気持ちでいたんですけど、土岐は土岐で佐原先生を支えたいって思ってくれて。途中からは佐原先生が支えてもらう側にもなっていく。そこから心を開くシーンにつながっていって。自分の葛藤と、佐原先生のその感情の動きがリンクして、すごくリアルでした。だから自然と涙も出たし、セリフも、心からちゃんと出た言葉でした。
八村 土岐の素敵なところはオープンであることと、好きなことには正直であること。土岐は、何ていうか無人島から出てきたようなヤツで、土岐にとっては友達、学校、女の子…全部が新しい。そこに対して新鮮な気持ちを持つって、僕としては難しさもあったけど面白さもありました。逆に、土岐以上に知らないなと思ったのが孤独であるということ。土岐は今までずっと孤独で。喧嘩も彼にとってひとつの愛情表現というか。なんならヤンキーも、嫌だけど友達だからっていうくらいの感覚なのかなって。それくらい自分に構ってくれる人、自分に振り向いてくれる人がいなかった中で差し込んだ光が佐原先生、孤独の扉を開けてくれたのが佐原先生なんですよ。だから、土岐という人物は誰かの力になりたいっていう気持ちが大きいのかなと思って。そこには愛を持ってお芝居をしました。
――演じる上でやりやすかったこと、難しかったことは何ですか?
岐洲 倫太郎が、演じるときにすごくまっすぐで、何も作っていないんですよ。そのまんま。だからすごくやりやすかったですね、難しかったことは…虫がいっぱいいたこと(笑)。山の中での撮影だったから。うん、それかな。
八村 僕は土岐を演じること自体やりやすかったし、私生活でも土岐に背中を押されていましたね。土岐って楽しいヤツだなと思って。誰かがマイナスな雰囲気を出したらその場もマイナスになっちゃうじゃないですか。でも土岐はそういうことをまったく感じさせない。だから自分が例えば疲弊していたり、マイナスな感情があったりしても、土岐が抜けていないと明るくいれたし、いろいろなことに素直になっていましたね、難しかったのは、リアクション。土岐は何事にも敏感なので、ひとつ一つに「えっ!」「はっ?」ってリアクションを取るんですけど、そのリアクションが一辺倒になったら嫌だなと思って。全部が全力100パーセントだと飽きちゃうし、そもそも人ってそうじゃないし。真剣なシーンが映えるようにするのはどうすればいいかなとか、そこはいろいろ悩みました。
岐洲 あの…いいですか? 難しかったところ思いついたんですけど…。
八村 そうでしょ、虫じゃないでしょ!(笑)
岐洲 うん(笑)。感情とか、佐原先生が隠している部分をさらけ出すシーンは、演じていても難しいなって思いました。でも、土岐が明るくいてくれたから、素直に出せたというか。隠している気持ちでも、土岐になら出せるっていう、台本に書かれていた気持ちがそのまま生まれた感じがありました。
――お2人が演じるからこその“佐原先生”と“土岐くん”が見られそうですね。
――先ほど、八村さんからは今回「成長できたところ」があったとのお話もありました。改めて、本作の撮影を通じ俳優として自身が成長したと思うところについてお聞かせいただけますか?
岐洲 僕は自分に足りないなと思うところをたくさん見つけました。主演だし、年齢も上だし、しっかりしないといけないなという意識が強くて、その場で起きたことに敏感に反応できないということがよくあったんですよ、そこは反省点だったなと思って。身構えるんじゃなくて、もっと気持ちを楽にして、それこそ土岐みたいになんでも新鮮な反応ができるように。知っている感情にも敏感に反応するってすごく大事だなっていうことを改めて思って。この作品で初心を取り戻せたような気がします。
八村 お芝居ってすごく難しくて。表現なので、どうしても主観が強くなってきちゃうんですよね。「このシーンはこう見せたいな」とか「こういうところを大事にしたいな」みたいな思いが強いとなおさら。そしてそうすると、どうしても固くなって、変化がつけられなくなったりして。でも今回の現場では、そうじゃなくて、視聴者だったり監督だったり、周りのキャストさんやスタッフさんに委ねるみたいなことができるようになりました。もちろん思いは強くあっていいけど、そこで自分が「こうやりたいから」って思いすぎて他の人の話を聞けなかったら意味がないし。そういう柔軟性や客観性は、前から持ちたいなと思っていたけど、今回の現場でより一層そこに対して向き合えたし、学べたなと思います。
――最後に、ドラマを楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
岐洲 とにかく楽しめるもんね。
八村 うん、面白いっすよね!
岐洲 仮の編集の1話をちょっとだけ監督と見たんですが、3人で笑いながら見ました(笑)。初めはそういう軽いところが見やすいと思うんですよ。でもだんだんそこから引き込まれていって。先生の過去だったり、土岐の明るさだったり、2人の絆だったりがいいバランスで、見やすくなっていると思います。心を空にして、ラフに力を抜いて見てほしいです。
八村 うん、ラブコメディーなので。キュンとするところもあれば、自分でも思うんですけど「お前、なんだ、その顔は!」って言いたくなるようなクスッとできる場面もあって。見た後に「見てよかったな」「ちょっと(気持ちが)軽くなったなって思ってもらえたらうれしいです。あとは土岐みたいに「自分も好きなものに正直でいよう」と思ってくれたらすごくうれしいです。
岐洲 素直な気持ちで見てほしいよね。
八村 そうだね。
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