コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はかもみらさんの『はくしのちゃんねる』をピックアップ。
カップルチャンネルの彼女に恋をしたストーカーの物語を描いた本作。8月13日に作者がX(旧Twitter)に投稿したところ、予想外の展開と切なくも心温まる結末に反響が集まり、3.8万以上の「いいね」が寄せられ話題となった。この記事では作者・かもみらさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
カップルの日常を動画で配信し話題を集めている「ハクシノちゃんねる」の「はくま」と「しの」。ある日、2人がお弁当を作る動画を初めて見た視聴者のカスミは、しのの笑顔に一目惚れする。
その日から毎日のように動画を見ては、コメント欄にしのへの想いを書き続けるカスミ。しかし彼女の隣にはいつもはくまがいることに苛立ち、一方通行の想いだけが大きくなっていった。
そんな中、ストーカーと化したカスミはついに2人が住む住所を特定し、同じアパートに引っ越すことに。ついに生で会える、と期待したものの、部屋から出てくるのはなぜかいつもはくまだけだった。ある日、偶然にもカスミがはくまと廊下ですれ違った際、顔色を悪くしたはくまは気を失ってその場に倒れ込んでしまう。「これは部屋に入るチャンスかもしれない」と思ったカスミは、はくまを抱きかかえ部屋へ運ぶことに。
しかし、はくまの家の玄関を開けると室内はまさかのゴミだらけで驚くカスミ。「こんなところにしのちゃんが住んでるわけないよな」と思って立ち去ろうとしたとき、ふと部屋にある仏壇が目に入る。そこには、しのの写真が飾られていて…。
一方的にしのを想うストーカー・カスミと、同じくしののことが好きだったはくま。2人が出会ったことでその並行する想いが交じり合い、思いもよらぬ結末を迎える本作。X(旧Twitter)上では「優しい物語」「泣けた…」「語彙力と情緒がいろんな所に飛んで行った」「歪みから生まれる純愛」などの声が寄せられ話題となっている。
――『はくしのちゃんねる』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。
このお話は、個展で出す新刊に収録するために描き下ろししたお話です。日頃絵を描く時に作業しながらYouTubeをみたりするんですが、いつかYouTubeのお話を描いて見たいと思っていたのでこの題材にしました。
動物の動画が好きでよく見てます。昔の動画になると、もうすでに死んでしまったペットもいて、動画の中に残る生きてた頃のペットの姿を見てるとこういう幸せの残し方もあるんだなと思いました。そこがこの物語のきっかけなんだと思います。
――喪失感に苦しむ「はくま」とストーカーの「カスミ」、2人の並行する想いが思わぬ結末を迎えるラストシーンが印象的でした。それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
実は一番描きやすい顔の2人です。髪の毛の色が反対の色なので描きわけがしやすいのでとても気に入っています。
また、2人のキャラクターは相思相愛で描かれることが多いです。しかし2人とも中身が正反対なのですれ違いをよく起こします。そこの焦ったさが人間っぽくて好きですね。
――本作の中でかもみらさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
特にこれ!というシーンはないのですが、しいていうなら、はくまの恋人がはくまの幸せを心から願っていることがわかるコマですかね。かすみはその動画をみてから、好きな人が好きな人を幸せにしたいと思うきっかけになります。この話の中で一番優しいシーンだと思います。
――かもみらさんの作品は、シンプルなタッチながらもキャラクターの感情が伝わってくる繊細な表情描写をはじめ、作中の個性的なフォントやモノトーンに差し色を使う作画も唯一無二の世界観を築き上げる重要な要素となっているように感じます。作画の際にこだわっている点や「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えて下さい。
作画は本当にシンプルに描いて、文章もできるだけ簡潔にしています。漫画を読んでいるというよりも、夏休みの絵日記の続きをつついてる感じですかね。普段からあまり、言葉にしたり話すことが得意な方ではないので、純粋に感じたことや思ったことをメモのように形に残せたらいいなと思って制作しています。
――以前のインタビューで、「幸せな物語にはない心の機微を描きたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。“ハッピーエンド”を好むかもみらさんが、心の機微に惹かれる理由をお聞かせいただけますか。
幸せな話が好きだから、たとえば恋愛漫画だと当て馬の男の子のその後や幸せな主人公じゃない子に焦点を置いて話が描きたかったんだと思います。幸せにならない話だけど、描かれないより、誰にも知られずに終わってしまうよりはマシなのかもなって。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
いつも読んで頂きありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)