非日常の空間×美味しいご飯の魅力『図書館のお夜食』/佐藤日向の#砂糖図書館

2023/12/16 20:00 配信

アニメ 連載

『夜の図書館』から感じた言葉を綴った佐藤日向※提供写真

声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。


忙しい時に最初に削る時間はなんだろうか。
私は食事だと思う。

仕事の効率を上げるためにご飯を食べることは休憩にも繋がるから必ず取った方がいいのは頭ではわかっているものの、本当に時間がない時に削るのはこの時間になってしまう。
そんな時にご飯が食べたくなる小説に出会った。

今回紹介する原田ひ香さんの「図書館のお夜食」という作品は、主人公が元々働いていた職場で上司との関係がうまくいかず、東京で"夜の図書館"に勤務をすることで、居場所を見つけていく物語だ。

原田さんといえば食事にフォーカスが当たっている作品が多いので、今回も楽しみに読み始めたが、やっぱり作中に登場する食事たちはまるで文章から匂いがするくらい立体的で美味しそうだった。

特に今回は作中で実際にある小説の中に登場する料理を夜の図書館内にある食堂のような場所で作ってもらえる描写があったので、本好きな社会人にはたまらない。読了後には思わず「夜 図書館 都内」で検索をしてしまった。

テーマパークに年間パスポートがあるのと同様で、大人が仕事の後に楽しめる場所に年間パスポートで通えたらなんて魅力的なのだろうかと想像してしまうくらい読んでいてワクワクした。

私は子どもの頃から日中よりも夜の時間の方が好きだったこともあり、日中以外の時間での営業はすごく惹かれるものがある。

佐藤日向

以前、閉館後の水族館でくらげの水槽の前でお芝居をしたことがある。
芝居を始める準備中に大きな水槽を眺めることがルーティーンになっていた私は、普段みんなの前に姿を見せるエイは人がいなくなると、全く姿が見えなくなるのが面白くて「アイドル適性のあるエイだなあ」なんて思いながら見たり、逆に普段見られない姿を見られると秘密の会話ができている気持ちになって、そこだけ日常から切り取られている、そんな感覚になれるあの瞬間の虜だった。

お昼の顔しか知らない学校に夜行くと見え方や形すらも違く感じたり、誰もいなくなった稽古場に1人で残っていると時間の進みが遅く感じたり。
そんな非日常の空間に美味しいご飯があるなんて、そんな羨ましい環境があるなら是非行ってみたいと思ってしまう。

本作の終わり方が続きがありそうな最後だったので、続編があるのであれば文章を通して夜の図書館をまた訪れたい。

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