日本のロック史上に伝説を打ち立てたバンド・X JAPANのギタリストとして、そしてソロアーティストとして日本の音楽シーンに多大なる影響を与え続けるhide(ヒデ)。2023年はhideソロデビュー30周年、永眠から25年にあたる。昨年2022年に全国で公開され大きな反響を呼んだ映画『TELL ME ~hideと見た景色~』をきっかけに、2023年の『hide Memorial Day 2023』ではhide with Spread Beaverによる25年ぶりのワンマンライブツアーが敢行された。取材開始から9カ月に及ぶ取材と誌面制作を経て、hideの誕生日である12月13日に発売されたフォトブック「hide 30th solo debut & hide with Spread Beaver appear!!Anniversary Photobook」。刊行を記念して、誌面に掲載されたhide with Spread Beaverのソロロングインタビューからhideの思い出エピソードを中心にダイジェストでお届け。第2回はhide with Spread Beaverのギタリスト・KIYOSHIだ。
──今回の3公演を終えて、hide with Spread Beaverとして、これからまた何かをやってくれるんじゃないかとライブを期待する声は高まる一方だと思うんです。
「そうですよね。とにかくhideって本当にカッコ良かったんだよって、みんなの頭の中に植え付けるのが今回のワンマンライブの目的だと思っていたんだけど、それは成功したかなって。ライブと言いつつ映像であることのわだかまりっていうか、ちぐはぐした気持ちを埋めるのはやっぱり生演奏だと思うんですよ」
──MCでは映画『TELL ME 〜hideと見た景色〜』のおかげでワンマンライブが実現したというお話がありましたが、言うなれば予期せぬタイミングでしたよね。ただ、この3公演の充実ぶりからは、自然にバンド内ではまたやろうよという雰囲気になるんだろうなと。
「そうですね。ただ、俺は(実弟の松本)裕士のジャッジでいいかなと思ってる。そこが普通のバンドとは違うというか。もちろん俺たちもやりたいけど、バンドのメンバーがイニシアチブをとって進めるのはちょっと違うのかなって。やっぱり裕士の気持ちがあって、そこに対して動く方が、『よりhideになる』って言ったら変だけど、近いのかなって。俺たちがそれをやりだすのであれば、自分らのバンドでやればいいじゃんって話にもなってくるから。その辺も結構難しいところでね」
──何か音楽的な充実を求めるとか、そういうものとは種類が違うんですよね。
「そう。だから、そんなの音楽じゃねぇじゃんって言われちゃったらそれまでだよ。ただ、それでもやっぱり何が悪いんだよとも思う。血が濃いって言ったら変だけど、近いところにいた俺たちがいるうちは、俺たちがやればいいし。もし俺たちがいなくなっても、hideの音楽は残るから、誰かがそれをきっとやっていくんだろうなと思う。それこそ著名なクラシック演奏家が、バッハやベートーベンの曲を演奏するようにね」
──映像のhideさんは、25年前から年を取らないわけじゃないですか。とはいえ、そこにみなさんが並んでも違和感がないんですよね。メンバー全員が現役、最前線で活動されている方だからというだけでなく、hide with Spread Beaverが、個々の重要なモチベーションとして占めているのだろうという気がしました。
「うん。みんなの中に、ちょっとずつ違う角度を向いたhideがいるんですよ。それぞれのやり方でhideを表現する。やっぱり25年前の『Ja,Zoo』ツアーは、hideの代わりをやらなきゃっていう意識がすごくあったんだよね。でも、いくらやっても答えは出ない。まねするわけにもいかないし。だから、むちゃなことをやっていたんだろうなとも思うし。解決の仕方がなかったものが、月日が経って分かるようになってきたということだと思うんですけどね」
──今回のワンマンライブではKIYOSHIさんのMCがとても印象的でした。先頭に立ってみんなに発信しているようなイメージで。hide with Spread Beaverの中でのKIYOSHIさんの役割について、これまでと意識の違いはありましたか?
「1998年の『Ja,Zoo』ツアーのときも俺がMCを取ってメンバー紹介をした場面があるけど(意識的には)多分、同じかな。同じなんだけど、やっぱりワンマンライブというのが大きいと思う。あのとき、hideが亡くなっているのにhide with Spread Beaverがツアーをやることに対して否定する輩がいたんですよ。何でアイツらだけ楽しそうにツアーをやってんだと。どうやらKIYOSHIが中心になってやっているみたいですよってね。だから、俺は今回、そいつらにも向けて吐いている言葉が結構あって。SNSでもMCが印象深いって声をよく頂くんですけど、そういうことも含めてね。あとは、俺たちはhideっていう病気だから(笑)。俺たちはコロナじゃねぇぞ、全員hideクラスターだぞって(笑)。さっきも言ったけど、俺たちが亡くなっても、hideの曲は残る。誰かがやるんだろうと思う。でも今は俺たちしかできないことだよって。だから、役割は変わっていないけど、当時よりメッセージ性は強くなったかなって」
──3公演を終えた今、hideさんなら何と声を掛けてくれると思いますか?
「そういえば、5月2日の横浜公演を終えてうちに帰ってうたた寝をしていたら、久しぶりにhideが夢に出てきたんですよ。グラサンはかけているんだけど、目の部分が“への字“になっているの(笑)。だから、ひょっとしたら喜んでくれたのかなと思ってね。そう裕士に伝えたら『出ましたか!?』って(笑)」
──改めてKIYOSHIさんにとって、hideさんとはどんな存在なのでしょうか?
「ロックの神様じゃないですかね……いや、ムカつく友達かな(笑)。あまり考えたことがないかも。でも最近はhideの存在をすごく感じるようにはなったかな。前はそういう雰囲気とかも分からなかったんだけど、どこか穏やかな感じもして。前みたいにギスギスしていないっていうかね。そんな気がする」
プロフィール/きよし●1964年6月3日、千葉県出身。JEWEL、VIRUS、SWEET DEATH、media youthなど、数多くのバンドを経てきた人気ギタリスト。1996年からhideバンドに参加し、1998年からはhide with Spread Beaverのメンバーとして活躍する。現在は、3ピースR&RバンドのMADBEAVERSをはじめ、Lucy、machine、freeman(ソロワーク)などで精力的に活動中。
※フォトブック「hide 30th solo debut & hide with Spread Beaver appear!!Anniversary Photobook」ソロインタビューより抜粋。インタビュー全文は書籍でお楽しみください。
取材・文=土屋京輔
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