I.N.A.、hideという存在は「生活の一部」【hide with Spread Beaverフォトブック刊行記念 インタビューダイジェスト(1)】

2023/12/23 11:00 配信

音楽 インタビュー 独占

hide with Spread Beaverフォトブックの刊行を記念してインタビューのダイジェストをお届け。初回はI.N.A.(C)田中和子(CAPS)

日本のロック史上に伝説を打ち立てたバンド・X JAPANのギタリストとして、そしてソロアーティストとして日本の音楽シーンに多大なる影響を与え続けるhide(ヒデ)。2023年はhideソロデビュー30周年、永眠から25年にあたる。昨年全国で公開され大きな反響を呼んだ映画『TELL ME ~hideと見た景色~』 (2022年)をきっかけに、2023年の『hide Memorial Day 2023』ではhide with Spread Beaverによる25年ぶりのワンマンライブツアーが敢行された。取材開始から9カ月に及ぶ取材と誌面制作を経て、hideの誕生日である12月13日に発売されたフォトブック「hide 30th solo debut & hide with Spread Beaver appear!!Anniversary Photobook」。刊行を記念して、誌面に掲載されたhide with Spread Beaverのソロロングインタビューからhideとの思い出エピソードを中心にダイジェストでお届け。8日間連続となる初回は、hide with Spread Beaverのマニピュレーター/パーカッション・I.N.A.だ。

「hide 30th solo debut & hide with Spread Beaver appear!!Anniversary Photobook」書影撮影 田中和子/監修 ヘッドワックスオーガナイゼーション

hideサウンドの普遍性=時代を反映していないこと

──これまでも散々話されていると思いますが、改めてhideさんとI.N.A.さんの出会いを聞かせてください。
「出会いはX JAPANになる前のXのときです。3枚目のアルバム『Jealousy』(1991年)ができた際に、日本でツアーをやるためにマニピュレーターを探しているという話があって。その頃、僕はプロとしてスタジオミュージシャンをやっていて、知り合いのつてで話が回ってきました。それが初めての出会い。ツアー終了後は、YOSHIKIさんの曲作りを手伝っていて、アメリカに全員でレコーディングに行くので一緒に来てくれって言われたんです。hideちゃんとは、Xのレコーディングの空き時間にいろいろと機材で遊んだり、hideちゃんがLUNA SEAのJとINORANと3人のユニットで曲(MxAxSxSx『FROZEN BUG』)を作るのを手伝ったりしたのが一緒に音楽を作った当初の記憶ですね」

──時代はアナログからデジタルに移行するちょっと前ぐらいの時期ですよね。
「そうですね。コンピューターもちょうど出てきて、みんなが使い始めた頃で。hideちゃんはソロでは(当初)バンドじゃないものをやりたかったから、コンピューターを使って何か作りたい、試しに僕とソロのシングルを一緒に作ってみたいっていうことで、やってみたらマッチングが良かったんですかね。そこから一緒にやっていこうって言われて」

──そうして二人で作った音楽は、今聴いても全く古さを感じさせませんよね。その理由はなんだと思いますか?
「3枚のソロアルバム制作を通して、誰もまねできないようなやり方でhideサウンドなるものを確立できたからだと思います。例えば、それがものすごくはやって時代の音になっちゃったら、時間と共に古くなってしまって、今は誰も聴かなくなっていたかもしれない。hideちゃんは、本当に誰もまねできないようなことをやっていたし、似たようなことをやっている人はいても、到底ここまでやっていた人はいなかった。だから、完全なオリジナルサウンドになっているんだと思うんです。いわば『時代を反映していない』サウンド。だから、今聴いても新しいと思えるし、サブスクで初めて聴いた中高生は令和の音楽だと思って聴くんじゃないかな? それが古くならない理由だと思うんです」

──当時の洋楽の一番新しいもののエッセンスを、うまく消化して落とし込んでいるような感じもあって。
「そうそう。自分のフィルターをちゃんと通して表現できる。しかも雑食。ヒップホップの面白いリズムとかいろいろなところから持ってきて、自分のものにして出す、みたいな。やっぱりバランス感覚が長けていたんだと思います。1990年代はミクスチャーが始まった時代で、いろいろなジャンルがミックスされて、音楽的に結構面白い時代だったんです。hideちゃんの音楽は、それのちょうどド真ん中にあったと思います」

──hideさんとの思い出の中で、I.N.A.さんが一番に思い起こすのはどんなことですか?
「大体暴れているってことしか思い浮かばないんですけど(笑)。これが一番っていう順位はないです。思い出そうとしたら何年間分のエピソードが全部出てきちゃうので。当時は、自分の家にいるより彼の家にいる方が長かったから。hideちゃんの家で飯を食べて、作業して、夜中に自分の家に帰って、みたいな生活を7年間ぐらいずっとやっていたので」

──それだけ一緒にいて、いら立ってぶつかることなどはなかったですか?
「それが不思議なことになかったんですよね。音楽だけじゃなく、性格的なマッチングも良かったみたい。二人きりで、部屋の中に朝から晩まで一日中いるわけじゃないですか。むしろ、朝から朝までいるときもあるぐらいで、それを毎日繰り返している。それでも険悪にはならなかったのは、不思議でした」

──I.N.A.さんにとって、hideさんとはどういう存在ですか?
「hideという存在は生活の一部です、というのが一番正しいかな(笑)」

──夫婦や家族でもない間柄で、なかなか言える言葉ではないと思います(笑)。
「音楽の話で言うと僕は本当に感謝しているんです。hideちゃんと音楽を始めたときからレコーディングをしても予算がきちんとある。実験的な音作りをしてみようとか、レコーディングでこんなことをやってみようということが、割と自由にできたいい環境だったんです。それでいろいろな新しい作品ができた。僕も勉強になったし、すごく感謝しています」

──今、I.N.A.さんからhideさんに声をかけるならどんな言葉でしょうか?
「また何かやりましょう、という感じかな。特にメッセージもないですよ、だって生活の一部なんですから(笑)」

プロフィール/いな●1964年12月12日生まれ。hideの共同プロデューサー&プログラマー、hide with Spread Beaverのメンバー、X JAPANのツアーサポートメンバー。日本のロック界を裏側から支える音楽プロデューサーとして楽曲提供、作詞、作曲、サウンドプロデュース、アレンジ、DJなど活動は多岐にわたる。近年は書籍監修、執筆など活躍の場を広げている。映画『TELL ME 〜hideと見た景色〜』では原案協力や楽曲監修を務めた。

※フォトブック「hide 30th solo debut & hide with Spread Beaver appear!!Anniversary Photobook」ソロインタビューより抜粋。インタビュー全文は書籍でお楽しみください。
取材・文=大窪由香