――「プレイ・プリ」の主演のキム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんの起用理由を教えてください。
イ・ミナ まず、誰もが予測可能な典型的なキャスティングは避けたかったんです。実は原作のキャラクターとシンクロ率100%の俳優が居たんですが、その方ではなく、キム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんにお願いしました。すごく悩んだんですが、手堅いキャスティングよりも、俳優の今まで見せた事の無い姿で新鮮さをアピールする方を選択しました。
キム・ヒャンギさんは、これまで多くの作品で少女のキャラクターを演じてきましたが、現在23歳で等身大の女性の役はまだほとんど無かったので、新たな姿を見せてくれる確信がありました。シン・ヒョンスンさんは、アイドルが持つ華やかなイメージと同時に、その裏にある平凡さや少年らしさがあって、この両面を自然に表現できる不思議な魅力がありました。それに加えて好感度も兼ね備えていて、役にぴったりだと感じたんです。
――シン・ヒョンスンさんに、RAIN(ピ)さんの若い頃の面影を感じました。
イ・ミナ そうですね。あと、チョン・ヘインさんに通じる部分もあると思いました。ヒョンスンさんは、男性美と少年美の間の魅力を持った俳優さんです。
――ギャップのあるキャスティング、という点では、ハンジュの父親役のヤン・ドングンさん。ヒップホップアーティストとしても有名な彼が“音楽に理解が無く、娘の活動に反対している父親”という設定なのが、面白かったです。
イ・ミナ ハンジュの父親は、娘が音楽をする事に対して表向きは反対しているけど、最終的には力になろうとする人物です。他の俳優には無い独特の演技の魅力があり、ミュージシャンの顔も持つヤン・ドングンさんが演じる事で、父がハンジュを応援する側に回ったとき、より深い感動を与えられるのではと確信して、キャスティングしました。意外性を感じていただけたなら嬉しいです。
――先日、キム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんにインタビューした際、キム・ジョンチャン監督がとてもエネルギッシュにリードしてくださって、とても楽しい撮影現場だった、と話してくれました。
イ・ミナ キム監督は、俳優とスタッフのコミュニケーションをとても重視されている方なんです。例えば、俳優が役に合わせて準備をしてきても、現場の雰囲気によっては力を出し切れない事があるんですが、監督は俳優がリラックスして力を発揮できるような空気を作る事を一番に心がけていました。リハーサルの時に自ら演じてみせたり、実はエキストラとしてこのドラマに出演もしているんですよ。
――独特のワードセンスで「監督語」とも言える新しい言葉を次々に発しておられたとか…(笑)。
イ・ミナ そうなんです(笑)。気分が良い時や悪い時に「ヤルー!」って掛け声のように言ってたりとか(笑)。日本語の「やる」とは関係なくて、監督オリジナルの言葉で特に意味は無いようです。他にも、カメラとモニターの接続不良が起きた時に画面にノイズが入っていろんな色が混ざって見える様子を「ポックンパ(韓国語で「チャーハン」の事)」と言ってました。これも業界用語ではなく「監督語」です(笑)。監督が「ポックンパ!」と言うと、スタッフが飛んできて、コードを繋ぎ直して解決してました。そんな感じで、監督のおかげでスタッフもキャストもみんな笑ったりリラックスして、雰囲気の良い現場でした。
現場の雰囲気やチームワークの良し悪しは不思議な事に作品に表れる。ヒット作や良作と呼ばれる作品は、ほとんどが俳優やスタッフから「楽しい現場だった」「チームワークが良かった」という声が聞かれている。「プレイ・プリ」でも、キム・ヒャンギは「現場で楽しんで演じたいと思うようになった」と言い、シン・ヒョンスンも「明るいエネルギーをたくさん貰えて、前向きな気持ちで撮影に臨む事ができた」と語っており、良い現場の中で持てる力を充分発揮でき、視聴者は彼らの演技や作品の世界観に魅きつけられたのだ。
「プレイ・プリ」は全8話構成だが、「もっと長く観たい」と惜しむ声も聞かれる。作品中に流れる数々の名曲を楽しみながら、ハンジュとドグクの恋と彼らが夢を追う姿を応援したい。
◆取材・文/鳥居美保
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