<プリンセスと魔法のキス>“星に恋するホタル”や“トランペットが得意なワニ”など魅力的なキャラにワクワク

2023/12/01 06:10 配信

映画 アニメ レビュー

映画「プリンセスと魔法のキス」より(C) 2023 Disney

金曜ロードショー」(毎週金曜夜9:00-10:54※12月8日[金]は夜9:00-11:04、日本テレビ系)と「ウォルト・ディズニー・カンパニー」がタッグを組んだ「金曜ロードショーで見たいディズニー長編アニメーション映画」が、11月17日から4週連続で放送中。31日に放送されるのは、2010年に日本で劇場公開された、ジュブナイル・ラブストーリー「プリンセスと魔法のキス」だ。今回、幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が本作を視聴し、独自の視点で見どころを紹介する。(以下、ネタバレを含みます)

ディズニーの名作を手掛けたスタッフが監督


同作の原題は「The Princess and the Frog」だが、これを直訳すると「王女とカエル」になってしまい、せめてミュージカルの古典「王様と私」(The King and I)の存在や筋書きを知らない限り、何が何やらという感じになるのは否めない。あえて「プリンセス」という言葉を日本語に直さず、しかも「魔法のキス」というパワーワードを邦題に持ってきた日本側スタッフの感性は実にキャッチーだ。

監督は「リトル・マーメイド」や「アラジン」も手掛けるヒットメーカーのジョン・マスカーとロン・クレメンツが務めた。舞台となるのは、1920年代のニューオリンズ。アメリカ南部にある、ジャズ発祥の地にも数えられる港街だ。アメリカでありつつフランスでもありスペインでもありカリブでもありアフリカでもあり、という「ミクスチャー」(混合)そのものといえる場所であり、その混ざり具合がそのまま音と化したのがジャズである、ということもできる。

このニューオリンズの、日本でいえば東京・銀座に相当する地域「フレンチ・クオーター」に、主人公の少女ティアナは住んでいる。彼女の夢は、亡き父親の夢でもあったレストランを開くこと。この時代、褐色の肌を持つティアナが、「ソウル・フード・ダイナー」ではなく「レストラン」を、しかも一等地で開くことは、まさに壮大なそして命がけの目標であっただろうが、彼女は努力を惜しまない。自分にできることはしっかり、ストイックなまでにやる。

ティアナの幼なじみの一人に、裕福な家庭に育ったシャーロットがいる。彼女の夢は、プリンセスになること。父親は「マルドニア」という国のナヴィーン王子を、カーニバル(謝肉祭)の際に行われる仮装パーティに招く。当然シャーロットは王子の気持ちを自分に向けさせるべく躍起になるが、同じころ、王子と彼の召使いは言葉巧みな魔法使いと出会い、結果、「魔術」にかけられてしまった。王子はカエルに、中年の召使は王子そっくりの姿になった。やがてシャーロットは「王子」と親しくなるのだが、その正体は魔術にかかった「召使」である。

では、カエルになった「本物の王子」はどうなったのか。いかにしてティアナと出会っていくのか。この描写がなんともコミカルに描かれているから、物語が進むにつれて増してくる「ロマンティックな感じ」が、より強く生きてくる。

映画「プリンセスと魔法のキス」より(C) 2023 Disney

濃いキャラクターのオンパレード


王子もティアナもカエルになってしまうのだが、そこからの大冒険がまたまた面白い。トランペットが得意な巨大ワニ“ルイス”や、頭上高く光る星を異性のホタルだと勘違いして片思いするホタル“レイ”の人柄(ワニ柄、ホタル柄)の味わい深さ、魔術を解く能力を持つ197歳の盲目の尼僧ママ・オーディの謎めいた存在感など、サイドのキャラクターも味が濃い。

ティアナはカエルになっても料理が得意で、王子もカエルになってもダンスが得意。真面目なティアナが、いささか軽いノリの王子に持っていた違和感も徐々に解けて、いつしか互いにインスピレーションを受けるようになった。ここからは、ハッピーエンドまで一直線だ。といっても、この映画は「王子と一般女性が結ばれる」紋切り型のストーリーではない。いわば、「女性の夢に共鳴した王子が、一緒に新しい明日を切り開いていく」話である。

音楽は著名なシンガーソングライターであるランディ・ニューマンが担当。巨大ワニ“ルイス”のトランペット演奏を、名手テレンス・ブランチャード(この映画から派生した、2024年オープン予定のアトラクション「Tiana's Bayou Adventure」の音楽監督も務める)が吹き替えているのにも、「なんて豪華なんだ」と唸らされた。

また、劇中には「アームストロングやベシェ」といったセリフも登場する。若い世代の方は特に「いったい何のことなんだろう」と思ったら、ぜひ検索してほしい。誰もがティアナのようになれないとしても、夢、目標、希望、知識は性別がどうであろうと、何歳であろうと広げることができるはずからだ。

プリンセスと魔法のキス」はディズニープラスで配信中。また、ディズニー創立100周年を記念した最新アニメ―ション映画「ウィッシュ」は12月15日(金)に劇場公開。主人公の少女・アーシャ役の日本版声優を生田絵梨花、ヴィランであるマグニフィコ王の日本版声優を福山雅治が務める。

◆文=原田和典

映画「プリンセスと魔法のキス」キービジュアル(C) 2023 Disney