登録者数75万超&動画の総再生回数2億回超、気鋭のホラーYouTuber・やがみ小説家デビューの裏側に迫る

2023/12/15 18:30 配信

芸能一般 インタビュー

気鋭のホラーYouTuber・やがみ小説家デビューの裏側に迫る写真=西木義和

YouTuberのやがみが、初小説『僕の殺人計画』を2023年11月7日に上梓した。オリジナルの怖い話を配信し、多くのファンを抱える同チャンネル。その人気は、YouTubeチャンネル登録者数75万人、さらに総再生回数は2億回再生を超える。そんなやがみさんが満を持して執筆した処女作は発売から2日で重版が決まるなど、大きな話題を呼んでいる。今回は、小説制作の裏話をインタビュー形式で紹介する。

ホラーYouTuber・やがみ著 「僕の殺人計画」

書籍の予約を開始したとき、実は3ページしか書けていなかった


――初めての小説を書いてみていかがでしたか?

いや~……、大変でしたけど本を作る過程を知られて面白かったです。小説って制作するのに最低でも半年はかかるものだと思うんですが、僕のサボり癖のせいでかなり後ろにずれこんでしまいました。当初の予定では8月に刊行する予定だったので、3ヶ月くらい遅れてしまって、本当に編集の方には申し訳ないことをしたなと反省しています。

――かなりスリルのあるスケジュールだったんですね。

実は、情報解禁したときにはまだプロローグしか書けてなかったんですよ。全体のボリュームでいうと、冒頭の3ページです。でも、予約数はどんどん増えていくし、楽しみに待っているファンの方からコメントも多くいただいて、ようやく重い腰を上げたという感じでした。

――それは……、まさにホラーですね(笑)。ちなみに一番時間がかかったのはどの部分でしたか?

物語のプロットですね。どんなふうに話を展開させるのかという基礎の部分がなかなか決まらず、ただ時間だけが過ぎていきました。最初に編集の方に見せたプロットは、自分のなかであまり納得がいかなかったので、「もう少し待ってほしい」とお願いしました。結果的に、この方向性でいこう!と決まったプロットのほうが、出来としてもよかったので時間はかかってしまったけど後悔はしていません。小説に限らず、僕が普段つくっている動画もここを大切にしています。体感では、作品の出来を左右するのはプロットが8割くらいかなと。最初から「プロットさえできてしまえば、あとは書くだけだ」と思っていたので、ギリギリまで粘れたというのもあると思います。

――では、執筆はまとまった時間を取って書き進めていったんですか?

そうですね、一番長いときで15時間書きっぱなしということもありました。致死量ギリギリのカフェインを取って、もうこれ以上はまずいぞってなったら休むという、かなり不健康な生活をしていたと思います。最初にプロットを決めてから、とは言いましたがやっぱり書きはじめると、追加したい設定や変更したい部分も見えてくるので、編集の方と原稿をにらみながら修正していきました。もう追い込まれるのはこりごりなので、次に機会があるなら早めに手をつけないと……と思います。いや、分かってるんですけどね(笑)。

ホラーYouTuber・やがみ写真=西木義和

動画へのこだわりが小説にもそのまま生かせた


――普段の動画を作るときと、小説を書くときでどのような部分に違いを感じましたか?

小説のほうが圧倒的に関わる人の数が多いです。編集の方はもちろん、デザイナーさん、イラストレーターさん、本に関わっていただいたのに実際に僕がご挨拶できていない人も含めると、数えきれないほどです。自分の知らないところで、誰かが自分のために仕事をしてくれているというのは、動画をつくるときにはない感覚ですね。作品ではなく、商品をつくるのはこういうことか、と気を引き締めました。あとは、物語の起承転結をかなり詳細に考えなければいけないのも違いとしてありました。YouTubeの場合は、物語として複雑なものはつくらないようにしています。ですが、小説となると、どの部分に何を仕込むのかを考える自由度が格段に上がります。その分、検討する材料が多くなるので「これが不自由な自由か……」と実感しました。

――では、反対に動画と似ている部分だなと思ったところはありますか?

自分のなかで「描写が分かるように伝える」という方向性を大切にしているんだなと、改めて感じました。動画でも、もともとは2ch(現5ちゃんねる)のネタを分かりやすくかみくだいて伝えるというのを主軸にしていたんです。最近になって、オリジナルのシナリオを投稿するようになったのは、単に動画にする話が枯渇してきたから自分で作ろうと思っただけなんですよね。動画だと、状況を分かりやすくするために映像や音を入れられますが、小説ではそれができません。それでも、描写が分かりにくい部分は妥協できませんでした。小説だから動画より伝わらなくて当たり前だろうとは思えなかった。それはどうしてもこだわってしまう部分ですね。

――長年の動画投稿が役立ったということですね。

動画でプロットを考えたり、分かりやすい伝えかたを模索したりしていなければ、もっと苦労したでしょうね。今回の小説以上に苦労するなんて、恐ろしくて想像もしたくないですけど(笑)。

ホラーYouTuber・やがみ写真=西木義和


取材・文=山岸南美