――これまでの活動の中で、とくに印象深い作品を教えてください。
初舞台となったNINAGAWA×SHAKESPEARE LEGEND「ロミオとジュリエット」(2014年)は印象に残っています。右も左もわからない状態でしたが、蜷川幸雄さんに“自分が自分であるためのお芝居”という考え方を教えていただいたんです。自分がやるからこそどうするんだ、という役者としての基盤というか、大事なことを学ばせていただいたなと。
そして、舞台出演2作目となった『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』(2016年)では、初めて役付きで、蓮巳敬人という役をやらせてもらいました。そのときに、蜷川さんの言葉を思い出して、僕がやれることはなんだろうと考えながら役に向き合うことができたんです。“あんステ”は2年間やらせてもらいましたし、今でも自分の基盤になっている作品です。
――それこそ「仮面ライダー」作品は、小松さんの俳優としての基盤になっている“自分だからこそできることは何か”というものが色濃く出る作品なのかなと。
そうですね。俳優自身の特性を活かしながら、どんどん展開が変わっていくというのは「仮面ライダー」ならではですよね。僕が演じた門田ヒロミの出身地が、僕と同じ宮城県石巻市という設定になったこともそうですし。それは、すべての関わったスタッフさんたちからのプレゼントだと感じていますし、悔いなく役を生き切ることができたので、本当に感謝しています。
――では、ターニングポイントだと感じた出来事はありましたか?
舞台「アラタ〜ALATA〜」(2017年)です。もともとは、早乙女友貴さんが主演をされていた作品なんですけど、観劇してとても感動したんです。自分もこんな殺陣をできるようになりたいと思って、演出担当の岡村俊一さんに「僕も出演したいです!」と直談判しにいって。そうしたら、公演期間中にも関わらず、チャンスをいただけることになったんですけど、10日間、20時間で1000手の殺陣をマスターすることが条件でした。
――短い期間で1000手の殺陣というのは、だいぶ厳しい条件だったのでは?
だからこそ頑張りましたし、できなかった、というのは許されないと思っていました。今振り返っても、僕の中でも大きな挑戦でしたし、条件を達成して、早乙女さんの後を継いで主演をやらせていただいたときに、自分にはもう怖いものはない、と感じました。
――小松さんは剣道を10年やられていて、全国大会にも出場経験があるそうですね。学生時代のその経験が今のメンタリティに繋がっているのかなと。
それはあると思います。剣道は礼儀作法から学びますし、剣の道と書くように、ひとつの道を極めるために鍛錬していきます。その経験のおかげで、忍耐力や謙虚さというものは自分の中に染みついているので、たぶん何事も極めていきたいタイプなんだと思います。
――12月2日からは、歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineにもご出演されます。“ホスミュ”は今作で幕を閉じることとなりますが、初演から須王環を演じてきた小松さんとしては、どのような思いを持っていますか?
ここを目指してやってきたというところもありますし、“ホスミュ”としての集大成にもなるので、大切に演じていきたいなと思っています。2.5次元作品の中でも、しっかりとフィナーレと銘打ってやらせていただける作品は少ないと思うので、すごく幸せに感じています。もちろん、それは応援してくださるファンのみなさまとスタッフの方々のおかげなので、期待に応えられるように精一杯やらせていただきます。
――今後、俳優として挑戦してみたいことや目指していることはありますか?
もっともっとお芝居を極めたいです。これまでいろいろな経験をさせてもらってきたからこそ、経験値や技術、表現力という引き出しは、僕の中にあると思うんですけど、それをもっと大きくしていきたいし、ひとつひとつの精度を上げていきたい。そのために、今はさまざまなレッスンを受けさせてもらって、自分と向き合う時間を作っています。
――お話をしていると、何事も前向きに捉えている印象ですが、そのような考え方をされるのはもともとの性格でしょうか?
いや、昔はそれこそ人前で喋るのなんて嫌だったし、学芸会でも一番セリフが少ない役を選ぶくらいシャイでした。でも、東日本大震災を経験してから、少しでも後悔しない生き方をしたいと考え方が変わりました。だから、芸能界にも飛び込めたし、前向きさもそこから来ているのかなと。
僕が俳優という仕事にこだわる理由は、小さい頃に藤岡さんに会った時もそうですし、たくさんの芸能人の方が被災地に来てくれたことが、すごくうれしかったからなんです。会えたことで元気が出て、明日も頑張ろうと思える。人に笑顔や勇気を与えられる、誰かのそういう存在に僕はずっとなりたかったんですよね。だから、それがずっと根っこにあります。
――プライベートでのリフレッシュ方法についても教えてください。
地元の親友に会うことですね。その親友のお父さんが僕の剣道の先生で、僕も実の父親のように接している人なんです。あとは母親、おばあちゃんに会うのもリフレッシュになります。
もちろん、ファンの方々と接することも力になっています。お手紙をいただくだけでもとてもうれしいのですが、イベントなどで直接お話できるのはやっぱり特別ですね。僕の次の作品を楽しみに頑張っていますというお話を聞くと、自分の活動はちゃんと届いてるんだなと実感できます。
◆撮影=八木英里奈/取材・文=榎本麻紀恵/ヘア&メーク=田中宏昌/スタイリスト=齋藤良介
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