【コラム】台湾文化・民間伝承を織り交ぜた元祖“台湾ホラー”「紅い服の少女シリーズ」、ホラブームの先駆けとなった理由を考察

2023/12/15 19:00 配信

映画 コラム

“第一章 神隠し”より ※提供画像

近年、徐々に人気と知名度を高めている台湾作品。今年秋には台湾映像フェス「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」も開催されるなどファンを増やしている。そこでザテレビジョン編集部では、観ておくべき台湾映画の名作を大特集。今回は、「呪詛」(2022年)や「哭悲/THE SADNESS」(2021)など、台湾映画の中でも特に話題である“台湾ホラー”の火付け役ともなった「紅い服の少女シリーズ」を紹介。なぜ、台湾ホラーは多くの人に親しまれるに至ったのか、原点からその理由を考察する。

街で相次ぐ失踪事件。差出人不明のビデオカメラに映されていたものは

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本作の「第一章 神隠し」は2015年に公開され、台湾ホラーとして初めて興行的にヒットを収めた作品といわれている。そして、2017年に公開された続編「第二章 真実」は台湾における同年の興行収入としてトップというメガヒットを記録。まさに、台湾ホラーの先駆けでありブームの火付け役といえるだろう。日本では、第一章の公開から7年後の2022年に満を持して2作同時公開された。

主人公のシェン・イージュン(アン・シュー)は、祖母と2人暮らしの青年ホー・ジーウェイ(ホアン・ハー)と交際中。2人の将来を考えるジーウェイと結婚に踏み切れないイージュンとで、交際は順調とは言えない。そんなある日、ジーウェイの祖母の友人が謎の失踪をとげる。数日後、祖母の友人が無事帰ってきたかと思えば、今度は祖母が失踪してしまった。そして、祖母を心配するジーウェイの元に、差出人不明のデジタルカメラが送られてくる。その中には、ハイキングを楽しむ祖母の友人たちと、その後をつけるように“紅い服を着た少女”の姿があった。 

祖母の行方を追ううちに、今度はジーウェイの行方がわからなくなってしまった。入れ替わるように戻ってきた祖母は取り乱した様子で、イージュンを見るや否や「ジーウェイの名前を呼んでしまった」と喚くのだった……。

「紅い服の少女」元ネタである1本の“ホームビデオ”に台湾全土が震撼

“第二章 真実”より ※提供画像


この作品は、1998年のとある怪奇事件が題材とされている。台湾の人気心霊番組「神出鬼没」に投稿された1本のホームビデオ、その内容はある家族がハイキングをしている映像だった。家族が並んで山道を進むすぐ後ろを、目が落ちくぼみ、顔が青ざめた紅い服の少女が映り込んでいたのだ。だが、撮影者を含め家族全員がその少女に見覚えはないという。さらに驚くべきことは、ハイキングの直後に家族のひとりが突然死をしたことだった。台湾全土を震撼させ、話題を呼んだこの怪奇事件を題材とし制作された本作。第一章に登場するカメラ映像は、前述したホームビデオの映像が丁寧に再現されている。

物語のベースには、台湾人が共通して持つこの「紅い服の少女」への恐怖があり、そこに後述する古くから伝わる山の妖怪・魔神仔(モーシンナア)の民間伝承が上手く織り交ぜられている。こういった、実話や現実から着想を得るというスタイルが、後の「呪詛」や「哭悲/THE SADNESS」に大きく影響を与えていることは言うまでもない。また、カメラ映像をはじめ物語前半部分は日本ホラーのような、ハッキリと姿は見えないけれど何かいる、何かが起きている、というような不気味な雰囲気が漂い、後半になるにつれジャンプスケアといわれるホラー描写が加わる。物語全体を通して、観るものを惹きつける作品になっている。

“第二章 真実”より ※提供画像


この構想力・演出力の高さは、監督をチェン・ウェイハオ、そして脚本をジェン・シーゲンが務めたと言えば納得する人も多いだろう。チェン・ウェイハオは本作が長編監督第一作目ではあるが、当時すでに台湾の2大映画賞である台北電影獎と金馬獎の両方で短編映画賞を受賞していた。後に監督・脚本を手がけた「目撃者 闇の中の瞳」、「The Soul:繋がれる魂」も大ヒットを記録し、今では“台湾映画界No.1のヒットメーカー”とも呼ばれている。そして脚本を務めたジェン・シーゲンは、台湾ホラーの中でも指折りのヒット作となった「返校 言葉が消えた日」を後に執筆し、金馬獎最優秀脚色賞を受賞する。そんな二人の才能が組み合わさった結果、台湾ホラーブームの先駆けともなる本作が誕生したという訳だ。