コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回ピックアップするのは、美容外科医兼形成外科医である中村まさるさんが描いた『形成外科でどこまで治る?患者自身で何ができる?全て教えるザッツ形成外科!』だ。
2023年11月3日に中村さんがX(旧Twitter)に同作を投稿したところ、6000件を超える「いいね」と共に多くの反響が寄せられた。そんな作者の中村さんにインタビューをおこない、創作のきっかけや今後の展望について語ってもらった。
――同作は作者の中村さんがマイナー外科である“形成外科”を広めるべく描いた作品だ。
中村さんのもとに頬に傷のある男性が尋ねてきた。彼は頬を指さしながら「キズアトをキレイにして欲しいでござる」と話してきたので、相談を受けた中村さんは冗談を言いつつも彼の依頼を引き受ける。
それから中村さんは形成外科のプロとして「傷跡の種類」「跡が残らないようにする対処法」などをイラストと共にわかりやすく解説していく。
専門的な解説を続けて“炎症の残る傷跡の消し方”について説明したところで、話を聞いていた男性は頬の傷跡を指さして“消せるのか?”といったことを尋ねる。すると、中村さんは「出来なくはない! 出来なくは…」と弱気な発言をした瞬間…。
“傷跡を治す”という身近なテーマについて、専門的な知見で分かりやすく描いた同作。読者からは「勉強になるうえに面白いって最高すぎる」「一家に一冊置いておくべき作品だ」など多数のコメントが寄せられていた。
――『形成外科で何をどこまで治せる?患者自身で何ができる?全て教えるザッツ形成外科!』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
形成外科は総合病院ですら、ない場合が結構ある科です。医師国家試験では、形成外科に関して設問すらされない程度に医療の中でも軽んじられている学問だと思います。
けれど、実はケガをした時の一般外傷処置(擦り傷、切り傷、火傷など)、それで生じた傷跡のケアなど、みんなの生活に深く根ざした外科治療のジェネラリストなんです。
目的の手術をしたは良いけど、閉じれなかったキズ「難治性潰瘍」を治癒させたり、それで生じた痛々しい醜状瘢痕を、社会復帰しやすくなるためのキレイな傷にする外科治療のファイナリストなんです。
そんな、見た目に関わる全てを治療するカタチの治療のプロフェッショナルである形成外科なんですが、いかんせんみんな職人気質でどうにも一般周知が進まない。なので、一般の人には「形成外科ってなんだ!?」を、医療関係者には「へ~!コレは形成外科に任せれば良いんだ!」を、広く知ってもらいたくて、この活動をはじめました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
漫画である以上、「読んでて楽しい!」を一番大事にしてます。実は結構専門的で難しい内容も盛り込んでるんですが、面白ければ人は読んでくれるはず。そういう思いで、専門的なんだけど一般人がパッと読んでもわかるようなバランスに気をつけています。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。
形成外科と美容外科が合体して「カタチの外科」が生まれるシーンです。コレは持論なのですが、今の形成外科は不完全な状態なのです。それは、管轄から美容外科を半ばはじき出してしまっているからです。
現在日本における美容外科は研修医を終えたらすぐ始められてしまうものになっており、ピンからキリまである混沌とした状況です。本当であれば形成外科がその手綱を握るべきなのですが、それが出来なかった経緯がある…という内容をザッツ美容外科として漫画にしました。
今後の美容外科の方向性を握るのも、形成外科の方向性を握るのも我々若い世代の役目です。現在までに融和しそこねてしまった形成外科と美容外科なんですが、それが合体してできた「カタチの外科」こそが本当の形成外科のあるべき姿だと思っています。
――形成外科にまつわることを漫画にしようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?
すべらない話ってあるじゃないですか。実は自身の体験でかなりエグいケガをしたことが2回あるんです。
いずれも病院に行くことなく自力で治したんですけど、今覚えばなんとも残念な治療をしていて。笑い話として昇華しつつ、そんな馬鹿なことを他の人にはしてもらいたくないなと思って「このエピソードは漫画にするしかないぞ!」と思い「ザッツ創傷治癒編」が生まれました。それまでは1Pの小ネタイラストだったのが、本格的に漫画の体裁を取っていった発端です。
もう一個の痛い話は、またいずれ漫画化予定です。多分、縫合の基本編になるかな。
――同作を投稿した後に寄せられた反響で嬉しかった・印象に残ったコメントがあれば、ぜひ教えてください。
みなさんが見て、拡散してくださることで「コレは治せるものなのか!」を広められることが非常に喜ばしいです。
例えば漏斗胸という胸が凹んだ状態の先天異常があります。ぼく自身も漏斗胸なんですが、コレが治せるものだと形成外科医になるまで知りませんでした。しかも軟骨が固くなってしまうので、治すのであれば若いうちに手術をしたほうが良い。
「自分みたいになる人が減ればいいな!」とザッツ漏斗胸編を載せた際に「治せる疾患だと教えてくれてありがとうございます。形成外科にかかろうと思います。」とコメントをいただき、まさに「目的が果たせたな」と、とても嬉しく感じました。
――今後の展望や目標をお教えください。
『SLAM DUNK』でバスケ人口が増えたように、『ザッツ形成外科』を読んで形成外科を志望する人が現れて形成外科医の人口が増えたらな、と!併行して形成外科疾患の周知が広められたらと思います。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
『雑誌形成外科2024年1月号』より連載版『ザッツ形成外科』が始まります。こちらは“形成外科あるある”をお送りします。濃厚な形成外科ワールドを堪能してください!
またXの連載のページ数が貯まったら、再編してそちらも書籍化予定です。医者よりも一般人に売れる、世界一読みやすい医学書を目指してます。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)