ハロー!プロジェクトのアイドルグループ、モーニング娘。‘23が11月29日、神奈川・横浜アリーナで秋ツアーの最終公演「モーニング娘。'23 コンサートツアー秋 『Neverending Shine Show ~聖域~』譜久村聖 卒業スペシャル」を開催。本公演でリーダーの譜久村聖がモーニング娘。及びハロー!プロジェクトを卒業した。卒業セレモニーではウェディングドレスのような純白の衣装で登場し、トリプルアンコールではそのドレス姿でアリーナを一周。ハロプロエッグから数えて15年間、応援してくれたファンに感謝と再会を誓うメッセージを送った。
2011年1月2日のハロー!プロジェクト中野サンプラザ公演で起こった伝説、「譜久村、降りといで」(つんく♂)から約13年。譜久村は9期メンバーとしてモーニング娘。人生を駆け抜けてきた。この日の会場となった横浜アリーナは、2014年11月に前リーダーの道重さゆみからバトンを受け取り、9代目リーダーに就任した思い出の場所でもある。当時は歴代最年少となる18歳のリーダー。頼れる先輩がいなくなり、若手だけになったモーニング娘。をそれから約8年、歴代最長となるリーダーになり、ここまで引っ張ってきた。そんな譜久村のモーニング娘。最後の姿を目に焼き付けようと、会場には1万2000人のファンが集結した。
始まった卒業公演は、最新シングルの「Wake-up Call~目覚めるとき~」からスタート。続いて「HEAVY GATE」「セクシーキャットの演説」「気まぐれプリンセス」など7曲を一気に歌い上げ、会場を盛り上げていく。
最初のMCで卒業公演を迎えた気持ちを尋ねられた譜久村は、「始まる前からアセアセしてました(笑)」とほっこりした笑顔を見せ、「どんなときもみんなと良い公演を作ってこれたな」と振り返る。今回の公演では全32曲を披露。秋ツアー自体が譜久村の希望を汲んだ選曲になっているというが、この日はさらに「Only You」「グルグルJUMP」など6曲が追加される構成に。卒業メッセージで「つんく♂さん楽曲のメッセージにたくさん救われて、いつだって隣に心強いメンバーがいて」と語ったように、歌いたい、歌詞が大好きという譜久村の強い思いから選ばれた楽曲だということだ。
そんな新旧の名曲が投下される途中では、牧野真莉愛、櫻井梨央、井上春華、弓桁朱琴による4人トークで譜久村との思い出も語られた。5月に加入したばかりの17期メンバー、弓桁は、「ちょっとした嬉しいことをすごいしてくれる。この前、リハーサル後の乾燥した私の腕を見て、すっとクリームを塗ってくれた」と話し、同じく17期の井上は譜久村と一緒に回った「全国同時お見送り会」のときのことを回想して、「譜久村さんが髪の毛、お揃いにしようと言ってくださって。編み込みのツインテールをしてくれた」と譜久村のお姉さんエピソードを披露。
また、牧野は加入した直後、「いっぱい迷惑かけて、いっぱい成長してね」というメッセージをもらったことを明かし、「そのことを学んだから、新メンバーが加入したときは私も同じ気持ちで新メンバーを支えていきたいと思った」と、自分自身の考えにも影響を与えてくれた譜久村の優しさを振り返る。最後に櫻井は、「楽屋でケータイを充電していた譜久村さんは、充電器だけを持って帰っちゃった。でも、そんなところもすっごいかわいいと思いました!」と譜久村のドジっ子エピソードを話し、会場の笑いを誘っていた。
衣装チェンジを行いながら進むコンサートは、終盤に近づくほど観客の声援もヒートアップ。それに応えるように、「Happy 大作戦」ではメンバー全員がメインステージを離れてアリーナ客席を一周。至近距離でパフォーマンスしてくれるメンバーに会場の熱は一層高まっていき、本編ラストナンバー「涙ッチ」ではファンも合唱を重ねていく。その光景はメンバーとファンが一体になって譜久村に思いを届けているようだった。
そして、アンコールの1曲目には最新シングルから「Neverending Shine(モーニング娘。’23 feat.譜久村聖)」が届けられる。同曲はつんく♂が譜久村の卒業に添えたソロ曲とも言えるもので、センターステージに立った譜久村がメインステージでメンバーたちと向き合いながら歌う姿が印象的だった。
アンコールはヒット曲の「One・Two・Three」、譜久村と生田衣梨奈のデビューシングル「まじですかスカ!」へと続き、ラインダンスが楽しい思い出の楽曲に譜久村、生田の顔に笑顔があふれる。その生田は譜久村の後を継ぎ、10代目リーダーになることが発表されている。鞘師里保、鈴木香音と4人いた9期メンバーは譜久村の卒業で生田1人に。やはり寂しさは大きいようで、MCでは加入当時の大変だったことや、「後輩たちをもっと大きいステージに」という道重との約束を振り返りながら、「それを聖が叶えているのを見て、えりはすごく尊敬する。これからもモーニング娘。を応援したいとか、新しくモーニング娘。知っていただけた方に、もっともっと大きいステージに行けるように頑張ります」と、涙で声を詰まらせながら決意のメッセージを送っていた。
ファンがかざすサイリウムで譜久村のメンバーカラー、ホットピンクに会場が染まる中、大きく響くダブルアンコールの声。純白のウェディングドレス風の卒業ドレスに着替えて登場した譜久村は、「まだ自分が卒業するって信じられないんですけど、皆さんに手紙を書いてきたので、気持ちをお伝えしたいと思います」とにっこりほほ笑み、サプライズだったオーディション合格発表の日のこと、それからの日々を振り返りながら、ファンとメンバー1人1人に感謝とモーニング娘。の未来を託す気持ちを伝えていく。笑顔で、明るく手紙を読み上げていた譜久村だが、最後の生田への言葉では声を震わせた。「同期のえりぽん。13年間、ずっと隣で支えてくれてありがとう。信念が強いところ、色んな人に愛されてるところを私は見てきました。えりぽんなら大丈夫。未来のモーニング娘。をよろしくね!」と、涙を浮かべながらバトンを受け渡した。
卒業セレモニーを終え、譜久村が歌った卒業曲は「I WISH」。「人生ってすばらしい」「夢中で笑ったり 泣いたり出来る」と歌うこの曲はハロプロエッグに加入してからの15年間を振り返るようで、センターステージに進んだ譜久村は晴れ晴れとした笑顔を浮かべる。そして「14人で歌う最後の曲です。盛り上がるよー!」と会場に呼び掛けて、メンバー全員で「みかん」を熱唱。譜久村が憧れたプラチナ期の幕開けとなったシングルで、未来への希望を歌った名曲。どちらもモーニング娘。、そしてハロプロに青春を捧げてきた譜久村らしい選曲のラストだった。
大歓声の“みずきコール”に一礼し、笑顔でステージを後にした譜久村だが、その後もスタンディングオベーションでコールが続くと、異例のトリプルアンコールで登場。ドレス姿でアリーナ客席を回ると最後はマイクのない生の声で、「ありがとうございます。私は一番の幸せ者です! また会える日まで頑張っていきます!」とファンに再会を誓い、2時間半を超える卒業コンサートに幕を閉じた。
取材・文:鈴木康道