【漫画】「あなたの心臓を見せて」恋した女性のため、無謀な研究に挑む男子大学生…まっすぐな“純愛”物語が「尊い」と話題

2023/12/29 18:30 配信

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彼女が“心臓を見たい”理由とは…藤千華さんの『心のレプリカ』が話題

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は藤千華さんの『心のレプリカ』をピックアップ。

ある女性に恋をした男子大学生が自身の心臓の“複製”に挑む物語を描いた本作は、第91回新人コミック大賞(小学館)の少年部門に入選し、少年サンデーS2023年6/1号に掲載され話題に。また、10月24日に作者がX(旧Twitter)に投稿したところ、6200以上の「いいね」が寄せられSNS上でも反響を呼んでいる。この記事では作者・藤千華さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

“感情”は目で確かめられる?恋愛感情を科学で解明しようとする大学生カップルの物語

『心のレプリカ』より(C)藤千華/小学館


大学生のアキラはある日、構内でユキノという女性と出会う。一目見て恋に落ち、彼女が輝いて見えるようになったアキラはこれまで“恋愛による現象は科学で説明ができる”と思っていたが、なぜ彼女が輝いて見えるのかということだけは解明できずにいた。

ユキノが輝いている理由をどうしても知りたいアキラは、彼女を呼び出すと「あなたのことを研究させてください!」と申し出る。しかしユキノは言葉だけじゃ信用できない、と言い「私を調べる代わりにあなたの心臓を見せて」と言う。

予想外の返答を不思議に思いながらも、アキラは考え込み、“卒業までの2年間で心臓を見せる”と約束する。次の日に早速研究希望書を提出し、教授からは不可能だと批判されながらもユキノとの約束を胸に固い意志で教授を説得。そして、ついに研究室の使用を許されるのだった。

その日以降、毎日寝る間を惜しんで研究に励むアキラ。しかし、先行研究で発表されているところまでは辿り着くもののその先が全く見えず、ついに行き詰まってしまう。そんな中、ユキノがアキラの研究室を訪れる。「約束を守ってるか確かめに来た」と言うユキノは、不意にアキラの手を取ると自身の胸元へと置き、心臓の拍動を感じさせる。

唐突な行動に疑問を抱くアキラだったが、ユキノが研究室を去ったあとでふと、目の前の研究よりも“大切なこと”に気づき…。

“感情”を目で確かめたいユキノのために、心臓の複製に没頭するアキラ。長年の想いが報われるラストシーンにも反響が集まり、X(旧Twitter)上では「尊い」「純愛っていいわ〜」「良い話」などの声が寄せられ話題となっている。

形のない感情の“可視化”をテーマに 作者・藤千華さんが語る創作背景とこだわり

『心のレプリカ』より(C)藤千華/小学館


――『心のレプリカ』を創作したきっかけや理由があれば教えて下さい。

感情というものは基本形があるものではないと考えています。

そのような形のないもの、感情の中でも特に好意を目で見てほぼ確実に確認できるような状態にするとしたら何になるだろうと考えた時、心臓の鼓動ではないかと考えたことが発端です。

――「心臓が見たい」と言うユキノと心臓を複製するため研究に没頭するアキラ、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?

研究への没頭具合や空気感は自分の経験や周りの人がどんな感じだったかを思い出しながら描きました。

キャラクターはほとんど降ってきた感じなので特にすごく考えたわけではないです。ただ、特にアキラはユキノのことだけが全ての行動原理であってほしいなとは思いました。

――小学館新人コミック大賞の「少年部門」で入選に輝いた本作ですが、物語を描くうえでこだわった点や本作に込めた想いがありましたら教えてください。

この話は導入部分とクライマックスを先に思いついていたこともあり、リズム感や世界観・キャラなどを壊さずにどうしたらスムーズにわかりやすく話が進むかは苦戦した記憶があります。

――作中の「言葉なんてただの伝達手段」「心臓は感情のバロメーターだから信用できる」というユキノの言葉が特に印象的でした。藤千華さん自身は、人間の感情表現についてどのようなお考えをお持ちですか?

本当は違うことを思っていても様々な理由で本当の気持ちを言わない・言えないってことはあると思うんです。でも、そういう時でも体内活動は確実に騙せないですし、そもそも体内の化学反応などはほとんどの人間にとって操れるものでは無いので、体には正直にいろんな感情が反映されると考えています。今回はその中でも心臓に注目したということです。恋をすると胸(心臓)がドキドキするって言いますしね。

ユキノ自体に私の考えが反映されているというよりは、ユキノだったらこういう考え方かな、といった感じです。

――創作活動全般において、一から世界観を生み出し物語を展開していくうえで藤千華さんがこだわっている点や特に意識している点がありましたら教えてください。

細々とは沢山あるのですが、特にこのような読み切りの話を作るときは設定が多くなりすぎないように気をつけています。考え過ぎてしまう癖があるので、あまりに構成がうまくいかない時は初心に帰って一旦情報を整理して、必要ないものがないか確かめるようにしています。

また、日常生活においてふとした疑問やこうなったらどうなるだろう?と思ったことは思いついた時にすぐどこかにメモするようにはしています。寝る直前でも起きてメモしたりします。朝起きたら忘れるかもしれないので。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

まだ描き続けていくので、これからもお手隙の際にでもご覧になっていただけると幸いです。